空気予報 空気の未来を考えよう
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空気を香りでデザインする
香りのデザインで空間演出

2016.11.09

(文/佐藤俊郎)

アットアロマのオリジナルアロマ。同社は「アロマセラピーで空間をデザインする」をコンセプトに、業務用アロマディフューザーや天然エッセンシャルオイルの企画・販売を行なっている。

香りが時と場所の記憶を刻む

五感の中でも嗅覚は、日常生活ではあまり意識することがない感覚機能と言われている。確かに目や耳ほどに意識的に使うということはあまりないだろう。ただ、冷蔵庫の奥で数日前に作ったおかずの残り物を発見したとき、無意識にニオイを嗅ごうとする。これはまだ食べられるかどうか、おかずが腐っていないかどうかを判別しようと本能的に動いてしまう。また、焦げ臭いニオイや異臭が不意にすると、カラダが危険を察知して即座に反応する。思考があれこれ働く前に、脳に危険の前触れを知らせる検知能力が嗅覚には備わっている。

こうした脳に直接アクセスし、無意識に感じる嗅覚は時や場所の記憶を残してもくれる。素敵な出来事を経験したとき、そのとき周囲に漂っていた香りは「いい思い出の香り」と記憶される。時を経て別の場所で同じ香りを嗅いだ瞬間に、かつての素敵な出来事が鮮明に蘇ったりする。初恋の彼女が着けていた香水は何歳になっても甘酸っぱい思い出の香りだし、祖母の家に入ったときにいつも感じた独特のニオイは懐かしさを誘う香りとしていつまでも残っている。

「つまり、目には見えない香りですが、人にとっては印象に残りやすい。そこで目的やニーズに合わせて香りの種類を使い分けることで、空間のイメージや雰囲気をデザインすることができるんです」。こう話すのは植物や果物といった自然素材から抽出するエッセンシャルオイルを使ったアロマでホテルや空港ラウンジ、オフィス、病院、それに商業施設などの空間演出を手掛けるアットアロマ(東京・世田谷)のアロマ空間デザイナー、武石紗和子さん。その空間が目指す世界観や高級感、付加価値性などのブランディングを香りで表現し、訪れた人や過ごす人たちに的確にインプットできると言う。

アットアロマのアロマ空間デザイナーである武石さん。企業側が求める香りのイメージや機能をもとにオリジナルの香りをデザインする。

実際、同社が香りで空間演出しているところを挙げてみると、ホテルではパレスホテル東京の宿泊ロビー、エレベータホール、スパ、ブライダルサロン。東急の各ホテルのエントランスロビーや、富士屋ホテルの共有スペース、全国133か所のアパホテルでエントランス部分の演出を手掛ける。そのほか、全国14か所あるANAの空港ラウンジに伊勢丹新宿店、シップス、LEXUSショールームなど、いずれも空間でのブランド発信に重きを置いているところが多い。

植物の持つ機能性も引き出していく

さらに武石さんが注目するのは天然の香りが持つ、人に癒しや力を与える効果だ。「花の柔らかい香りを嗅ぐと華やいだ気分になるし、柑橘系のすっきりとした香りはシャキッとなり、木や森の温かい香りは気分を落ち着かせてくれます」。機能面でも優れ、ユーカリには消臭作用があり清潔な空気環境をつくるのに役に立ち、ペパーミントは爽やかで涼しげな感じを体感させてくれる。コクヨと東京大学が行った実証実験によると、気温が高い日でも香りがあることで不快指数が低くなるという結果も出ている。

クリスマスツリーや正月の松飾に使われるトドマツから抽出したオイルは、自動車の排ガスや工場設備からの排出、家庭のキッチンなどから発生する有害な大気汚染物質、NO2(二酸化窒素)を空気中で低減させるという。業務用ディフューザーにトドマツオイルをセットして稼働させた試験をしてみると、のべ2分間の噴霧によってNO2の90%以上が減少する数値を測定した。まさに空気を浄化する働きがあるわけだ。