三井物産  環境コミュニケーションリポート 三井物産環境基金の10年 ~未来につながる社会をつくる~ 福島の真の復興への道を拓く 高校生たちの地熱を使った養殖事業

第3回 学生リポーターの体験リポート

地域に応じた多様な支援の必要性を実感

東京海洋大学大学院
海洋科学技術研究科
海洋生命科学専攻
博士前期課程1年

他力 将

※リポーターの所属先、学年などは取材当時の情報です

 大学院で水族生理学を専攻しており、サケ科魚類の繁殖生態について調べています。大学内の別の研究室で実際に使用している閉鎖循環式の養殖システムを、福島高校のスーパーサイエンス部の生徒さんたちが利用されているということで、現場を見てみたいと思ったのが参加の動機です。

 また、5年前の東日本大震災で、祖父母が住んでいた宮城県南三陸町も巨大津波で壊滅的な被害を受けました。この5年間で何度も足を運び、津波被害を受けた地域の変遷は見てきましたが、福島県の沿岸部のように原発の被害を受けた地域は一度も見たことがありませんでした。そのような地域はどうなっているのか、現地の人々はどのような想いで日々を過ごしているのかを知りたいと思いました。

 取材初日に、福島市内の福島高校を訪問し、スーパーサイエンス部顧問の遠藤教諭から、スーパーサイエンス部の活動についてお話をうかがい、生徒さんたちの部活動の様子を見学することができました。翌日は土湯温泉に行き、地熱と好適環境水を用いて、実際にウナギの養殖と南国フルーツの栽培を行っている施設を取材させていただきました。

 驚いたのは、高校生たちの地元に対する想いの強さです。また、今回の震災に対して、悲しみや憎しみの心ではなく、ある点においては「いいきっかけとなった」と前向きに捉えようとしている人がいるというのも興味深く感じました。正直なところ、私は震災に対しては負の感情しか持っていなかったので、震災に対する考え方を改める機会となりました。

福島高校スーパーサイエンス部顧問の遠藤教諭より講義いただいた、活動経緯と実験内容について、真剣にメモを取る

自分なりの復興支援のあり方が見えた

 取材ではまた、南相馬市小高区や相馬市ほか、津波と原発、両方の被害を受けた地域を見て回り、津波被害の地域と原発被害の地域とでは、現地の課題などが大きく違うということも初めて知って驚きました。また原発の被害を受けた地域の中でも、立ち入りが制限されている区域とそうでない区域とでは、直面している課題が大きく異なります。地域ごとにサポートしていくことの必要性を感じました。

 今までは被災地の復興のために自分は何ができるのだろうということをぼんやり考えて、答えが出ないままでした。しかし今回の活動を通し、現地の人々が熱い想いを持って常に動き続けていること、課題は山積みですが考え方を変えれば可能性や解決策もたくさん見出すことができることを知りました。さらに、アプローチの仕方は多種多様だと知り、自分自身が復興にどう関わることができるのかについての答えも、見えてきたような気がします。例えば大学院でもっと研究に励み、研究職について水産業を発展させられるような技術を開発する、水産教員の専修免許を活かして未来を担う高校生たちの人材育成に励むといった形で、被災地の復興に関わっていくことができるかもしれません。

 今回参加させていただいたことで、私たち学生4人の意識が大きく変わったことは間違いありませんが、それを4人の中で留めてしまうのではなく、広げていくことで初めて意味があると思います。多くの人に伝え発信し、それを受け止めた人が、「自分には何ができるだろう」と考えたり、「自分にはこんなことができる!」と行動に移してもらったりするようになれば、社会課題の解決へ繋がっていくのではないかと思います。そのためにも、私が得た情報や考えを積極的に周囲へ発信していくつもりです。

活動中の福島高校スーパーサイエンス部の生徒にも話しかけ、話を聞く

第3回 学生リポーターの体験リポート

新しい「福島」の創出に期待が高まる

横浜国立大学
理工学部
建築都市・環境系学科3年

井口 智人

※リポーターの所属先、学年などは取材当時の情報です

 今回、三井物産環境基金の学生リポーターに応募した動機は、東日本大震災による被害を自分の眼で捉え、考える機会を得て、自分の中の大震災に関する問題意識を明確にしたいと考えたからです。

 私は昨年の同時期に、東日本大震災のボランティアで宮城県南三陸町を訪れ、テレビでみる震災の被害と現地の被害の、大きな違いを経験しました。それならばもっと被災各地の現状を自分の眼でみるべきだと感じ、特に昨年は津波による被害を目のあたりにしたので、今度は原発事故による被災地をみたいと強く望みました。

 また私はこれまで、地域の生態系保全の研究に取り組んできて、将来は研究職を志望するようになりました。今回、高校生による研究活動を取材することで、これから自分が研究を続ける上でのモチベーションを高めることができるのではないかということも、応募の理由の1つです。

 震災後初めて福島県を訪れ、復興活動をするさまざまな方とお話しする機会を得ました。その中で感じたのは、やはり昨年訪れた南三陸町と今回訪れたそれぞれの地域で浮かび上がった課題では、大きく性質が異なっているということです。地域ごとに、津波、原発事故、そして風評被害という複雑な問題が絡み合っている現状を知りました。

 その中で特に、「風評」の怖さと風評が及ぼす社会的課題の深刻さを痛感しました。被災地では、地震や津波の建物被害に対する「モノ」の復興は少なからず進んでいます。地元に戻りたいと考える人も増えています。しかし風評被害によって、人々の「心」の復興までも押しつぶされているように感じ、胸が痛む思いがしました。

 でも、今回、取材に協力していただいた方々は、その現状を諦めることなく、自分たちが新たな風評を創り、インターネットなどのネットワークを駆使して、大きく広げようとする取り組みをしていました。自分たちでいかに新たな風評の流れを創るかという、前向きかつ主体的な姿勢に、学ばされることが多くありました。

スーパーサイエンス部顧問の遠藤教諭より飼育しているウナギについて説明を受ける

突破力を持つ若い力が課題の解決には必要

 震災は、誰にも止めることはできません。だからこそ震災後に残った地域の価値を見直す必要があると思います。そして取り戻せるものを取り戻すだけでなく、さらに新たな固有価値を生み出すこともまた復興なのだと考えています。それは震災前とは違うカタチになるのかもしれませんが、そうした地域の方向性をみんなで考え、みんなで出すプロセスこそが何よりも重要であり、その結果、全国に負けない、世界に負けない新たな福島の創出に繋がると確信しています。

 複雑化した福島県での課題に対して、従来での手法は通じません。突破力を持ちエネルギッシュな若い力が必要だと思います。そして、既存の枠組みにとらわれない発信力のある政治家や、他分野で活躍できる人材の育成が急務だと思うし、福島という地が、新たなグローバルリーダーの養成土壌になってほしいと願います。

 今回の経験を通じて、地域の課題を解決する方法としては、社会学的なアプローチだけでなく、福島高校の活動のように、産業の育成を支える技術開発の向上という意味で、サイエンスの果たすべき役割は大きいということを感じました。今後は、固定的な学問分野から解決方法を考えるのではなく、もっとさまざまな学問分野から問題解決の手法を見出す。そして学問における理論と実践の両方の側面からの取り組みを、複雑な現代社会問題、特に地球環境問題などにおける課題解決に生かすようにしていきたいと思います。

福島高校SS部の生徒へ研究内容について質問する

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