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AI創薬のリーディングカンパニーを目指すNEC

12月5日に開催された「『創薬の成功率を高めるためのAI活用法』オンラインセミナー」(主催:日経バイオテク)において、 NEC AI創薬統括部長 / NEC Bio CEOの北村 哲 氏が講演。NECにおけるAI創薬の取り組みについて、自ら臨床試験を実施するなど本気の取り組みを進め、AI活用による迅速な開発を目指し、臨床試験早期までに製薬会社にライセンスアウトするビジネスモデルによって患者や社会に貢献する考えを示した。

北村哲氏

北村哲氏

NECは、長年築き上げてきたITの力を生かして創薬の領域で貢献できると考え、2019年には会社定款に「医薬」を加えた。従来、IT企業の創薬への貢献といえば、ITツールを製薬会社に提供して創薬の支援をすることが主だったが、NECはIT技術を用いて自らAI創薬を行うと宣言したのである。創薬の対象としては、がん・感染症領域からスタートしている。

買収・提携によりAI技術の創薬事業への活用を強化

NECが誇るAIの技術力を、創薬分野で効率的に生かすために、 買収や資本提携を実施し、創薬能力を強化した。腫瘍の微小環境解析を行う米国のベンチャー企業BostonGene社に出資、ウイルスベクターを用いたがんワクチンプラットフォームをもつフランスのバイオテックTransgene社と提携、またネオアンチゲン予測については、バイオインフォマティクスに秀でるノルウェーのスタートアップOncoImmunity AS社を買収、さらに、独自の経口ネオアンチゲン事業をスイスのVAXIMM社から買収するなど、創薬能力を一気に高めた。現在では個別化がんワクチンとユニバーサル感染症ワクチンの研究開発を進めている。

また、患者のゲノムデータの解析やAIによるネオアンチゲン予測などは、NECの技術が生きる領域である。

生体内の免疫応答に関わる各プロセスの予測において、訓練データが極めて少ない場合や訓練データに欠損データが含まれている場合、またデータの集合にはラベルが付与されていても、個々のデータにはラベルが付与されていない場合も少なくない。

NECは、少ない訓練データや不完全なラベルを持つデータであっても精度よく予測可能な予測アルゴリズムや、欠損データが含まれる訓練データであってもグラフ関係性学習法を用いることによって高精度に予測可能なアルゴリズムを独自にゼロから開発している。

NEC北米研究所や欧州研究所には、機械学習プラットフォームであるTorchを開発したハンス=ピーター・グラフなど、世界トップクラスのAI研究者が在籍、グローバルに大学や研究機関とも密接に交流しており、AI創薬にも大きく貢献している。

がんワクチン開発に新たなアプローチ

がんワクチンは患者の免疫システムを活性化してがん細胞を駆逐する。ワクチンと名付けられているが治療薬として用いるものだ。

がんの遺伝子変異は患者ごとに異なるため、まず、患者のゲノムの配列を特定(シーケンス)する。次いでシーケンスデータからゲノム変異を解析、患者ごとに異なるがんの遺伝子変異で生じた抗原「ネオアンチゲン」を予測する。

患者の免疫力を高めてがんを治療するがんワクチンの発想は以前からあった。しかし、がんワクチン開発は失敗の歴史だった。多くの製薬企業や研究機関が挑戦したが、日本で承認に至った薬剤は1つもない。

これまでのがんワクチンは、どのがんでもおおむね発現しているであろうがん関連抗原を対象にしていたため、免疫応答が十分でなかったことが考えられる。また従来のがんワクチン療法では、 ゲノム検査がまだ一般的ではなかったため、ワクチンに含まれているがん抗原が、個々の患者のがんに存在しているか確認されていなかった。

しかし、NECなどが開発を進めている個別化がんワクチンは、こうした課題を乗り越えられると期待されている。個別化がんワクチンは、患者の体内で固有の遺伝子変異を起こしたがん特異的抗原であるネオアンチゲンを標的とする。これは免疫システムからは非自己と認識されるため、免疫応答が強力に働くと考えられる。

NECは、患者のゲノムデータを解析して患者の体内で発現している特異的ながん抗原をAIによる生体モデルにより予測し、患者ごとに最適ながん抗原を選択する。

さらに、これまでのがんワクチンでは、たかだか数種類のがん抗原を標的としていたが、NECの個別化がんワクチンでは数十種類のがん抗原を体内に届けるため、有効な免疫応答を惹起できる可能性が高いと考えている。

NECとTransgene社は、この11月に開催された米国がん免疫学会で、頭頸部がんを対象に開発を進めている個別化がんワクチン「TG4050」の臨床第1相試験の追跡調査結果を発表、実薬群では、24カ月の追跡期間中、1例も再発なしという期待が持てる結果を明らかにした(図1)。

再発防止を目的とする頭頸部がんの臨床試験において、治療した全患者が無再発を維持

図1:NECがAI創薬の手法で開発中の個別化がんワクチン「TG4050」は、頭頸部がん患者を対象とした第I相臨床試験において、対照の標準療法群と異なり、投与群では24カ月(中央値)の追跡期間中、無再発状態を維持していた。本結果を受けて第II相臨床試験にシフトしている。

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広汎な有効性を発揮する感染症ワクチンを開発へ

新型コロナのパンデミックでは、たびたびウイルスが変異して対応に悩まされたことは記憶に新しい。感染症流行に対する国際的な官民連携パートナーシップであるCEPIは、ベータコロナウイルス属から新たなパンデミックウイルス種が出現する可能性を危惧している。NECは2022年、CEPIから資金の拠出を得て、新型コロナやSARS、MERSなどを含む広汎なコロナウイルスに対して有効なワクチン開発に取り組んでいる。NECが目指すワクチンは、一つのワクチンで多くのウイルス種・変異株に対しても有効な抗体産生を活性化させるとともに、T細胞免疫応答を誘導して感染した細胞を除去する作用も盛り込む。NECではコロナ以外に、インフルエンザ、デング熱などの熱帯感染症のワクチン開発も進めている。

製薬会社とパートナーシップを組んで進めたい

NECはAI創薬を推進するが、製造販売を手掛けるつもりはなく、製薬企業とのパートナーシップにより上市を目指す(図2)。すなわちシーズを自ら特定し、前臨床もしくは早期臨床試験を行いコンセプト検証の結果をもって製薬企業にライセンスアウトする。製薬会社と競合関係にはならず、創薬の前段を受け持つパートナーとして貢献していきたいと考えている。

NECが目指すAI創薬のビジネスモデル
新薬創出プロセス 基礎研究→前臨床→臨床→申請・承認→上市

図2:シーズを特定し、前臨床試験や早期臨床試験を行いコンセプト検証の結果をもって製薬会社にライセンスアウトする自主開発型、もしくはシーズのみを開発するシーズ開発型を主に狙う。

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近い将来、NECを含め世界中で開発が進む個別化がんワクチンが実用化した時には、がん治療の際、大量のゲノムデータが飛び交うことになる。その際、目の前のワクチンが本当にその人のものであるかを保証しなければならず、厳格なデータマネジメントが求められる。また、ゲノムデータは究極の個人情報なので、サイバーセキュリティなど様々な対策が必要となる。

こうした対策はNECが最も得意とするところでもある。既に最先端の暗号技術を取り入れているほか、個別化医療に適したデータセキュリティー技術の検証も実施している。将来的には、個別化がんワクチンのサプライチェーン全体を構築していく考えだ。

NECの本業はITであり、AIについても常に世界の最先端技術をリードしている。AI創薬を支える研究開発能力の高さは、NECにとって最大の強みと言える。こうした強みを基に、NECは、患者さんと家族に希望ある未来を届けたいという思いでAI創薬に取り組んでいる。

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NEC AI創薬統括部 

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