空気予報 空気の未来を考えよう
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“春先の空気”の最大の関心事
花粉にまつわる展覧会 生成から発症まで知識と対策の最新事情

2017.02.03

(文・写真/佐保 圭=フリーライター)

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2017年3月20日まで、国立科学博物館(東京都台東区上野公園)で開催されている企画展「花粉と花粉症の科学」。前編の「“春先の空気”の最大の関心事 「花粉」に科学の視点で迫る」では、植物学の視点から「花粉」と「花粉症の歴史」について詳細に解説された第1章から第3章までの内容を解説した。

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今回は、同企画展の最終章となる「第4章 花粉症の対策」の展示・解説を紹介する。そこには、花粉症に悩む人や子どもを花粉症から守りたいと願う人にとっては、花粉の少ないきれいな空気をいかに守るか、花粉症を発症したあとにはどのような対処法があるのか、有効なヒントがちりばめられていた。「第4章 花粉症の対策 - 花粉生成・飛散から予防・治療の最前線まで」は、「生成」「飛散」「曝露」「発症」の4つのカテゴリーに分かれる。

1つめの「生成」では、スギやヒノキの雄花を調査して花粉の飛散量を予測する方法を紹介。1992年に富山市内の神社で発見された「無花粉スギ」や、2012年に神奈川県秦野市内の山林で発見された「無花粉ヒノキ」についても解説している。2014年現在、関東1都6県の植林用スギ苗木の約8割(約93万本)が少花粉品種の苗木だという。スギの雄花だけに感染して枯らすカビやきのこの仲間を生物薬剤として利用する研究も紹介される。

次の「飛散」では、実際に飛び始めた花粉をどのような機械で測量するのか、最も普及している「ダーラム法」を含む3つの装置が展示されている。ドローンで高度ごとの花粉の量を測定・分析する最新の観測システムの取り組みも、動画で観ることができる。花粉が持つ抗原の量をイムノクロマトグラフィ法で簡易に調べられる検査キットも展示されている。

「曝露」では、花粉症対策の実例を紹介。花粉の体内への侵入を防ぐ専用のマスクや眼鏡のほか、外出時に花粉が着いても玄関前ですぐ払い落とせる服の生地など、花粉を家の中に持ち込まないためのさまざまなツールや、室内に入った花粉をからめとるカーテン生地や、空気中の花粉を除去する加湿器、空気清浄機なども展示・解説されている。

4つめの「発症」では、花粉がくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を発症させる仕組みの詳細な解説や、注射による免疫療法の「皮下免疫療法」、口の中や舌の下に投薬する「舌下免疫療法」などの治療法を紹介。近年注目される乳酸菌による花粉症の改善や、遺伝子組換え技術で開発した「胃で分解されないコメ」に花粉抗原を組み込み、抗原を腸まで届ける最新の研究の紹介など、興味深い情報が並ぶ。

この第4章の監修を担当した花粉問題対策事業者協会 運営委員会 委員長の池田浩氏に、花粉症対策に必要な心がけを尋ねると「第1に、花粉情報をしっかり入手して、飛散が多いときは外出しない。第2に、外出時はマスクや眼鏡で防御し、家の中には持ち込まず、持ち込んだら、空気清浄機で除去する。第3は、症状に合った治療をしっかり継続する。一番大切なのは『花粉にどれだけ接しないようにするか』です」という。

ここまで花粉と花粉症にしぼった展示は、国立科学博物館では初めてだという。ユニークな模型や貴重な映像を楽しみながら、第1章から第4章までたどっていくだけで、花粉症に対する知識を飛躍的に深めることで、どうすれば「花粉の少ない“きれいな空気”のなかでの暮らし」を守ることができるのか、有効な対処法のヒントを見つけることができるだろう。