PHOTOGRAPH BY YOSHI OTSUKA

おおつか よしふみ。オーロラガイド。1971年、大阪生まれ。
美術専門学校を卒業後、デザイン事務所に就職。阪神淡路大震災を機に退職し、1996年ワーキングホリデーでカナダへ。一冬をイエローナイフで犬ぞり師の家族と共に暮らし、各地のレースに同行。97年カナダ各地や北極圏を旅行後、帰国。2001年10月よりオーロラガイドとしてイエローナイフへ移住。2009年8月、個人ガイド会社Nanook Aurora Tours (ナヌック・オーロラツアーズ)をスタート。経験とデータをもとにオーロラと天気を予測しながら移動して観測する“オーロラを追いかけるツアー”を催行。

オーロラのシーズンといえば、冬を思い浮かべる人も多いかもしれない。だが、実は短い夏の白夜シーズンを除き、イエローナイフでは1年中オーロラが見られる。現地在住でオーロラガイド歴20年以上の大塚氏は「湖面に映る初秋の『逆さオーロラ』をぜひ体験してほしい」と話す。秋の穏やかな季節の中、暮らすように楽しむイエローナイフの魅力を大塚氏に語ってもらった。
前編の記事はこちら

秋にしか出会えない、
湖畔に反射したオーロラと黄葉の競演

オーロラといえば、極寒の中で震えながら見るもの。そんなイメージを持つ人も多いでしょう。そこでぜひ知ってもらいたいのが、秋のオーロラです。オーロラは地軸(磁気圏)の傾きにも影響されるので、春分や秋分の時期は大規模なオーロラの出現率が高くなると言われています。地球規模でオーロラの輪が太く大きく広がり、オーロラの活動が活発になることが多いためオーロラ観測には非常に良い時期と言えるでしょう。秋分というと9月の下旬頃ですが、確かに私もこの時期に、動きが激しくて鮮やかなピンク色をした強いオーロラを何度も見ました。オーロラのカーテンの背が高くなり、天空から光が降り注いでくるように見えるのもこの季節に多いオーロラと言えるかもしれません。

ナヌック・オーロラツアーズ
大塚 佳文氏

いいオーロラが見られるうえ、気候が穏やかなのが秋のイエローナイフのいいところ。ここでは12月から2月はマイナス30度を下回る日も珍しくありません。これは日本の人にはなかなか想像ができない寒さでしょう。でも、9月なら夜でもマイナスになることは少なく、東京の冬の夜とさほど変わらないのです。日中も、条件が良ければ20度を超えます。カヌーやフィッシングなどのアクティビティを楽しむにはうってつけの時期です。

この時期ならではのオーロラ鑑賞方法もあります。イエローナイフにある世界で10番目に大きな湖、グレートスレーブ湖に映るオーロラです。これは「逆さオーロラ」とも呼ばれ、夏至が終わって夜が少しずつ長くなり、湖が凍結する10月初旬頃までしか見られない貴重な光景です。また、秋にはシラカバやポプラ、カラマツなどの木がその葉を黄色く染めて湖を彩ります。黄葉が見られる約2週間と逆さオーロラが重なる時期を狙って写真を撮りに来る人もいます。

夏から初秋にかけての風物詩「逆さオーロラ」。この時期は暗くなるのが遅いので、冬に比べてオーロラ鑑賞時間もやや短くなる。限られた状況でしか見られない逆さオーロラの美しさはまた格別だ。

PHOTOGRAPH BY YOSHI OTSUKA

夜はオーロラ、昼は黄葉を映し出すグレートスレーブ湖。昼は気温もあまり下がらないので、カヌーなどのアクティビティも満喫できる。

PHOTOGRAPH BY YOSHI OTSUKA

夜はオーロラ鑑賞、昼は読書。
自然の中で過ごすぜいたくなひととき

秋のオーロラとイエローナイフの自然を満喫してもらうためにも、できれば1週間程度とやや長めの滞在をお勧めします。コロナ禍以前は、例年9月から10月中旬にかけて観光客が集中し、かなり早い段階でホテルが埋まっていました。ただ、ここ数年で民泊施設もかなり増えました。一口に民泊といっても普通の住宅もあれば湖に浮かぶハウスボートもあるなど、バリエーションも豊か。こうした民泊をうまく使えばホテルに比べて宿泊費も安く抑えられるかもしれません。

また、秋は路面が凍結していないため、レンタカーを借りて自分で運転するのも楽しいでしょう。市街地から車で1時間も行けば、野生のバイソンの群れが見られます。移動の足があるなら、郊外のロッジに泊まるのもいいですね。もし滞在先にバーベキューグリルがあるなら、スーパーでアルバータ牛やサーモンなどを買ってご自分で調理してみてください。旅行者としてレストランに行くのとはまた違った体験です。

夜はオーロラを見て、昼は湖畔で読書する。そんなぜいたくな1日を過ごせるのも、ロングステイならでは。この2年間で街には新しいレストランやカフェも増えました。イエローナイフに来たことがある人も、これまでの街との雰囲気の違いを楽しめると思います。

骨つきの塊肉をグリルするのが本場・北米スタイルのバーベキュー。焼くのを待つ時間も、楽しい旅の思い出になる。

PHOTOGRAPH BY YOSHI OTSUKA

どれだけ下調べしても、
必ず想像を超えてくるオーロラの力

「旅は準備している期間も楽しい」とよく聞きます。SNSやブログなどを検索すれば体験記もたくさん見つかり、手軽に情報収集ができる時代になりました。とはいえ、知られていないこともまだまだあるように感じます。例えば日焼け止め。イエローナイフは日本より日差しが強く、紫外線の影響を受けやすくなります。雪がある時期は反射で雪焼けもしやすいです。気になる方は日焼け止めを持参したほうがいいでしょう。また、夏は蚊も多いので、初秋も念のため蚊除け対策をしておくのが無難だと思います。

ガイドとして、お客さんが現地に来て困るようなことは絶対に避けたい。そのため、必要な情報は事前に伝え、できるだけ質問にも答えるようにしています。でも、本音としてはできれば現地の情報は仕入れすぎないでほしいのです。事前に調べて知ったことを現地で答え合わせするのではなく、目にするもの、耳にするもの全てを初めての体験として楽しんでもらいたい。それこそが旅の醍醐味ではないでしょうか。20年以上前、初めてイエローナイフに足を踏み入れた私も、やはり知らないことだらけでした。だからこそ、これほどまでに極北の生活に魅せられたのかもしれません。

ただ、どれだけ下調べをして、想像をしてきても、それを上回るのがオーロラ。必ずみなさんの期待を良い意味で裏切ってくれます。空に輝くオーロラを見たときに、一体何を感じるのか。それは自分にしか分かりません。いつかまた、みなさんと一緒にオーロラを見られる日が来るまで。私はここで待ち続けたいと思います。

ノースウエスト準州観光局

Email:info@spectacularnwt.jpn.com