地球の「青い心臓」が永遠に健やかであるためにいまできること

世界的な腕時計メーカーであるロレックスが、環境保護への取り組み「パーペチュアル プラネット イニシアチヴ」の一環でライブトークイベントを開催。ゲストに海洋生物学者で「ミッション・ブルー」創設者のシルビア・アールと、海洋保護活動家で「コーラル・ガーデナーズ」創設者のティトゥアン・ベルニコを迎え、地球の「青い心臓」である海について熱く語り合った。ファシリテーターは、物理学者・海洋学者のヘレン・チェルスキーが務めた。

希望のヴィジョン

シルビア・アール(88)は、1935年米国生まれの海洋生物学者・探検家であり、世界中で海洋保護活動を牽引してきた。1998年よりナショナル ジオグラフィック協会の「エクスプローラー・アット・ラージ」でもある。2009年、海洋の生態系を保護するために、「ミッション・ブルー」というプロジェクトを立ち上げた。ロレックスは2014年から、同プロジェクトを支援している。

チェルスキーによれば、アールはまさに「海洋探査のパイオニア」で、海上で7000時間以上も過ごし、100以上の調査を率いてきた。

シルビア・アール 氏 ©Rolex/Bart Michiels

シルビア・アール 氏

なぜミッション・ブルーを始めたのかとの問いに対して、アールは次のように語る。

「ミッション・ブルーは、希望のヴィジョンと共に始まりました。つまり、私たちが自然、そのなかでも地球上の大半の生命と水を内包する海を尊重できるようになるというヴィジョンです。世界中の人々を触発し、それぞれができることをして、変化を生み出し、減退から回復へと動いていけば、それが実現できると信じています。

後の世代が21世紀を振り返るとき、人々は絶好の機会に行動したのだと思ってもらえたらと願っています。それが、私たち自らの生きる場所を、海をはじめとする自然の生態系のなかに勝ち得て、パーペチュアル(永続的)な場所を自らのために確保していくことになります」

ミッション・ブルーは、独自の海洋保護区「ホープ・スポット」を世界中で認定している。象徴的なスポットはどこかと聞かれたアールは、ふたつの事例を挙げた。

スペインのマヨルカ島、バレアレス諸島は地中海で最初のホープ・スポットとなった

© Rolex/©National Geographic/Getty Images

スペインのマヨルカ島、バレアレス諸島は地中海で最初のホープ・スポットとなった

第一は、意外にも米ニューヨーク市での例だ。このホープ・スポットでは、地元大学の科学者と先住民とが協力し、水質がひどく悪化していたシネコック湾に失われていたハマグリを再導入して、10年間で生態系が見事に回復した。

第二の例が、パラオのホープ・スポットだ。すでに順調だった海の保護活動をミッション・ブルーの支援を受けたことで、まずはその排他的経済水域内の保護がさらに手厚くなった。そこから、その水域を越えた公海を見据えて、パラオの人々が自分たちの力を発揮できるのではないかと自信を持っていったという。小さな島国が他国を感化し、国家の管轄を超えた公海、つまりは世界にインパクトを与えられることを示した例だとアールは語る。

白化するサンゴ礁を救いたい

ティトゥアン・ベルニコ(25)は2017年、18歳という若さで、自分が育ったフランス領ポリネシアの小さな環礁モーレア島で「コーラル・ガーデナーズ」プロジェクトを始めた。2021年からナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラーとなり、2022年にパーペチュアル プラネット イニシアチヴに加わった。

ティトゥアン・ベルニコ 氏 © Rolex

ティトゥアン・ベルニコ 氏

コーラル・ガーデナーズは、地球温暖化により世界中で白化するサンゴ礁を救うべく、サンゴを再生させる活動や啓発活動を展開する団体だ。ベルニコはこの団体を設立した経緯を次のように語っている。

「16歳のとき、サーフィンをしていて、自分の人生でいちばん重要なもの、すべてを与えてくれるサンゴ礁を失いつつあることに気づきました。サンゴ礁があるから、いい波でサーフィンができ、食べる魚も豊富に生息し、島を浸食からも守ってくれる──つまり命を与えてくれる存在です。サンゴ礁は、地球上で生物多様性の最も豊かな生態系なのです。

コーラル・ガーデナーズを始めたのはいまから7年前ですが、最初は自分の寝室がオフィスで、スタッフは14歳の弟だけでした。それがいまや世界中にフルタイムのスタッフが70人います。2024年末までには7ヵ国で活動していることになります。最新の技術を用いて世界中でサンゴを再生させるためにスケールアップしようとしています。毎朝起きては、サンゴ礁のために何がもっとできるかを考えています」

コーラル・ガーデナーズの活動の様子

© Rolex

コーラル・ガーデナーズの活動の様子

1964年、ロレックスの潜水用腕時計を着けて海に潜った

アールが海洋探査を始めてから、ゆうに半世紀以上が経っている。海に対する人類の認識はどう変化してきたのかとの問いに、アールは次のように語る。

「思い出すのは、1964年に初めてロレックスの潜水用腕時計を着けて、インド洋に調査に出かけたときのことです。そこで初めて、探検家や科学者たちも海中に潜って時間という贈り物を楽しめるようになりました。それまでの科学調査では潜水士たちだけが網や鉤や装置を使って、海中の生物を科学者や探検家たちが待つ水面まで引き上げていました。それが画期的にも、科学者が実際に海中に潜って生物を自分の目で確かめられるようになったのです」

科学者自身が、海に直に潜り、未知の生態系を直に観察できるようになったことで、海に関する人類の知識は飛躍的に増したとアールは指摘する。その一方で、人類の活動により、海も劇的に変化してきていると、アールは言う。

海綿動物とサンゴの成長を観察するアール氏

© Rolex/©David Doubilet

海綿動物とサンゴの成長を観察するアール氏

「私が海洋探査を始めた頃を起点とすれば、当時、世界中の海はもっと健全なところでした。しかし、サンゴ礁は世界的に失われ、場所によっては80〜90%も失われてしまっています。サメも90%がいなくなってしまいました。われわれがいま見ている地球は、私が探査を始めた頃の地球とは違います。ですから懸念はありますし、絶望さえしかねない。でも、まだ10%のサメが残っており、まだ残っているサンゴ礁も健全だと知っていれば、楽観的でもいられるのです」

地球を救うことはクールであるべき

ミッション・ブルーとコーラル・ガーデナーズに共通点があるとすれば、それは何かと問われたベルニコは情熱的にこう語る。

「共通しているのは、行動し、希望を持ち、人に焦点を当てていることです。ただ海を保護したり、回復させたりするという話ではなく、人が重要なのです。というのも、海洋保護が新しいライフスタイルになる必要があるからです。地球を救うことがクールで、楽しくて、意義深いものになるべきで、人々が自分の手を使って、参加できるようになるべきです。人々と海、そしてその保護のあいだにあるギャップを埋める必要が私たちにはあります」

アールは、海洋探査のパイオニアならではの視点を加えて言う。

「最大の問題はなお、人々がなぜ海を気にすべきか知らないことです。ですから、自分に関係のある話なんだと思ってもらう必要がある。そして、この地球を探検するにはいまが最高の時代なのだと気づいてもらいたいです。地球の70%を占める海を表面から眺めるだけではなく、3次元的に海面から深海まで、そこに満ちる生き物に近づくことができるのですから」

ミッション・ブルーによるビーチクリーン活動の様子

©Rolex/Stefan Walter

ミッション・ブルーによるビーチクリーン活動の様子

海のためのビジネスマン

コーラル・ガーデナーズが進める壮大な計画について、ベルニコはその概要を語る。世界的な自然保護団体「ネイチャー・コンサーバンシー」と組んで、地元のモーレアに世界初の半自動化されたサンゴ農園を作るというものだ。その設計には、シリコンバレーで働いてきた世界的なエンジニアたちが関わっているという。ロボットアームがサンゴの断片をつかんで自動洗浄し、カメラがその断片の画像を撮影して、病気の有無や温度をチェックする。断片が成長したら、自動的に農園の一区画に移植されるという仕組みだ。そのプロセスを学生や地元の人々、観光客らが見学できるように公開もするという。産業化という言葉は嫌いだが、より回復力のあるサンゴをより速く育て、世界中でスケールアップするには産業化が必要だとベルニコは言う。

コーラル・ガーデナーズの本社があるモーレア島

© Rolex

コーラル・ガーデナーズの本社があるモーレア島

保護活動と産業化やテクノロジーという概念には、ある種の緊張関係が存在してきたのではないかとの問いに、ベルニコはこう答える。

「もちろんテクノロジーは地球を破壊してきました。でも、正しい理由のために使えば、地球を回復していく役にも立ちます。ですから、いまテクノロジーを駆使しないのは、愚かなことだと考えています。テクノロジーによって知識を拡散できますし、データをリアルタイムで収集できる。かつてはサンゴ礁を現場で観察するのに30日かかりました。でもいまはアプリを使えば、3日で済みます。テクノロジーが役に立つとても具体的な例です」

コーラル・ガーデナーズのメンバーとベルニコ氏

© Rolex

コーラル・ガーデナーズのメンバーとベルニコ氏

また、「ビジネス」という言葉についても、ベルニコは新しい視点を提供している。

「エコノミーとエコロジーがどこかで混じり合わなければ、私は未来を信じることができません。保護活動の分野でビジネスという言葉を口にするのは、はばかられてきましたが、私は海のためのビジネスマンであり、上司は海なんです!ですから資金調達して、世界的な頭脳を持つ人々に、その素晴らしい才能を海のために活かして儲けてもらい、そして世界的にインパクトを与えてもらう必要がある。そうなっていくことが私にとっての保護活動の未来です」

海は地球の青い心臓

最後の質疑応答の時間で、保護活動をあきらめない理由は何かと問われたアールは、ライブトークイベントを締めくくるに相応しい回答をした。

「人々が自然を破壊するのを止め、労りはじめると、回復が始まるのがわかります。それが世界中の陸地と海で起こっています。自然と協力し、自然を保護すると、その利益は明らかなのです。私たちにはいまや知識があり、そして技術もある。21世紀に人間でいることはとても刺激的なことです。希望を抱く理由は多くある。そうした希望が行動につながります。希望だけでは上手くいきませんが、人々を動機づけ、行動に結びつけるには希望が必要です。海は地球の青い心臓であり、すべてのことを動かしています。その海を大事にすれば、それ以外のことは何とかなるのです」

関連リンク

ロレックス パーペチュアル プラネット イニチアチヴ

https://www.rolex.org/ja/environment

ミッション・ブルー

https://www.rolex.org/ja/environment/mission-blue

コーラル・ガーデナーズ

https://www.rolex.org/ja/environment/perpetual-planet/coral-gardeners
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