日経バイオテク Online Special
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新型コロナウイルス環境モニタリングの最前線 新型コロナウイルス環境モニタリングの最前線

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにともない、ワクチンをはじめとした予防法や新たな治療薬・治療法が模索される一方で、通常の生活に戻すための努力の一環として、環境中の新型コロナウイルスのモニタリングが重要視されている。日本国内での初の新型コロナウイルスの感染クラスターとなった大型客船ダイアモンド・プリンセス号や、大学病院、各種研究機関、またインドネシアにおいて映画館をはじめとする公共娯楽施設で行われている新型コロナウイルスの環境モニタリングを紹介する。

ザルトリウス・ジャパン株式会社
長島茂幸

はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染源であるウイルスは感染者の咳などで空気中に放出され、飛沫感染、空気感染、接触感染などの経路で他者に感染すると考えられている。このうち飛沫感染が全体の半分以上を占めると言われており、このことからマスクなどで物理的にウイルス粒子の吸入を防ぐと同時に、空気中のウイルスの存在を確認することが感染の予防および感染の拡大防止に重要である。

ウイルスの捕集

空気中のウイルスの存在を調べるためには、ろ過などで空気中の粒子を捕集する必要がある。ろ過にはいろいろな素材を用いることができるが、ほとんどの素材は粒子の捕集率や回収率が低く、その後の分析の感度が悪い。ゼラチンフィルターは水溶性であるため、捕集後のゼラチンフィルターを適切な緩衝液に溶解することで容易にウイルス粒子を回収できるため、空気中のウイルスや微生物の定量的な分析に広く用いられている。また、ゼラチンフィルターは公称孔径が約3ミクロンと一般的なウイルス粒子よりもはるかに大きいにもかかわらず、ほぼ定量的にウイルス粒子を回収できるため、様々な研究や環境モニタリングに用いられている。

ゼラチンフィルター

ゼラチンフィルターSEM像

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ゼラチンフィルターは40年以上前にドイツ・ゲッティンゲンのザルトリウス社によって開発された。その後鶏舎における家禽病原ウイルスのモニタリングなどに使われているほか、その非常に高い捕集能力を利用して医薬品の製造用/無菌試験用アイソレーターや、クリーンルームなど極めて高い微生物学的清浄度が求められる場所で用いられている。最近では国際宇宙ステーション(ISS)内での微生物汚染やクルーに及ぼす影響についての研究に採用された。
日本国内では仙台医療センターの西村教授らのグループが季節性インフルエンザ患者の呼気中のウイルスを分析するのにゼラチンフィルターを使用している。

新型コロナウイルスへの応用

新型コロナウイルスを検出する場合、まずゼラチンフィルターで空気を一定量ろ過し、ろ過後のフィルターを少量の緩衝液に溶解する。その後市販の核酸抽出・精製キットを用いてウイルスRNAを精製したのち、その一部もしくは全量をPCR分析で新型コロナウイルスの有無を確認する。この方法を用いてすでに数多くの研究が発表されており、病院や歯科医院、患者一時隔離施設などで実際に環境モニタリングが行われているほか、ウイルスの拡散防止・吸入防止にマスクが及ぼす影響を実証したり、新型コロナウイルスを減弱させる効果のある素材の探索などに応用したりされている。

インドネシアでの実例

東南アジアのインドネシアにおいては、事実上封鎖されていた映画館をはじめとする公共施設や多くの人が集まるモスクなどで環境モニタリングを行い、新型コロナウイルス粒子の有無を確認することで施設再開への一助となっているほか、再開後においても定期的に環境モニタリングを行うことで感染拡大防止を図っている。

モスクでのサンプリング例 (インドネシア)

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最後に

新型コロナウイルス感染症はわれわれ人類にとっての新しい脅威であると同時に、新しいチャレンジでもある。感染経路や予防法、治療法など未知の部分が多く、その解明のためにはしっかりとしたウイルスの捕集・検出システムが不可欠である。ゼラチンフィルターは空気中のウイルス捕集・回収についてきわめて多くの実績があり、各種研究開発のスピードアップの一助になることを期待したい。

お問い合わせ

ザルトリウス・ジャパン株式会社

140-0001 東京都品川区北品川1-8-11

https://www.sartorius.com

お問い合わせ E-Mail:hp.info@sartorius.com

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