NATIONAL GEOGRAPHIC Special

プラスチックの可能性を信じて― 25歳、カナダ人事業化の挑戦

地球を取り巻く様々な問題を改善し、人々の生活向上を目指す個人を支援するために創設されたロレックス賞。2019年度の受賞者の中から、喫緊の課題であるプラスチックごみ問題に取り組む、若き事業家を紹介しよう。

 ロレックス賞は世界初の防水クロノメーター腕時計「ロレックス オイスター」の誕生50周年を記念し、1976年に創設された。2019年度は111カ国、957人の応募者の中から10名のファイナリストを選出。43年の歴史上初めてソーシャルメディアキャンペーンを通じた一般投票も行われ、5名の受賞者が去る6月14日に発表された。


 その一人がカリフォルニアを拠点に活躍する、事業家にして分子生物学者のミランダ・ワンだ。彼女はプラスチックごみによる環境汚染に対し、革新的な解決策を模索し続けている。

プラスチックごみを高価値の化学物質に

 世界では毎年3億4000万トンものプラスチック製品が生産されているが、その多くは廃棄され、水資源や土壌を汚染する原因となっている。ワンはCEOを務めるBioCellectionで、プラスチックごみを自動車や電子機器、繊維や洗浄剤といった身近な製品の製造に用いられる工業化学物質に転換するための独自技術を数多く開発している。

 「私たちは、汚れたビニール袋や使い捨ての包装材といった、今日リサイクルできていないプラスチックを使用しています。これらを価値ある化学物質に変えて、毎日の暮らしの中で使われる製品のための耐久性の高い素材を作り出しています」

10代で起業し地球規模の課題に挑む

 ワンがプラスチックごみ問題解決に取り組む決意をしたのは15歳の時。授業の一環で廃棄物処理場を訪れたのが契機となった。その後、2015年にシリコンバレーで起業したワンは、汚染により、リサイクルが不可能とされていたポリエチレンなどのプラスチックを、高い市場価値を持ち、高品質かつ再生可能な化学物質に変える技術を開発した。この方法は、同じ物質を石油から抽出するよりもコストがかからないことから、プラスチックごみの価値を40倍にも引き上げた。

 ワンの次の目標は、完全な商業用処理工場を開発し、2023年までに4万5500トンのプラスチックごみをリサイクルすることだ。これにより、廃棄物から社会に役立つ製品を生産することが可能になるだけでなく、プラスチックごみを焼却または投棄する際に排出される二酸化炭素の排出量を32万トン削減することもできるという。

「世界のプラスチック生産量のうち、再利用されているのはたったの9%」とワンは語る。彼女の技術は、一刻を争うプラスチックごみ問題解決の鍵とされる。

 現在、2021年度ロレックス賞への応募を受け付けている。ワンのように、人類が直面している問題に対し果敢に挑む人々に関心を抱くことは、自ら考え行動するきっかけになるはずだ。

ミランダ・ワン

ミランダ・ワン

分子生物学者。ペンシルバニア大学で分子生物学と細胞生物学を専攻。2015年に起業し、BioCellectionを共同設立。2018年にフォーブス誌が選ぶ「30 under 30(30歳未満の30人)」に選出。

2021年度ロレックス賞への
応募を受付中

ロレックスは、ロレックス賞を通じて40年以上にわたり、大きな挑戦に立ち向かう勇気と強い信念を持つ優れた個人を支援してきました。ロレックス賞は科学と医療、応用技術、探検、文化遺産、環境の5分野で、国籍を問わず18歳以上のすべての人が応募できます。応募方法などの詳細は下記サイトよりご確認ください。

2019年度のその他の受賞者紹介など、ロレックス賞の詳細はこちらから
▷ https://www.rolex.org/ja/rolex-awards

ロレックスとナショナル ジオグラフィックは、60年以上にわたってパートナーシップを結んでいます。人類の知識を向上させ、次世代をインスパイアし、地球を守る必要性の認識を高めるため、これからも幅広い分野で共同ミッションを展開していきます。