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バイオシミラーの可能性 日本における持続可能な医療制度の目標は達成されたのか?

2025年11月8日、「バイオシミラーの可能性:日本における持続可能な医療制度の目標は達成されたのか?」と題したセミナーが東京の虎ノ門ヒルズで開催された。ここでは、その講演とパネルディスカッションの模様をレポートする。

開催概要

主催
日経BP(日経メディカル・日経ドラッグインフォメーション・日経ヘルスケア・日経バイオテク)
後援
日本医師会・日本薬剤師会・日本バイオシミラー協議会・日本フォーミュラリ学会・全国健康保険協会
協賛
サンド、ニプロ、富士製薬工業、Meiji Seika ファルマ
Sponsors
サンド株式会社ニプロ株式会社富士製薬工業Meiji Seika ファルマ株式会社

国内バイオシミラー市場の現状と課題
-日本の市場はサステナブルか?-

欧州の生物学的製剤の学会等では、バイオシミラー市場の持続可能性への関心が高まっている。その中で、Biosimilar Void(バイオシミラーの空白地帯)と呼ばれる課題が取り沙汰されている。これは、市場を独占してきた先行バイオ医薬品(以下、先行品)のバイオシミラーが、投資コストや規制などを理由に開発されない例が増えている現状を意味する。一方、先行品19品目に対するバイオシミラーが41製品と、欧米に比べて極端に少ない日本市場ではBiosimilar Void以前に、欧米で汎用されるバイオシミラーが導入されないドラッグロスの状態にある。その背景として日本のバイオシミラー市場での規制や価格制度等の不確実性が考えられる。そこで、規制の明確化、薬価の安定化、新たな目標の設定、フォーミュラリへの導入、インセンティブの拡充などを提案する。それがバイオシミラー市場の魅力度を高め、持続可能性につながると考える。

坂巻 弘之 氏

坂巻 弘之 氏

一般社団法人
医薬政策企画 P-Cubed 代表理事

国のバイオシミラーの使用促進への取り組み

米国のコンサルティング企業IQVIAは、2020年時点で医療用医薬品の売上上位100品目のうちバイオ医薬品が52.9%を占めると報告した。しかし、日本ではバイオシミラーに対する患者の認知度は16.6%と乏しく、医療機関での信頼性も一部で低い傾向があり、先行品からの置き換えは進んでいない。そこで国は2029年度末までに「バイオシミラーへの置換率80%以上の成分」が「全成分数の60%以上」になることを目標に定め、「普及啓発活動」「安定供給体制の確保」「診療報酬等の制度上の対応」「国内バイオ医薬品産業の育成・振興」を4本柱とする施策を立案した。2025年の経済財政運営と改革の基本方針にも、バイオシミラーの国内生産体制整備、人材育成・確保、使用促進が明記された。新政権下の成長戦略でも、「創薬・先端医療」が重点分野に位置付けられ、バイオシミラー市場の拡大・発展が強く期待される。

安中 健 氏

安中 健 氏

厚生労働省
医政局医薬産業振興・医療情報企画課 課長

医療機関の経営とバイオシミラーの活用

2024年9月、厚生労働省はバイオシミラーの使用促進に向けたロードマップを公表した。そこには保険者インセンティブ制度の検討が盛り込まれている。国の経済財政運営と改革の基本方針2025には、バイオシミラーの生産体制整備、人材育成、使用促進が明記された。その理由の1つに、バイオシミラー導入の薬剤費削減効果が挙げられている。当院でもバイオシミラーの積極導入を推進し、2023年度にはフィルグラスチム、インスリングラルギン、インフリキシマブ、リツキシマブ、ダルベポエチンアルファ、テリパラチドで90~100%のバイオシミラーへの置き換えを達成した。現在は先行品全体のバイオシミラーへの置き換え率も約75%に達し、その結果として、薬剤購入費を毎月約2000万円削減できている。今後は地域連携を通して、バイオシミラーの地域フォーミュラリへの導入も提案し、同時に使用適正化と経済効果の最大化も目指したい。

池田 龍二 氏

池田 龍二 氏

宮崎大学医学部附属病院
副病院長 教授・薬剤部長

持続可能な医療の実現に向けて
-欧州におけるバイオシミラーの導入と成果-

バイオシミラーは、医療コストが課題となる環境においても、患者に有効性の高い治療を受ける機会をもたらす。医師には有効性の高い治療薬の選択肢を、保険者には医療費と予算の最適化を、製薬企業には新たなイノベーションに取り組む余地を提供する。すなわち、全てのステークホルダーに利益をもたらし、ひいては医療の質の向上にもつながる。欧州では2006年以降、22品目の先行品に対するバイオシミラーが102製品承認され、2024 年の市場規模は約128億ユーロに達した。市場は2032年までに322億ユーロへと拡大し、より大きなコスト削減と治療への幅広いアクセスが可能になる。医療の持続可能性の基盤は医療コストの多寡とともに、患者のAffordability(費用負担ができること)に依存している。医療の持続可能性を高めるため、市場環境と規制枠組みを整備し、バイオシミラーの普及を促進することが重要である。

ピーター・ステニコ 氏

ピーター・ステニコ 氏

サンド インターナショナルリージョン・プレジデント

日本バイオシミラー協議会の活動

日本バイオシミラー協議会は2016年に設立、2019年に一般社団法人となった。現在は正会員17社、国内バイオシミラー企業20社中14社が加盟しており、加盟企業全体で国内で承認されたバイオシミラー品目数の約7割を扱っている。国の政策に基づき、バイオシミラーの認知度向上、適正使用、安定供給を3本柱に活動しているが、特に日本国内での一定量の在庫確保、供給不安時の迅速な情報提供の推進は業界団体としての責務と考えている。その一環として、加盟各社はバイオシミラーの原薬の海外依存軽減を図り、供給不安リスクの解消に努めており、7社が原薬・製剤在庫の積み増しに、6社が製剤の国内製造の体制整備に取り組んでいる。協議会はバイオシミラーの情報提供にも注力し、メディア・患者向けのセミナーの定期開催や資材の作成・提供、市販後の安全性や有効性に関するエビデンスの日本語による発信なども行っている。

島田 博史 氏

島田 博史 氏

一般社団法人
日本バイオシミラー協議会(JBSA) 会長

バイオシミラーの利用支援、費用負担、使用持続可能性

日本の65歳以上人口は現在、全人口の30%を占め、2026年には38%に拡大すると予想されており、国の医療費負担の増大にもつながる。一方、医療現場で急速に普及しているバイオ医薬品は構造が複雑で開発・製造が難しく極めて高額だが、後続品であるバイオシミラーは先行品に比べて低価格であり、医療コスト削減に寄与すると考えられている。過去10年間のバイオシミラーへの置き換え推進により、米国では約560億ドル、欧州では約560億ユーロの医療費が削減された。欧米ではバイオシミラーのさらなる開発・普及促進を見据え、第Ⅲ相臨床試験の免除も検討されている。超高齢化が進む日本では、重篤な疾患の増加によりバイオ医薬品への依存度も高まっている。国民皆保険制度の持続可能性を確保するためにも、高価値のバイオシミラーを誰もが入手できるようにするためにも、バイオシミラー産業の振興が求められる。

Mr. Jungwook Kim

Mr. Jungwook Kim

サムスンバイオエピス
Executive Vice President and Head of External Relations

パネルディスカッション

日本におけるバイオシミラー普及の課題と持続可能性確保の要件

パネルディスカッションでは、バイオシミラー使用促進のための課題と市場の持続可能性について議論された。

2024年度に新設された「バイオ後続品使用体制加算」により医師のバイオシミラー使用には弾みがついた。一方、患者に切り替えの納得を得る難しさが指摘され、地域フォーミュラリへの導入も一案との意見があった。2025年に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の改正で「供給体制管理責任者」の設置が法制化された。製造の海外依存が大きく需給予想の難しいバイオシミラーの安定供給にも資すると期待される。そうした施策を含め、市場の持続可能性確保のためには健全な競争、市場の透明性、需給見通しの共有、イノベーションへの収益の再投資を基盤とするエコシステム構築の必要性が提言された。

パネルディスカッション Q&A

司会・モデレーター 日経バイオテク編集長・久保田 文

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