おおつか よしふみ。オーロラガイド。1971年、大阪生まれ。
美術専門学校を卒業後、デザイン事務所に就職。阪神淡路大震災を機に退職し、1996年ワーキングホリデーでカナダへ。一冬をイエローナイフで犬ぞり師の家族と共に暮らし、各地のレースに同行。97年カナダ各地や北極圏を旅行後、帰国。2001年10月よりオーロラガイドとしてイエローナイフへ移住。2009年8月、個人ガイド会社Nanook Aurora Tours (ナヌック・オーロラツアーズ)をスタート。経験とデータをもとにオーロラと天気を予測しながら移動して観測する“オーロラを追いかけるツアー”を催行。

オーロラを見るのに最適な環境に恵まれているイエローナイフ。だが同地の素晴らしさはオーロラの美しさだけでは語り尽くせない。イエローナイフで出会った自然や先住民の文化に魅せられて移住したオーロラガイドの大塚佳文氏は「ここで生活して歳を重ねるごとに、新たな魅力に気づく」と語る。ワーキングホリデーでカナダ各地を回った大塚氏が最後に選んだ、イエローナイフの魅力とは一体何か?

日本に帰っても忘れられなかった
極北の暮らしで得たロマン

大自然の中で、動物に関わる仕事がしたい。20代半ばだった私がワーキングホリデーの行き先にカナダを選んだのは、そんな理由からでした。牧場に興味があったので、当時競走馬の飼育で有名なカナダのカムループスを選び、語学学校に通いながら牧場や競走馬に携わる仕事を探していました。知人から「犬ぞりに関わる仕事をしないか」と持ちかけられ、イエローナイフを訪れたのはその数カ月後の1997年の年明けのことです。

凍った湖で犬ぞりのトレーニングをし、ハンティングで獲ってきたトナカイの肉を選ぶ。自然と共生する先住民の知恵に触れ、その極北の暮らしにロマンを感じました。オーロラの美しさにも何度も言葉を失いました。夏至を迎えるまではずっとイエローナイフに滞在し、カナダ各地を旅して回ってから帰国しましたが、思い出すのはイエローナイフでの日々ばかり。2001年に移住して、ガイドの仕事をスタートしました。

オーロラガイドとして世界各地から訪れるカメラマンを案内するだけでなく、自らもオーロラの撮影を行う。コロナ禍で観光客を受け入れられない今、世界のオーロラファンに向けてYouTubeでオーロラのライブ配信を行っている。

イエローナイフは世界的に見てもオーロラが非常に良く出現します。いくつかの好条件が重なっているのですが、そのひとつがオーロラベルトです。オーロラベルトとは、オーロラの発生頻度が最大になる領域付近のことをいいます。オーロラがリング状に発生するエリアで、北欧や南極大陸にもかかっていますが、北米側に垂れ下がっていて、その真下に位置するのがイエローナイフなのです。

今回カナダと日本をテレビ会議でつなぎ、大塚氏にお話を伺った。

内陸部なので海もなく、周辺には山もないことも好条件のひとつ。さらに冬には湖も凍るので、一年を通じて比較的天候が安定していてオーロラがよく見えます。人口も2万人と小さな町で、中心から少し外れると街灯もありません。オーロラを見るのに抜群の条件がそろった場所といえるでしょう。

私は2009年から個人ガイドとして、車で移動しながらオーロラ観光をするツアーを主催しています。ガイドを長年やっていると、雲が西から東へ移動する時間や、あと何分で晴れるかという気象の予測もできるようになってきます。でも、鑑賞地から見るスタイルではオーロラの動きに合わせることができません。オーロラは生き物のようなもの。せっかくはるばる遠いところから見にきてくれたのだから、できる限りたくさんの、いろいろな表情のオーロラを見てもらいたい。そう考えて今のような移動スタイルのツアー主催を思いつきました。車1台に乗れる少人数を案内し、オーロラが見える場所にどんどん移動して鑑賞します。

雲の動きや月の明るさによって、オーロラの見え方は大きく変わる。「訪れた人に満足してもらえるオーロラを見せたい。毎日が天気との戦い」と大塚氏は話す。

このスタイルはオーロラの撮影がしたい人から特に好評を得ています。写真家の高砂淳二さんもそのひとり。知人を介して、「高砂さんと観に行く」オーロラツアーを企画したことをきっかけに親しくなりましたが、この出会いを私以上に喜んだのが妻でした。妻はもともとダイビングが趣味で、彼女が最初に買った写真集が高砂さんが出した海の中の生き物を撮影した『free』だったんです。自然を愛する人どうし、ご縁があるものですね。

鑑賞地から見学する、拠点型のツアーにももちろん魅力があります。施設の中で待機できるので、いつでも温かく過ごせるというのが最大のメリット。お手洗いもあるので、快適です。ご高齢の方や小さいお子さんがいる方など、体力に合わせて移動型、拠点型を選んでもいいと思います。

オーロラの動きに合わせて、どこにでもクルマを走らせる。何もない凍った湖の上に立ってオーロラを眺めると、まるで宇宙に一人で立っているかのような気分になる。

また必ずイエローナイフに戻ってくる──
お客さんの言葉に励まされる日々

ツアーにいらっしゃる方は皆、「死ぬまでに一度でいいからオーロラを見たい」という気持ちでいらっしゃるようです。でも実際にその目でオーロラを目撃すると「また必ず見に来たい」と誰もがおっしゃいます。イエローナイフでは「ブレイクアップ」という、オーロラが突然空一面に広がり、まるで爆発したように輝き出す現象が頻繁に目撃できます。そのブレイクアップに病みつきになって毎年のようにいらっしゃる方も少なくありません。

空の一点から突然オーロラが一筋吹き出し、やがて激しい動きとともに空一面に広がっていく「オーロラブレイクアップ」。その例えがたい美しさは、まさに神々が作り出した神秘としか言いようがない。

私のツアーの常連客に、ご主人が80代半ば、奥様が80歳くらいというご高齢のご夫妻がいます。初めて来てくれたのは10年ほど前のこと。ご夫妻でアラスカやグリーンランド、アイスランドなど、世界中のオーロラを見てきた経験があるとのことでした。それほどオーロラを見慣れた人でも「イエローナイフから見るオーロラは別格」と感激していたのです。滞在中に何度もブレイクアップを目撃できたこともありますが、街から近い場所で見られるので、すぐにホテルに戻れて体に負担がかからないというところも気に入ってくれたようです。

初訪問以来、毎年のように訪れては、「今年が最後」と仰いますが、必ず毎年戻ってきてくれます。だから、私も毎年お二人のためにツアーの席を空けて待っています。昨シーズンはコロナ禍でいらっしゃることはかないませんでしたが、「次のシーズンは必ず行けるように、体調を管理しておきます」とメールを頂きました。こうしたお客様の声は私にとっても大きな励みになっています。

後編へ続く(5月中旬公開予定)

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ノースウエスト準州観光局

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