たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。熱帯から極地まで世界中の国々を訪れ、海中、生き物、虹、風景、星空など、地球全体をフィールドに、自然の繋がり、水や生命の循環、人と自然の関わり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。著書は、「PLANET OF WATER」(日経ナショナル ジオグラフィック社),「night rainbow」「LIGHT on LIFE」「free」「夜の虹の向こうへ」(小学館)、「Dear Earth」(Pie International),「光と虹と神話」(山と渓谷社)ほか多数。ザルツブルグ博物館、東京ミッドタウンフジフイルムスクエア、渋谷パルコ、阪急百貨店ほかで写真展も多数開催。TBS「情熱大陸」、日本テレビ「未来シアター」をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌等のメディアや講演会などで、自然の大切さ、自然と人間の関係性、人間の地球上での役割などを幅広く伝え続けている。
海の環境非営利団体OWS(Oceanic wildlife society)理事。みやぎ絆大使。

美しいオーロラが見られることで知られるイエローナイフ。オーロラに魅せられて現地をたびたび訪れている写真家の高砂淳二氏は「冬だけでなく、湖に反射する夏と秋のオーロラも見事」と語る。さらに高砂氏を惹きつけたのは、カナダ北部の自然と共存する、先住民たちの生き様だった。

湖に反射する、
貴重な夏・秋のオーロラ

オーロラといえば冬のイメージがありますが、実は夏と秋にも非常に美しいオーロラを見ることができます。北極圏に近いイエローナイフでは、4月からだんだんと白夜が始まって夜でも明るい日が続きます。そのため、オーロラ自体は常にそこにあるのに見えづらくなるのです。白夜が終わって夜が暗くなり始める8月中旬から9月中旬ごろまでは、夏・秋のオーロラを鑑賞するベストシーズンと言えるでしょう。

特にイエローナイフは湖畔に映り込むオーロラが見事。「逆さオーロラ」とも呼ばれ、一見の価値ありです。ただ、やはり夏場は遅い時間にならないとなかなか暗くならないので、冬に比べると鑑賞時間も短くなります。期間も時間も限られた中で見る夏・秋のオーロラは、やはり貴重なものだと感じます。

湖に映る「逆さオーロラ」。凍っていない夏・秋の湖に反射するオーロラは、イエローナイフならではの魅力。
PHOTOGRAPH BY JUNJI TAKASAGO

夏・秋のオーロラを見に行こうと思い立ったのは、現地で知り合った日本人の一言がきっかけ。オーロラに魅せられて移住した人が、「冬だけでなく、ぜひ夏と秋のオーロラを見にきて」と自宅に誘ってくれたのです。彼は湖のすぐそばに家を持っているのですが、室内からオーロラが見られるように一面ガラス張りにしているんですよ。私もそこからオーロラを眺めたり、家のすぐ近くの湖畔に出て鑑賞したりしました。冬はマイナス30度と厳しい寒さになるイエローナイフも、夏の日中は半袖一枚で過ごせるほど快適。何時間外にいても寒くないので、ドライブも楽しめます。レッドフォックスという薄茶色の可愛いキツネにひょっこり出会うこともありました。

イエローナイフはダイヤモンドなどが採れる資源が豊富な街としても知られている。上空から見ると、ツンドラ地帯の中に湖が点在しているのが分かる。
PHOTOGRAPH BY JUNJI TAKASAGO

緯度が高いと太陽が横に移動するためなかなか沈まず、美しい夕焼けを長く見ることができる。
PHOTOGRAPH BY JUNJI TAKASAGO

先住民から学ぶ
「自然と共存する」生き方

感激したのは、最初に赤いオーロラに出会ったとき。赤いオーロラって、なかなか肉眼では見えないんですよ。人の目は暗いと色を識別できにくくなるので、写真では緑色のオーロラでも白っぽく見えてしまうことがあります。オーロラを初めて見た人は「写真より地味だった」と言うほど(笑)。カメラのほうが色に対しては敏感です。そういうわけで、現地で赤いオーロラを目撃すると今でもうれしくなってしまいます。

ただ、先住民の中には「赤いオーロラは不吉」という人もいます。彼らの間ではオーロラは霊的なものとして捉えられているようです。

「オーロラは先祖の霊の現れ」という考え方を教えてくれたのは、ある先住民グループのリーダーでした。ある時、彼が仲間と一緒にオーロラの下で踊っていたら、一人が突然雪の上で倒れて亡くなってしまった。すると一筋のオーロラが現れて、「亡くなった人の霊を連れて行った」と話していました。彼とはオーロラの撮影をしている時に知り合ったのですが、話しているうちに仲良くなって、家にも招かれました。伝統儀式にも参加させてもらいましたが、言葉では言い尽くせないような不思議な体験をしました。

幻想的にたなびくオーロラと緑色に染まった湖。科学的にどのような現象かは分かっても、やはり宇宙の神秘を感じることに変わりはない。
PHOTOGRAPH BY JUNJI TAKASAGO

イヌイット系などのカナダ北部の先住民と触れ合っていると、日本人に近い感覚を持っていることに気づきます。控えめで温かい人柄で、自然を畏怖する気持ちがある。ネイティブカナディアン、ネイティブアメリカン、そしてハワイアンからも同じように感じます。

日本では「コメは一粒も残すな」というように、自然に対する感謝の気持ちを日頃から教え込まれていますよね。石巻出身の私は、海から採れたものを食べるのが当たり前という幼少期を送っていましたが、魚を最後まで食べずに残すと怒られたのを今でも覚えています。現代社会では自然の恵みを採り放題、大地や海を汚し放題にしていることが問題になっています。でも先住民は人間社会と自然とのバランスを取る知恵を持っている。彼らの考え方、生き方から学ぶことはとても多いです。

緯度が高いノースウエスト準州では、太陽が常に低いところを移動するため、天気雨になるとかなり高い確率で虹を見ることができる。
PHOTOGRAPH BY JUNJI TAKASAGO

最近はカナダにも行き慣れてきたので、たいてい車を借りて一人でオーロラを探し、夜通し一人きりで撮影します。星がどんどん動いたり、夕日が沈んで暗くなったと思ったら、今度は反対側から朝日が昇って明るくなる。地球が自転しながら宇宙を巡っているのを肌で感じます。ぜひこの感覚をぜひ味わってほしいです。

ノースウエスト準州観光局

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