空気予報 空気の未来を考えよう
空気予報 空気の未来を考えよう

なぜ不規則な変化をする無回転ボールが蹴れるのか キッカーと風の関係 無回転フリーキック実践編

なぜ不規則な変化をする無回転ボールが蹴れるのか
キッカーと風の関係 無回転フリーキック実践編

2017.03.30

(文/すぎさきともかず 写真/高梨秀樹)

蹴り方さえ覚えれば、小学生でも無回転ボールは蹴れる!

足の小さい子供の方が、大人よりも無回転を蹴りやすい!

三浦さん:現在、福島県にあるクラブチームの小学生たちに無回転のキックを教えているのですが、彼らは教える度に蹴れるようになっているんです。

何か特殊な練習方法で教えられているのですか?

三浦さん:少し特殊な練習ボールを使っています。このボールは、僕とボールメーカーのモルテンさん、筑波大学の浅井武教授(人間総合科学研究科教授。筑波大学蹴球部監督も務めるキック研究の第一人者)と一緒に2016年に開発したもの。これを彼らにプレゼントして、定期的に蹴り方を教えています。子供たちは大人よりも足が小さいですから、無回転を蹴りやすいんです。

開発されたボールには具体的にどんな仕掛けがあるのですか?

三浦さん:ゴルフのボールにも、パッティング用にラインの入っているボールがありますよね。打ち出す方向とラインを合わせてパッティングをすれば、目標を狙いやすくなりますし、ボールが転がる際に綺麗な回転がかかっているのかも確認できます。それと同じ考えで、開発した練習ボールにもキックの目印となるものを幾つか入れています。

「目印を定めずに“なんとなく蹴っている”状態ではキックの精度も上がらない」と話す三浦氏。開発したボールには、ボールの真ん中を示す丸いマークや点線になっている真っ直ぐな2本のラインを設けており、無回転を蹴る足の振りぬく方向を示している。

よくフリーキックを蹴る前に、セットしたボールをじっくりと見ているシーンがありますが、あれも目印が関係しているのですか?

三浦さん:無回転とはあまり関係ないのですが、キックをする方向とボールメーカーのロゴマーク(三角形であれば頂点の位置)を合わせて、目印にしています。具体的にはロゴの向きとゴールポストを合わせていました。これは中村俊輔選手もやっていると言っていましたね。カーブをかけてフリーキックを蹴る時は「右のゴールポストよりも何メートル右!」というように目印を設けて練習をしているんですよ。ボールのこの位置を、どの角度で蹴れば、どのくらいボールが曲がるのか。自分で、ボールの曲がる感覚を養っているんです。

お話しを聞いていると、具体的な蹴り方もあって、世界的に足のサイズが小さい日本人の方が無回転は蹴りやすいと感じました。それだけに、無回転を蹴る日本人選手が少ないのは寂しい現状です。

三浦さん:教えれば蹴れるようになると思うんですけどね。この間、テレビ番組の企画で原口元気(ブンデスリーガ、ヘルタ・ベルリン所属、日本代表)選手に無回転の蹴り方を教える機会があったのですが、元々は番組の企画ありきの話ではなくて、彼の方から「無回転を教えてほしい」という連絡が知人を通して僕に入ったんです。

原口選手はドイツでプレーしている中で、ブンデスリーガのゴールキーパーからミドルシュートでのゴールを奪うことが難しいと感じていたそうです。シュートのバリエーションに無回転を加えることで、ゴールする確率をより高めたかったんでしょう。少し教えただけで、蹴るコツを掴んで蹴れるようになっていました。

開発したボールは無回転のキックだけでなく、回転をかけたキックの練習にも使用できる。右にカーブをかけて蹴りたい際には、写真のようにボールのど真ん中にスパイクを当て、左の矢印方向に足を振りぬいてカーブをかける感覚を養っていく。

現役の日本代表選手に無回転の蹴り方を指導されて思うことはありましたか?

三浦さん:現在、約4年もの間、日本代表の試合ではフリーキックからのゴールが生まれていないので、他の現役日本代表選手にも話をしてみたいと思いました。絶対に蹴れるようになります。特にフリーキックは誰にも邪魔されずに技術を発揮できるプレーですから、器用な日本人なら世界一フリーキックが上手い国になれるはずです。

最後に「無回転フリーキック」は今後、どうなっていくと考えていますか。

三浦さん:日本代表選手は全員が蹴れるくらいのキックになってほしいですね。サッカーは得点が入らなければ観ている方も面白くないですから、そういう意味でも無回転の蹴り方を覚えた方が良いと思います。

そのためには、「フリーキッカー専門コーチ」がどのクラブチームにもいるのが当たり前にならないと。僕が指導を受けた監督で、実際にフリーキックが蹴れた人はジーコ元日本代表監督くらいでしたし、丁寧な指導を受けた経験もありません。身体を鍛えるフィジカルコーチやゴールキーパーコーチと同じくらい専門的な特殊技術ですから、子供たちはもちろん、プロ選手の指導も機会があれば、率先してやっていきたいと思っています。