空気予報 空気の未来を考えよう
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なぜ不規則な変化をする無回転ボールが蹴れるのか キッカーと風の関係 無回転フリーキック実践編

なぜ不規則な変化をする無回転ボールが蹴れるのか
キッカーと風の関係 無回転フリーキック実践編

2017.03.30

(文/すぎさきともかず 写真/高梨秀樹)

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前編では、ピッチから感じたボールと風の関係、ボールの進化と無回転フリーキックの関係について探ってみた。続いては、無回転フリーキックを生み出した開発秘話、無回転フリーキックを蹴る秘訣について、引き続き、元サッカー日本代表・三浦淳寛さんに伺っていこう。

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スパイクの根元で蹴ると無回転ボールになる!

三浦さん:まず無回転はボールのど真ん中を蹴ります。重要なのはスパイクのどの位置でボールを当てるか。その位置こそが無回転を蹴る秘訣です。それに気付いたのは、高校2年生の時、練習中に失敗をしたシュートでした。地面にボールを置いた状態でシュート練習をしていた時、地面をダフってボールを蹴ってしまったんです。普段は回転しながら飛んでいくボールが、無回転の状態で見たことのない変化をしたので、すぐにスパイクを脱いで、どの位置にボールが当たったのかを検証してみました。

すると、どうやら足先が地面とすれたことで、バレリーナがトゥシューズで立つように足の甲が伸びた状態で、通常よりも数センチ高い位置でスパイクに当たったことが分かりました。そこで、今度は地面に触れないように意識して、同じようにボールを蹴ってみたら無回転でボールがまた飛んでいったんです。

具体的にスパイクのどの位置にボールが当たったんですか?

三浦さん:スパイクの靴ひもを通す一番上の穴に近い、スパイクのほぼ根元です。足の振り方はシュートの基本であるインステップキックと同じで、足を地面に対して縦に立てて蹴ります。だから、無回転を蹴るには足のサイズも影響しているんです。僕は足のサイズが25.5~26.0くらいだったので、スパイクの根元にボールを当てて無回転を蹴ることができました。

しかし、足のサイズが大きい選手が無回転を蹴るには、足を地面に対して横に寝かせて蹴るしかありません。その蹴り方ではボールのど真ん中を蹴るのは相当難しいですから、僕が世界の中でも早い時期に無回転でゴールを決められたのは、足のサイズが小さかったことが理由の一つでもあったと思います。

指を刺している位置で無回転を蹴っていた三浦氏。シュートのみならず、パスが無回転になってしまうこともあった右足では、ピッチに対して足を寝かせ、足の内側で蹴るインサイドキックなどでパスを出していたそう。また、左足では綺麗な回転をかけたボールを主に蹴り、状況に応じて左右の足を使い分けながら味方にパスを出していた。

通常のシュートとの違いは、1000分の1秒ほど、ボールとスパイクが接地している時間が無回転は長いというデータもあります。ボールとスパイクが触れている時間も関係しているそうですが。

三浦さん:そういったデータがあるんですね(笑)。感覚的にも若干長いと思いますが、勘違いされやすい部分でもありますね。無回転は「ボールを押し出して蹴る」ようなイメージをされていると思うのですが、僕のイメージだと、押し出して蹴った瞬間に足をすぐに引く(戻す)ような感覚です。

理論的には、ボールとスパイクの接地時間が長ければ長いほど、無回転のボールは蹴れると思うんですが、実際には振り足のスピードもありますし、ボールの反発もあります。押し出して蹴るとは言っても、足からボールが離れてしまった後には押し出すことはできませんから、追求したのは「ボールをスパイクで当てた瞬間の時間をどれだけ長くできるのか」でした。その答えが、先ほどの蹴った瞬間に、ぐっと足を引くようなイメージなんです。だから、1000分の1秒ほど長いというのは、そこに表れているんでしょうね。