空気予報 空気の未来を考えよう
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天気を読み、職場の空気も読む
職場の空気の作り方編

2016.12.02

(文/佐藤俊郎)

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空気を読むことで、人との関係や社会を考える

天気を読む専門家である河合さんは健康社会学者だけに、社会をはじめ職場や学校、家族といった場の空気を読むことにも詳しい。2016年は英国のEU離脱や米国次期大統領がドナルド・トランプ氏に決まるなど、国民投票の結果が当初の予想を覆す“衝撃”が相次いだ。ただ、そうした予想が外れたのも、マスコミや評論家が各々の国民の空気をしっかりと読めていなかったことに起因すると河合さんは指摘する。「空気を読むことが、今ほど大切になっている時代はありません」と強調しています。

朝の挨拶一つでオフィスの空気がガラリと変わる

「会社でも学校、家族でも、そこでの人間関係の状態がリアルに、そしてストレートに周囲の空気となって現れます」。例えば、業績が伸びていて、社員同士の関係もうまくいっている会社はオフィス内に入った瞬間に空気が気持ちよく、温かく感じるという。社内を歩いていると誰彼ともなく挨拶が飛び交い、フロアを掃除している人や守衛さんまでもにこやかな表情で会釈を返してくる。見ると、会話もよく交わされており、空気が実に生き生きとしている。逆に、ワークライフバランスや女性活用をどんなにうたっていようが、入った瞬間に空気が淀み、温かみを感じない会社はそうした文言が単なる建前であることがわかってしまう。実際、会社の経営陣はどこか偉そうだし、下のものは上にへつらった挨拶をするばかり。楽し気な会話も聞こえてこないらしい。家族でも同じようなことが起こるという。

今どきの人間関係は「温暖化」で下品になった

こうした人間関係の状態を河合さんは湿度にも置き換える。「かつての日本はどちらかというと湿度は高め。ジトジト、ジメジメとしていました。そんなウエットさが鬱陶しくて、みんなドライに変わり出したのですが、どうもドライが過ぎてしまっているようにも思えます」。乾きすぎるとちょっとしたことでギスギスしてしまう。加えて、乾燥は人の体力を奪い、疲弊させるわけだ。

地球温暖化の影響で、猛暑と厳寒が相次いだり、土砂降りの雨が急に降ったと思ったらまったく降らない日が続いたりと天気の変化も穏やかではない。「日本はもともと四季折々の変化が多彩でとても品の良い気候でした。それがどうも下品になってきました」。河合さんに言わせると、ちょうど人間関係でもこの温暖化は起こっているようで、やむことのないいじめや、SNSのつぶやきに目くじらを立て炎上が起こる。社会全体がヒステリックな状況に陥っていると目をくもらす。

「もっとも、湿度60~65%の心地良い、ストレスを感じない人間関係に保とうとしても、もの足りないので人はつい刺激を求めてしまうんです」。そして天気でそうした気持ち良い日があまり多くないのと同じで、人間関係も絶えず良好ということはあり得ないとか。「そもそも人間関係は面倒くさいもの、煩わしく感じても不思議でない。でも、大変だからこそ、関係を良好にしようとあれこれ努力する。相手の気持ちも慮り、気を配り、関係を良くしようとがんばる。そんな苦労があるからこそ、関係が築けたあとの達成感や充実感があるんです。そして、大変さを知っているからこそ、その尊さもわかるんです」