空気予報 空気の未来を考えよう
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なぜ不規則な変化をする無回転ボールが蹴れるのか キッカーと風の関係 無回転フリーキック誕生編

なぜ不規則な変化をする無回転ボールが蹴れるのか
キッカーと風の関係 無回転フリーキック誕生編

2017.03.30

(文/すぎさきともかず 写真/高梨秀樹)

無回転フリーキックは「ボールの進化」と「選手の技術」がせめぎ合っている!?

風の影響を受けやすいスタジアムはどこだったのですか?

三浦さん:国立競技場をはじめ、観客席とピッチの間にトラックがある陸上競技場です。ピッチを囲うように観客席が設けられているサッカー専用スタジアムは、風の影響をそこまで受けません。ただ、プロの世界に入ってから初めてのホームスタジアム「ニッパツ三ツ沢球技場」は、サッカー専用スタジアムとはいえ、観客席が低いせいか、風の影響を強烈に受けるんです。年間試合の約半分は所属チームのホームスタジアムで試合をするわけですから、風を意識したプレーをするようになったのは三ツ沢球技場が影響しているのかもしれません。

どの会場でもそうなんですが、キックオフ前のウォーミングアップでボールを蹴る時は、特に風の影響を見ていました。もちろん、試合中のキックで微調整するのがプロですけどね。

プロに入った当時、無回転シュートやフリーキックを蹴っていた選手は他のチームにもいなかったのですか?

三浦さん:Jリーグでは僕だけでしたね。プロに入った当初、縦回転をボールにかけてフリーキックのゴールを決めたこともあります。ただ、無回転フリーキックは練習試合では蹴っていましたけど、ゴールに入る確率はまだ低かったですし、当時のチームには良いキッカーがいましたからフリーキックを蹴るチャンスも少なかったんです。

東京ヴェルディ1969、ヴィッセル神戸時代にはチームの中心的な選手となり、フリーキッカーを任せられることに。その後、三浦氏は無回転フリーキックのゴールを着実に積み上げていった。

では、公式戦で無回転フリーキックを披露されたのは、いつだったのですか?

三浦さん:無回転フリーキックを公式戦で初めて披露したのは、東京ヴェルディ1969に移籍して迎えた2001年シーズンの開幕戦でした。イメージ通りにボールがブレながら飛んでいきましたから、ゴールした瞬間は自分でもちょっと驚きましたね(笑)。ゴールまでの距離が30mくらいでしたから、無回転を蹴るにもちょうど良い距離だったんです。ゴールまでの距離が近すぎるとボールがブレる前にゴールへ到達してしまいますから。

披露するうえで試合中に苦労されたところもあったのですか?

三浦さん:実は、初めて決めた試合では何分か前に、まったく同じ位置から回転をかけたフリーキックを蹴っているんです。結果的にはミスキックとなったのですが、ピッチの状態を把握できましたし、「試してみたら」とチームメイトの小倉隆史も言ってくれたので、直後のチャンスでは思い切って無回転で蹴ることにしたんです。場所によってはピッチの状態も違いますから、同じ場所で蹴るチャンスが2回あったのは大きかったですね。ピッチの状態を把握していないと、無回転フリーキックを成功させる確率は上がらないんですよ。

日本代表チームで共に練習をしていたゴールキーパーの川口能活(相模原FC所属)や楢崎正剛(名古屋グランパス所属)からは「軌道がまったく予想できない」と言われていたという三浦氏の無回転ボール。国際試合の経験も豊富な当時の日本代表ゴールキーパーでさえ、対応のできない予測不能な変化をしていた。

無回転を蹴り始めてから「ボールの進化」について感じていることはありますか?

三浦さん:高校生の頃に蹴っていた手縫いのボールは、雨の日だと水を吸って、重くなってしまうこともありましたね。破れたり、ゆがみやすかったりした昔のボールに比べて、今のボールの方が明らかに蹴りやすいです。衝撃を与えても変形しにくい綺麗な球体になっていますから、回転をかけたボールが蹴りやすくなったと感じます。それだけに無回転は蹴りにくい進化をしていると思いますし、今後も蹴りにくくなっていくと思いますが、そうは言っても何とかして蹴るのがプロのキッカー。もちろん、今の進化したボールでも、僕は無回転を普通に蹴れます。「ボールの進化」と「選手の技術」が競い合う関係にあるのも無回転フリーキックならではの面白さでしょう。無回転を蹴るコツは昔も今も変わりません。蹴り方さえ習得すれば、どんなボールでも必ず蹴れるようになります。

練習すれば誰でも無回転ボールが蹴れる!?
続いての無回転フリーキック実践編では、蹴り方の秘訣を探ってみよう。

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