空気予報 気になる空気トレンド最前線
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ボールはなぜ落ちたり、曲がったりするのか ボールと空気の関係 ボールの進化編

ボールはなぜ落ちたり、曲がったりするのか
ボールと空気の関係 ボールの進化編

2017.03.29

(文/宮坂太郎 写真/福田栄美子)

最新構造のボールは何が違うのか

ではアセンテック構造(熱接合技術)はどう違うのでしょうか。

一橋氏:アセンテックも貼りボールの一種になるのですが、昔の貼りボールと違い、つなぎ目のない表皮構造なので密閉性が高く、長期間使用した場合でも大きく膨らむなどの変形がしにくく、雨天時にも水を吸うことがほとんどありません。また、真球性に優れているので、ボールのどこを蹴っても同じ感触を実現しています。

このアセンテック構造のボールは、モルテンでも高品質なボールになります。芝グラウンド用のボールが多く、弾み具合との兼ね合いからも蹴った感触は柔らかいかと思います(※土グラウンド用のアセンテック構造ボールもあります)。

左が縫いボール用のパネル、右がアセンテック用のパネル。厚みがかなり違う。

柔らかいボールになってからは、以前よりロングキックやゴールキックが遠くに蹴りやすく、またブレ球も蹴りやすくなった気がするのですが?

一橋氏:柔らかいボールは、固いボールよりも足に接触している時間がわずかながら長くなり、その分、力がボールに伝わり、速く強いボールを蹴ることができます。ボールが進化したことで、より真球に近づき、軌道が安定していることも寄与しています。

またブレ球と普通のキックの違いは、1000分の1秒ほど、足とボールが接触している時間が長いそうです。ブレ球は、無回転キックとも言われていますが、ゴールキーパーに届くまでにほとんど回転せず(0.5回転から1回転くらいと言われている)、それによって空中でボールの後ろにできる渦が不規則に向きを変え、ボールを不安定にさせることによって、予測の出来ない軌道となるのです。

無回転フリーキック、ブレ球は今後も増えていくのでしょうか。

一橋氏:弊社の製品開発は「For the real game」をテーマにしており、選手の思ったところに思ったボールが届くことを目指しています。ブレ球は、蹴った選手にも予測不可能な弾道ですので、減らしていきたいと考えています。2016年の元旦に決勝戦が行われた、天皇杯全日本サッカー選手権大会で使われたボールは、アセンテック構造に加え、ディンプル加工を施しました。この加工により、飛行中の空気抵抗によるボール軌道の変化を抑制し、より高精度のパスやシュートが可能になりました。

ディンプル加工が施された、天皇杯試合球。

読者の方は、選手の技術がほとんどで、ボールの弾道に空気が影響するのはほんのわずか、とお考えではなかっただろうか。筆者は現役のゴールキーパーを務めているのだが、無回転フリーキック、ブレ球は、GKとしての反応や、セービング技術と関係のない部分で失点に結びつく、嫌なボールだ。ブレ球を蹴るのも技術の一種だとは思うが、ボール自体がそういった不確定要素を取り除いてくれることは、プレイヤーとして歓迎したい。

協力/株式会社モルテン http://www.molten.co.jp/