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エアコンの連続運転vs間欠運転 暖房費はどちらが大きい? 熱量編

エアコンの連続運転vs間欠運転
暖房費はどちらが大きい? 熱量編

2016.12.22

(文/松尾 和也=建築家)

「24時間、家中を暖かくするなんて金持ちの道楽。庶民には到底できない絵空事だし、エネルギーの無駄遣いでもある」──。こうした日本人の常識は、はたして本当なのか。シミュレーションデータを使って、松尾設計室(兵庫県明石市)の松尾和也さんに解説してもらう。

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松尾設計室(兵庫県明石市)代表の松尾和也さん。パッシブハウスジャパン理事。1998年九州大学建築学科卒業。日本建築家協会(JIA)登録建築家、一級建築士、APECアーキテクト

日本の戸建て住宅の大半は、断熱性や気密性、冬の日射取得を十分に考えて設計されているわけではない。「24時間ずっと家中を暖かくするなんて金持ちの道楽」と思う日本人が多くなるのも当然の話だ。

しかし、断熱性や気密性、冬の日射取得がきちんとできている住宅の場合は、人がいる時間だけ暖かくする場合と、24時間連続でずっと暖かくする場合の暖房費の差が非常に小さくなる。ケースによっては逆転することもある。

そのことを実測データではないが、シミュレーションデータを用いて説明する。シミュレーションは、東京大学工学部建築学科の前真之研究室が作成したExTLA(熱負荷計算ソフト)で計算した。シミュレーションデータなので絶対値は実際とは異なるが、相対比較という意味ではかなり実際に近い状況になっている。

東京大学工学部建築学科の前真之研究室が作成したExTLAを用いてシミュレーションした。「事業主」は住宅事業建築主の判断基準の「14時間間欠運転」を、「XL」は「24時間連続運転」を表す(資料:松尾和也)

国の標準的な基準として用いられる「住宅事業建築主の判断基準」(上の表の「事業主」)と、「24時間連続運転」(同じ表の「XL」)の想定しているエアコンの稼働時間を比較する。「事業主」は冷房が1日15時間、暖房が1日14時間、それぞれ間欠運転する設定である。

エアコンの実稼働時間は?

シミュレーションの結果を示したのが下のグラフだ。まずは、その見方から説明する。

「間欠運転」:暖房を14時間間欠運転した場合
「連続運転」:暖房を24時間連続運転した場合。
オレンジ色の部分がエアコンの暖房負荷を表す(資料:松尾和也)

上段の「間欠運転」と下段の「連続運転」はエアコンの稼働時間以外は全く同じ条件である。どちらのグラフも、左から、冬の「快晴日」「曇天日」「晴天日」(いずれも東京でエアコンを使用、室温は20℃設定)で、「暖房負荷」と「室温」をシミュレーションしている。

このグラフの中で、オレンジ色に塗りつぶされている時間帯はエアコンが暖房運転している。塗りつぶされた面積は、エアコンから投入された熱量(暖房エネルギー)を示している。

塗りつぶされた面積はグラフを見るだけでは判別しにくいので、数字で記した。下の表を見てほしい。◯で囲んだ「処理熱量」が、それぞれのオレンジ色の部分の面積に該当する。

暖房時の処理熱量は、case1「間欠運転」が142.1MJ、case2「連続運転」が182.6MJで、「連続運転」が「間欠運転」の1.28倍になる

これを見ると、24時間連続の「連続運転」は、14時間間欠の「間欠運転」の約1.28倍も暖房に必要な熱量が多いことが読み取れる。とはいえ、もともと暖房の稼働時間が約1.7倍なので、暖房する時間に比べると少ない熱量しか投入していないとも言える。

しかし、ポイントはそこではない。エアコンは24時間スイッチが入っていたとしても、設定温度に達すれば温度センサーが感知してオフの状態になる。この住宅は南面に大きな窓を設置している。24時間連続の「連続運転」のグラフでも、9時頃から21時頃までの12時間程度は、実質的に暖房は稼働していないことが読み取れる。ここまでは「間欠運転」でも同じだ。

なお、この住宅が一般的な住宅の断熱性能や気密性能を大幅に上回り、南窓を大きく確保しているからこそ、昼間は無暖房でも暖かさが維持できる。現在の一般的な住宅では、無暖房の時間はもっと少なくなる。

(日経ホームビルダー 2016年2月号より再構成)