空気予報 空気の未来を考えよう
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湿度にもこだわり最高の晴れ舞台を用意 大型ホールの空調を管理するプロの矜持

プロの矜持!大空間の空調
湿度にもこだわり最高の晴れ舞台を用意 大型ホールの空調を管理するプロの矜持

2016.12.02

(文/磯 修)

劇場と放送局からなる合同施設は全体としては深夜でも常に人が常駐しているうえ、業務に必要な機器の電源を入れているそうだ。機器の熱を継続的に冷やす必要があるが、深夜はタンクに蓄熱中なので日中と同じ空調は使えない。深夜に空調機器を冷やすため、一番小さいガス焚二重効用吸収冷温水機を動かして冷房を働かせているのだ。

100USRTのガス焚二重効用吸収冷温水機は、深夜や災害時にも稼働する必要のある重要な機器の空調用に設けられている

このガス焚二重効用吸収冷温水機は、ガスと灯油のどちらでも駆動できる設計なのが特徴。通常時はガスを利用するが、災害などでガスの供給が絶たれた場合は灯油での駆動に切り替えられる。空調機械室には、災害時用に灯油タンクが用意されており、そちらから灯油を供給する仕組みだ。

コストと手間をかけて湿度も調整し、快適さを高める

神奈川芸術劇場の空調管理で特徴的なのが、温度だけでなく湿度も細かく制御し、快適性を高めていること。単純に除湿器を設置するのではなく、空調設備をうまく利用しているのがポイントとなる。

館内のエアハンドリングユニットに冷水を流すと、冷水が流れる配管の外側に空気中の水分が付着して結露するので、空気中の湿度が下がる。この現象を利用して室内の湿度を下げていくのだ。冷房の場合はそれで終わりでよいが、暖房の場合は流す水を温水に切り替えて送風することで冷えた空気を暖める仕組み。神奈川芸術劇場では、湿度は50〜60%前後、温度はおおむね24〜25度に調整しているという。

井上氏は「湿度を制御すると冷水と温水の両方を使わなければいけないので、通常よりもエネルギー消費が増加します。だが、お金を払って来館していただいた方々により快適に楽しんでいただくためには必要なことと考えている」と語る。

施設管理を担当する井上氏だが、空調には並々ならぬこだわりを持っていた。「劇場の空調で何より重要なのは信頼性で、故障せず確実に動作しなければならない。万が一空調が故障しても、直接命にかかわるといった大変な事態になることはないが、公演に足を運んでいただいたお客さんが快適に観賞できなくなる。出演者やお客さんの期待を裏切るようなことがあってはならない」と語る。空調は目に見えずカタチもない存在だが、ものづくりに命をかける職人のようなこだわりを感じさせた。

神奈川芸術劇場の空調を管理している神奈川芸術文化財団の井上正春氏(左)と横浜ビルシステムの松木潤和氏(右)。舞台技術スタッフと連携をとりつつ、適切な空調を目指すべく裏方で汗を流している

神奈川芸術劇場で開かれる公演の出演者たちは、晴れの日の舞台のために日々稽古を重ね、血のにじむような努力をして本番に臨む。観客も、彼らの一挙手一投足を見逃すまいと真剣なまなざしを向ける。裏方でも、ホールをベストな環境に保つため、空調機器を細かく操っていたのだ。

大きなホールで1200人もの観客が快適に舞台を楽しめるのは、裏で人知れず活躍する大型空調機や技術者の存在があったのだ

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