日経バイオテク Online Special

“ノバルティス バイオキャンプ”からバイオテクノロジーの大変革期をリードする人材誕生を期待

ヘルスケア分野でグローバルに活躍できる若手人材の育成の場として、これまで300名以上が参加してきた「ノバルティス バイオキャンプ」。2泊3日のワークショップの中で参加者が作成するヘルスケア関連のビジネスプランにアドバイスし、投資家視点で厳しく審査してきた、審査委員長の北野 宏明氏と審査委員の石倉 大樹氏に、「ヘルスケアやバイオテクノロジー分野で求められる人材像」や「バイオキャンプへの期待」などについて対談いただいた。

ノバルティス バイオキャンプ 審査委員長 北野 宏明 氏 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長 所長。特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構会長。沖縄科学技術大学院大学教授。工学博士。
ノバルティス バイオキャンプ 審査委員長
北野 宏明 氏
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長 所長。特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構会長。 沖縄科学技術大学院大学教授。工学博士。
ノバルティス バイオキャンプ 審査委員 石倉 大樹 氏 株式会社日本医療機器開発機構 取締役CBO。P5株式会社(P5, Inc.) 取締役。
ノバルティス バイオキャンプ 審査委員
石倉 大樹 氏
株式会社日本医療機器開発機構(JOMDD)
取締役CBO。
P5株式会社(P5, Inc.) 取締役。



急速に発展するバイオテクノロジー。求められる人材の資質も進化する。



――今のヘルスケアやバイオテクノロジー業界では、どのような人材が求められているでしょうか?

北野 生命科学は今、大変革期を迎えています。これからは、医療領域にプラスして、新しいバイオテクノロジーやデジタルテクノロジーをすごくよく理解していて、誰も思いつかなかったアイデアを出してくるような新しいタイプの生命科学者が急速に増えてくると思いますね。

石倉 例えば、近年のゲノミクスは、研究者自身がウエットラボでデータを作る必要がないので、エンジニアとしてのバックグラウンドだけでも、バイオテクノロジーに関係した新しいことができる領域です。

北野 ルーティンの実験はロボットの方が高い精度で行えるようになりました。ロボットの範囲は、今後も拡大するでしょう。さらに、深層学習を使った人工知能システムもどんどん生命科学領域に導入されてきます。これに伴って、求められる資質も変わってくると思いますね。

石倉 北野先生に伺いたかったのですが、日本ではAIエンジニアの数が圧倒的に少ないと感じています。バイオインフォマティクスも同様です。これはグローバル全体でも同様なのか、日本がとりわけ弱いのか...。

北野 グローバル全体でも人は足りないのだけれど、日本は特に弱いと思う。

石倉 教育の問題なのですかね。

北野 教育もそうかもしれないですね。インフォマティクスをちゃんと勉強できるコースが少なかったですよね。やっぱり米国が圧倒的に優位です。例えば、90年代前半から、コンピューターサイエンスの学位を持っている人に奨学金を提供して、バイオラボで5年間研究させるようなことに多額の予算をつけていました。その頃の日本にはありませんでした。米国では、コンピューターサイエンスがわかって、バイオロジーがわかる人を、非常にシステマティックに養成していたし、それに関する資金調達の仕組みもちゃんと作っていました。欧州も、2000年頃から、かなり真剣にプログラムを作って人材育成をしています。

“プラットフォーム”としての日本の魅力が成長の源泉

――日本の成長のカギはどこにありますか?

北野 まず「日本」を2つの視点で見る必要があります。ひとつは「日本人」、もっと重要なのは、日本という「場所」なんです。日本という場所に価値があることを目指すのか、日本人が頑張ることを目指すのかは、結果的なアクションとしてはオーバーラップする部分もありますが、マインドセットとしては全く違うことです。
 目指すべきは、日本という場所がプラットフォームとして非常に優れていて、日本人も含めて、みんなが集まってきて、そこから新しいことが起こる。そうなると面白い人が来るので、そこにいる日本人も伸びるわけです。
 日本って実はすごく人気があります。食べものはおいしいし、安全だし、効率が良いので、一度日本に来ると多くの人がこんなに良い所はないと実感して、居着きたくなっています。ここは自信を持つべきです。

石倉 例えば、アメリカのトップの大学の教授を見たら外国人の割合は非常に高いですよね。一方、日本の大学は日本人ばかり。やはり世界中から優秀な生徒を集められる先生を、もっと世界中から日本に連れて来るべきですよね。

バイオキャンプが持つ“ダイバーシティ”が大きな価値を生み出す

――そのような日本の環境を考えて、バイオキャンプに何を期待しますか。

北野 バイオキャンプって一種のお祭りですよね。医学だけでなくITなどさまざまなバックグラウンドの人が集まるので、毎回すごくエキサイティングです。ダイバーシティという特徴も良い点だと思います。参加者の半分は海外からの留学生ですが、この比率は業界のリアリティーですね。

石倉 若いうちに世界の第一線のレベルを実感することが、成長においては重要です。その中でもまれて、つらい思いや挫折を味わうと、その後の伸びが大きく変わります。

北野 これからは日本人だけでビジネスを考えていくことは非常に困難な時代です。そのため、海外の人材が日本に来る、もしくは、自分たちが海外に移るなどという選択肢があります。グローバルな競争の中で必要に応じて、どちらの立ち位置でも取れるような経験をしておくことは大変重要です。バイオキャンプのような多様性のある中での経験はとても価値があることです。そういう意味では、将来を担う研究者として、参加者からもっと先駆的なプランの提案があったらさらに盛り上がると思います。

石倉 サイエンスバックグラウンドを持った学生が集まるのですから、型にはまらない突き抜けたプランが増えるとよいですよね。医療やヘルスケアにおける最先端イノベーションでは、技術がある程度出来上がって、エビデンスが出てきたものが、医療分野に応用されることが多いものです。その狭間にあるような、初期段階のプランが提案されたら、とても楽しいと思いますね。

バイオキャンプが生み出す“コミュニティ”が、将来にわたって大きな財産に

石倉 興味深いトピックとして、ベンチャーキャピタルからバイオテク領域への四半期ベースの投資額が、2017年7月から9月の四半期に最大を記録したという話があります。急成長を遂げているのがニューロサイエンスです。脳の働きがよくわかるようになり、いよいよソリューションを考えられる段階に入ってきました。バイオキャンプで求められているのは、このソリューション段階の1つ、2つ前の段階にあるものだと思います。今から本格的に最先端のことに取り組んでいこうとする人たちの面白いコミュニティができると思います。

――バイオキャンプに参加して良かったこととして挙げるのは、ネットワーク作りが一番多いですね。

石倉 確かにバイオキャンプは医療ヘルスケアに関心があって、パッションを持っている同世代の仲間がつながるきっかけでしたね。

北野 それはすごく重要ですよね。シリコンバレーのように、スタートアップの文化が根付いているコミュニティが、また一つできたことはとても大きなことですね。

石倉 つながっていると、新しいことを始めやすいというメリットもあります。バイオキャンプの卒業生たちが各人で経験を積んでいくと、将来、強力なコミュニティになりますよね。

北野 卒業生はすでに300人以上になっていますよね。このつながりは大変なものです。しかも医療・ヘルスケアに関連していますから、かなりの影響力が出てくると思います。継続することは重要ですね。
 バイオキャンプの卒業生たちは、すごく多様性のある人で、世の中を変えようと思っている人です。そのような人のコミュニティができることが、実は一番大きな財産になるはずです。やはり世の中は人が動かしているのですから。

石倉 先生がおっしゃったように、私も最後は人だと思っています。将来すごい夢を描いていたとしても、実際に社会へ実装できるか、日の目を見るものにできるかどうかを左右するのは、僕らはそれをレジリエンスって呼びますが、忍耐強く、何度でもできるかだと思います。でも、くじけそうになったり、方向を見失ったりするときが必ずあります。そのようなときには年上のメンターや、刺激やアドバイスを与えてくれる人がいるからこそ、常に走り続けられるのです。バイオキャンプはそういう人たちに出会える場でもあります。これから参加される人たちにも、そのような出会いが待っていますから、活発にイノベーションが生み出される場になると思いますね。

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