空気予報 空気の未来を考えよう
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日常を忘れて舞台を満喫できる環境を作る!最新ホールを快適にする大型空調の工夫

プロの矜持!大空間の空調
湿度にもこだわり最高の晴れ舞台を用意 大型ホールの空調を管理するプロの矜持

2016.12.02

(文/磯 修)

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前回掲載した「日常を忘れて舞台を満喫できる環境を作る 最新ホールを快適にする大型空調の工夫」で紹介したとおり、神奈川芸術劇場の建物は斬新な構造が特徴だ。8階の天井まで達するアトリウムの大きな吹き抜けや、広い面積を占める美しいガラス張りの壁などの工夫で、建物に足を踏み入れると圧倒的な開放感に驚かされる。「人々のにぎわいが集まる場所を作りたい」という思いが形になった建物で、あまりの快適さについ長居したくなるほどだ。

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壁面の多くがガラス張りになっている神奈川芸術劇場の建物。入ってすぐのアトリウムは、8階まで吹き抜けの構造となっている ©森日出夫

広い劇場内を快適に保っていたのは、一般の来場者が入ることはできない空調機械室に設置された3台の大型空調機。その空調機を管理する技術者は、温度だけでなく湿度も手間とお金をかけてコントロールし、出演者や観客が舞台に没頭できる最高の環境を人知れず作り出していた。

冷水や温水を館内に巡らせ、冷房や暖房に利用する

神奈川芸術劇場の空調の要といえるのが、地下1階にある空調機械室に鎮座する「ガス焚二重効用吸収冷温水機」と呼ばれる大型空調機だ。パナソニック(旧三洋電機)が納入した装置で、大小3基が活躍している。いずれも「大空間を快適に保っていたのは“鉄仮面”! 縁の下の力持ち、業務用大型空調機の世界」の記事でリポートしたパナソニックの大泉工場(群馬県邑楽郡)で製造されたものだ。

地下1階の空調機械室に配置されている3基のガス焚二重効用吸収冷温水機。

3基のガス焚二重効用吸収冷温水機は、うち2基が出力の高い300USRTタイプで、1基が低出力の100USRTタイプとなる

空調の仕組みは複雑だが、大まかに解説すると以下のようになる。地下の貯水タンクに貯められた冷たい水を冷媒としてポンプで館内に巡らせ、館内の数カ所に設置された「エアハンドリングユニット」(空気調和機)で巡ってきた水に風を吹き付けて冷気を奪い、冷房として利用する仕組みだ。冷房時に供給する水の温度は5度前後で、50度前後にすることで暖房として働く。エアハンドリングユニットはホールや各スタジオの付近に配置されており、ホールには実に8台ものエアハンドリングユニットが装備されているという。

貯水タンクの水は、電気料金が安い深夜電力を用いて夜間に冷やしたり温めたりし、蓄熱しておく仕組みだ。貯水タンクは約500トンの容量があるので、空調を弱めで駆動する春や秋などは十分な温度を維持しやすいものの、閉館を待たずにぬるくなってしまうことも多いそう。日中に電気を用いて水を冷却するのはコストがかかるので、ガス焚二重効用吸収冷温水機を駆動して冷却するわけだ。松木氏は「蓄熱は意外と弱く、夏場は午前中でぬるくなってしまう。吸収機は立ち上がりも早く、夏場は7度前後の低温の水を安定して供給できる。本来は蓄熱での空調がメインだが、当劇場では吸収機が欠かせない存在」と、ガス焚二重効用吸収冷温水機の能力を評価する。

地下1階の空調機械室に設けられたエアハンドリングユニット。これは、1階のアトリウムの空調用に使われている。このようなエアハンドリングユニットが、館内の数カ所に設けられている

冷水や温水が流れる配管がエアハンドリングユニットに導かれ、内部で熱を奪う仕組みだ。右のダクトから新鮮な外気を一定の割合で導入し、快適性を保つようにしている。内部にはゴミやホコリをキャッチするフィルターも内蔵する

空調機械室には、さまざまな配管が張り巡らされていた。いずれも、空調に使う冷水や温水を館内に運ぶためのもので、神奈川芸術劇場とNHK横浜放送局、共用部に分岐している

これだけ大がかりな装置ながら、すべてコンピューター制御されている。運転状況のモニタリングや設定変更は、防災センターのパソコンや空調機械室の操作パネルでできる

冷水と温水の流れも1画面で確認できる。かなり複雑な仕組みなのが分かる

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