空気予報 空気の未来を考えよう
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空気を見える化したオブジェのはなし
空気の器編

2016.12.28

(文/佐藤俊郎)

何の制約もなく「作りたいものを作る」がヒットを生む

同社は東京・立川で、50年に渡って印刷から加工までを一貫して行っている工場。安さばかりが求められる印刷の下請け業から脱却しようと、外部のクリエーターと組んでオリジナルのプロダクトブランド「かみの工作所」を2006年に立ち上げた。1/100建築模型用添景セットシリーズ「テラダモケイ」を生み出すなど、紙製品の新しい可能性を追求している。空気の器もそうした活動の一環で、店舗の内装や展覧会の会場構成などで今や多方面で引っ張りだこの、トラフ建築設計事務所(東京・目黒)とともに2010年に発表した、ハニカム構造を採用したのも、建築家ならではの発想だった。

ただ、完成に至るには前途多難で、底面を楕円や四角にしたり、切り込みを大きくしたり、サイズそのものももっと大きなタイプで試すなど、形状を保ち続ける加工に至るまで8か月に及ぶ実験を重ねたそうだ。ようやく安定したのが0.9mm幅。この幅でカットするというのは抜型の歯の限界ぎりぎりで、同社にいる職人でもたった一人しかできない“カミ技”という。しかも、完成したものの、手間が掛かるので価格は2枚入って1200円と紙製品としては高め。売れるかどうかわからないまま、都内で開かれた展示会に出すと、2週間の会期中に用意した400セットがすべて完売するなど予想外の展開となった。

「私たちはマーケティングということを一切やっていません。ただただ、作り手のクリエイターさんたちが面白いと思って作りたいもののアイデアをだして下さいます。結果的に、買い手の心にひびいてくれるんです」(山田さん)。

2010年のスパイラルガーデン(東京)で行った展覧会。天井から吊り下げ浮遊する空気の器。様々な着色が施されたものも展示された。

2013年の目黒区美術館(東京)で行った展覧会では、インテリアとしての紙の器の面白さも提案された。

商品に漂う「何に使うかわからない」余白感は空気の器の魅力をどんどん開花させることになる。東京・表参道のスパイラルガーデンで行った展覧会で、5mのテーブルに300個の空気の器を展示する際、「いろいろ柄があった方がおもしろい」とそれまで無地の蛍光色だった表面にグラフィックデザインを施すことにした。紙なので様々な印刷が試せ、表と裏で違った柄も印刷できる。それを立体にすると、表と裏が交差して見え、角度によっても表情が変わることがわかった。

買った人が「参加」できる楽しさに包み込まれる

企業コラボもののほか、美術館の企画展のミュージアムグッズとしても重用されている。

買った人がメッセージを書いて送れるメッセージカードという「用途」も発見され、空気の器がコミュニケーションツールの横顔も持ち始めた。こうした新しさや多様性はいろいろなモノコトを引き寄せることにも。ファッションブランド「ミナペルホネン」、漫画家井上雅彦氏、グラフィックデザイナー仲條正義氏や祖父江慎氏といった著名クリエーターとのコラボものも誕生。どこかアートの色合いも兼ね備え始めたのだ。ちなみに、スタートから6年間で発売した空気の器は55種類以上に膨れ上がり、売り上げ枚数も20万枚を超えているとか。

福永紙工では、オプションで「紙のスタンプキット」というのも販売している。空気の器の表裏をキャンバスにして、自分だけの一品が作れるものだ。同社はこのキットを用いた子ども向けのワークショップを各地で行っており、最近ではアクリル絵具を使うバージョンも加えている。「みんなニコニコ顔で楽しそうにやってくれます。多少失敗しても、それで作品になってしまうのがいいのでしょう。モノからこうしたコトも生まれるなんて、まったく想定外でした」と山田さんもまたニコニコの笑顔で語る。

まさに、空気を包み込むという見える化したことで、器からいろいろな面白さがあふれんばかりに次々にこぼれだしているといった感じだろう。

紙のスタンプキットを使うなどして、オリジナルの空気の器を作ることができる。空気の器ホワイトが3枚入り1296円。

福永紙工ネットショップ「かみぐ」
http://www.kamigu.jp/category/select/cid/359/language/ja

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