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TSSS2024 第10回「東京サステナブルシーフード・サミット」レビュー サステナブル・シーフードのビジョンを共有、現在と未来を語るTSSS2024 第10回「東京サステナブルシーフード・サミット」レビュー サステナブル・シーフードのビジョンを共有、現在と未来を語る

開催日:
2024年10月8日(火)〜10日(木)
主催:
株式会社シーフードレガシー、日経ESG
共催:
米ディヴィッド&ルシール・パッカード財団、米ウォルトンファミリー財団

「サステナブル・シーフード」(環境・社会に配慮して生産された水産物)に特化したグローバル・フラッグシップイベント「東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)」が10回目を迎え、2024年10月8日(火)から10日(木)の3日間、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催された。日本発・アジア最大級のサステナブルシーフード・イベントから注目の発言を集めて紹介する。

※この記事は2024年10月8日(火)~10日(木)に行われたTSSS2024の採録です。登壇者の肩書は講演当時のものです。

協賛

 主催するシーフードレガシーのビジョンは、「日本の水産業の持続的成長産業化を通じ、海に関わるすべての人が笑顔と活気に包まれ、未来に希望の明かりを灯す世界」を描いている。その実現に向けて設定した「2030 GOAL」が「サステナブル・シーフードを日本の水産流通の主流に」だ。

 このビジョンとゴールはTSSS2024の3日間の議論で参加者に共有された。その一つの象徴が、参加者一人ひとりが署名した小さな魚のシールをパネルに貼り、「大きな魚」が誕生したこと。「小さな集まりでも知恵を持ち寄れば大きな力となる。すべてのステークホルダーが未来に向けて連携していこう」。そんなメッセージが発信された。

 TSSS2024の参加者は約941人を数え、セッション数は13、登壇者はアジア圏にも広がり、アジア圏の12人を含め合計72人に上った。

小さな魚のシールをパネルに貼る

遠洋漁業の当事者から
人権問題で衝撃的な発言

 シーフードレガシー代表取締役社長の花岡和佳男氏は、「2030 GOAL」の達成には3つの「セオリー・オブ・チェンジ(変化の理論)」が必要だと話す。すなわち「マーケット・トランスフォーメーション(市場の変革)」、「ポリシー・シフト(政策転換)」、「ファイナンス・エンゲージメント(投融資機関とのエンゲージメント)」だ。これらの3テーマに沿いながら、主な発言内容を振り返ってみよう。

 まずは「マーケット・トランスフォーメーション」。セブン&アイ・ホールディングスはセブン-イレブン事業を中心とした世界トップクラスのリテールグループで、国内来客数は1日約2230万人。代表取締役副社長の伊藤順朗氏は「2050年までにオリジナル商品の100%を持続可能な調達にする。それに向け水産認証商品の取り扱いを拡大する」と語る。

 TSSS初登壇となったMSC(海洋管理協議会)のCEO ルパート・ハウズ氏は、「現在、150億ドル以上の価値のMSC認証の商品がある」と紹介。しかし、日本でMSC認証を取得した漁業はカツオ・マグロ類10、二枚貝2の合計12にとどまるという。

 2050年代に100億人を突破する世界人口の食をどう賄うのかは大きな課題だ。養殖はその解決手段として注目されるが、餌は天然資源に頼っている。養殖漁業用飼料の開発販売をするスクレッティングは近年、サーモンの養殖で完全無魚粉・無魚油の飼料を実用化した。代表取締役の朴基顕氏は「日本は魚粉・魚油への依存度が高い。それを下げることが持続可能な海洋環境の創造につながる」と指摘する。

 台湾の遠洋漁業に従事するインドネシアの漁師ハディ氏からは、外洋での長時間労働、給与の未払い、医療へのアクセスがないことに起因する死亡事故の発生などといった当事者しか知り得ない衝撃的な発言があった。ハディ氏らが求めるのは、漁師が船上で孤立しないためのWi-Fiアクセスの権利だ。「会場にいる皆さんは人権の話をするが、私たちはコミュニケーションを取る権利すら認められない」と訴えた。台湾産水産物の最大のバイヤーである日本の果たす役割は大きい。

 パネルセッション「日本の水産業はどこに向かうのか」で、日本の水産業界を束ねてきた大日本水産会、全国漁業協同組合連合会、MEL協議会が顔をそろえたのは、日本の漁業がサステナビリティに向かうことの強いメッセージになった。

 2つ目の「ポリシー・チェンジ」では、水産庁長官の森健氏が太平洋クロマグロの資源管理とIUU(違法・無報告・無規制)漁業について紹介したうえで、今後の課題として「科学的な資源管理を通じて、2030年までに漁獲量を2010年水準まで回復することを目指す。また水産物の輸出額を2030年までに1.2兆円とすることを目指す」との国の方針を語った。

 また水産庁加工流通課長の中平英典氏は、2020年に成立した「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律(流適法)」を一部改正する法律が2024年に成立し、国内のIUU漁業防止に向けて、新たな枠組みによる資源管理の強化および流通規制の整備を行う改正法を2026年に施行すると語った。

 こうした日本をはじめとする世界の法規制は韓国や台湾にも影響を与えている。韓国 海洋水産省のイ・ジュヨン氏は「国際的な合意を国内法に取り入れ、トレーサビリティ向上のための漁獲証明書制度の改善などに取り組んできた」と発言。台湾 農業部漁業署のチャン・ウェイシャン氏は「漁業のトレーサビリティへの第一歩は陸揚げ申告」とし、アジ・サバ漁で自動計測しデータベース化する試みを紹介した。

TSSS2024

年金保険料を納めている
私たちの誰もが「投資家」

 3つ目の「ファイナンス・エンゲージメント」では、野村アセットマネジメント 責任投資調査部の山脇大氏が「水産物トレーサビリティ エンゲージメント プログラム」を紹介。同社は「日系水産企業2社に対するリードインベスターに就任し、エンゲージメントについてリードする立場にある」と語った。

 みずほフィナンシャルグループ・みずほ銀行サステナブルプロタクツ部の平野裕子氏は、「『環境・社会に配慮した投融資の取組方針』(ESポリシー)を2024年3月に改訂して「漁業・養殖」を追加し、同年7月から運用を開始したことを紹介。『認識すべきリスク』を踏まえ、今年度から対象となる取引先とエンゲージメントを開始する」と説明した。

 ツナ缶では世界一を誇る水産加工のタイ・ユニオン・グループは、サステナブル・ファイナンスに力を入れる。財務グループのヨンユット・セッタイワット氏は、「サステナブル・ファイナンス活動を2020年から始め、サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を日本でも発行してきた。サステナブル・ファイナンスを2030年までに100%にする」と語る。

 マルハニチロは2022年11月、国内初のブルーボンドを発行して話題となった。財務部長の山崎浩志氏は、「総額50億円の資金は2500トン規模の陸上養殖施設を建設し、2025年度に稼働開始、2027年度の初出荷を目指す」と説明する。

 投資の意思決定プロセスにおいて、ESG課題を考慮することで新たな価値が生まれる。投資は水産会社や金融機関だけの特別なものだと思いがちだが、「年金保険料を納めている皆さんも投資家」と話すのはPRIジャパンの森澤充世氏。「自分のお金がどう運用されているか考えてほしい」と語りかける。

 東京大学大学院教授の八木信行氏は、消費者を巻き込み、「成果」だけでなく「過程」の大切さを強調した上で、「社会のイノベーションやアイデアの創出に向けて科学者もデータをそろえていくことが重要」と指摘し、科学者の参加も呼びかけた。

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