空気予報 空気の未来を考えよう
空気予報 空気の未来を考えよう

太陽が司る日本の気候の今昔を知る
桜の開花日が解き明かした中世の気温編

2017.03.24

(文・写真/杉山元洋)

<<桜の開花日が解き明かした中世の気温編はこちら

桜の開花予想の研究から、地球の気候に太陽の活動が大きく関係することに気がついた青野靖之准教授。論文をイギリスの学会で発表したところ、賛否両論を巻き起こしたのだと言います。

* * *

——学会の反応はいかがでしたか?

「面白い」という賛意もありましたが、「太陽活動がダイレクトに地球の環境変化に影響するわけがない」という反対意見も多かった。なぜなら当時は、地球の気候は太陽の直射日光に左右されると考えられていたからです。日射量は太陽活動が大きく変化しても、0.1〜0.2%程度と僅かな増減しかないので、誤差の範囲として扱われてしまうんです。

——ではなぜ実際に気候が変わるのでしょうか。

黒点というのは磁場の出入り口になっていて、地球に届く紫外線は最大で6%前後も増減します。それが地球大気の上の層に吸収されると、温度の分布が変わるため風の動きに作用すると考えられます。風の変化は、雲にも影響し、巡り巡って気候を変動させるというわけです。

——ここ数年でもずいぶん夏場などは暑くなったと感じます。これも太陽活動の影響なのでしょうか?

江戸時代と比べて2℃ほど気温は上がっています。現在は、黒点活動は活発ではないので気温は下がるはずですが、ただちに気温に反映されないのは、地球の表面を覆う海の流れや風の影響だろうと思います。太陽活動による気温の変化は、上がるときは穏やかで、下がるときは急激です。過去の事例から考えると、いつ気温が下がってもおかしくはありません。

実は、1950〜60年代の都市の気温は周辺より低いんです。何故かと言うと、大気汚染が原因で発生した粉塵などの汚染物質が空気中に漂って、地面を温める太陽光線を遮断してしまった。都市部の夏場の温度上昇が注目されるのは、じつは公害対策基本法が施行されて大気汚染が解消された後のことなんです。

——都市部ではヒートアイランド現象が問題化されて久しいです。

ヒートアイランド現象の主な原因は、太陽や地球環境に関係するのではなく、「温まりやすく冷めにくい」という、都市の構造にあります。つまり、気候ではなく地域の問題で、人為的な排熱に加え、ビルなどの大きな建物は温まると熱を排出しにくい。さらにそういった建物は密集しているため、空気が移動しにくいので朝を迎えるまでに冷めきらない。昔は地面が平らで空気が移動しやすかったので、日が落ちるとわりとすぐに涼しくなったわけです。

——最近では大都市などで「ゲリラ豪雨」と呼ばれる大雨が頻発しています。

ご存知の通り、雨の原因は水蒸気が集まってできた雲です。いわゆる夕立は、山間部から降りてきた積乱雲によって降る雨のこと。一方ゲリラ豪雨の雲は、交通活動などの人間活動全般で排出された水蒸気が原因。都市は乾燥していると思われがちですが、実は水蒸気の発生源で、内陸のど真ん中ほど発生しやすいので予測が難しい。例えば、埼玉や東京の北部でゲリラ豪雨が頻発しますが、原因は相模湾、鹿島灘、東京湾という3つの方向からの海風の合流点のため、水蒸気が集まりやすいからだと考えられています。

——都市での温暖化が進む中でどうすれば快適に過ごせるのでしょうか?

まずは体感上の快適さを上げる工夫をするといいと思います。例えば、日中の道路に水を撒く「打ち水」が注目されたことがありますが、たしかに水分が蒸発して地表の熱を奪うので地面の気温は下がりますが、空気中の湿度は上がってしまう。「蒸し暑さ」の正体は、自分でかいた汗がいつまでも乾かない不快感で、汗さえ乾けば肌表面の熱が奪われて涼しく感じる。何か手を打つと、必ずメリットとデメリットの両方が発生してしまうんです。

——温度と湿度の関係を天秤にかけて判断する必要がありそうです。

暑い時期の快適さには影の影響も大きい。真夏に影に入ると体感的には5℃前後違うので、街に影を増やすひさしをつくるのも効果的だし、空気が通り抜けやすいよう、歩道を地面から浮かせて多層構造にしている試みをしている地域もあるようです。ただ、すぐに気温を下げるほどの効果を発揮するわけではないので、人間の感覚を大切にしながら、古文書から現代までの情報を丹念に数値化して、人々の生活全般に役立つことがないか調べて行きたいですね。