ペンギンは水中を36km/hで進み、深海500mに潜る「泳ぎの達人」
ポナン
日本支社長
伊知地 亮 氏
「ペンギンは、翼が退化して“飛べなくなった鳥”ではありません。海で高度に進化した“泳ぎの達人”です」と伊知地氏は話す。
ポナン
日本支社長
伊知地 亮 氏
一般的な鳥の骨は空洞化して軽くなったが、ペンギンの骨は重くて強靭だ。翼の筋肉も発達し、水中で大きな推進力を生み出す。種類にもよるが、水中を36km/hで進み(陸上競技100m・200m走で世界記録を持つウサイン・ボルトと同等)、深海500mにまで潜る。海中で息継ぎなしに30分以上活動でき、海面から空中へ高さ3mもジャンプして氷上に飛び乗る。
ペンギンは海で進化し、「泳ぎの達人」になった
世界には約19種類のペンギンがいるが、1種を除いてすべて南半球に生息している。そのうち、南極大陸で暮らす主なペンギンは「アデリーペンギン」「ジェンツーペンギン」「アゴヒゲペンギン」「キングペンギン」「コウテイペンギン」の5種類だ。
コウテイペンギン以外のペンギンは、南半球の夏が始まる11月頃に雌雄がペアとなり、オスが巣を作る。12月ごろ生まれたヒナはどんどん成長し、3月には産毛から大人の羽根に生え換わる換毛期を迎える。換毛期の過程では、まるでモヒカン刈りのようなユニークな姿が見られる。
換毛期を迎えたヒナ。モヒカン刈りのような状態になる
5種類のうち唯一コウテイペンギンだけは真冬に営巣するため、コウテイペンギンの子育ての終わりと他のペンギンの子育ての始まりが重なる11~12月は、ツアーの時期として人気が高い。
世界唯一の「ラグジュアリー砕氷客船」でコウテイペンギンの営巣地を目指す
日本から飛行機を2回乗り継ぎ、約2日かけてアルゼンチンのウシュアイアに到達する。そこから船で南極大陸を目指す。南米大陸の突端から1000kmほど進み、南極半島に差しかかると、青白く巨大な氷が見えてくる。南極の氷は、世界の氷の90%を占めている。
青白く巨大な氷が海上に突如見えてくる
そこから約6日間にわたって毎日ペンギンと出会える日々が続く。上陸の際は、船の最後尾にあるマリーナと呼ばれるデッキから、ゾディアックというゴムボートに乗って向かう。「体力に自信がない人でも大丈夫。最高齢で97歳の方を案内したことがありますが、問題ありませんでした」と伊知地氏は述べた。
船の最後尾にあるデッキから、ゾディアックというゴムボートに乗って上陸を目指す
伊知地氏が日本支社長を務める仏ポナン社は、世界に1隻しかないラグジュアリー砕氷客船「ル コマンダン シャルコー」を所有し、コウテイペンギンの営巣地を船で訪問できる世界唯一のクルーズツアーを運営している。シャルコーが世界で初めてクルーズ船としてスノーヒル島の営巣地に到達した時、伊知地氏はそのツアーのエクスペディションリーダーを務めた。その時の様子を、豊富な写真と動画で披露した。
世界唯一のラグジュアリー砕氷客船「ル コマンダン シャルコー」
ツアーのエクスペディションリーダーを務める伊知地氏
ウシュアイアを出たシャルコーがドレーク海峡を通過し、ウェッデル海に入ると、海面に大きな氷が見え始める。一般的なクルーズ船が来られるのは、この辺りまでだ。シャルコーはそのまま、氷の厚さが2mになるまで突き進む。2mを超えたところで船を反転させ、スクリューで氷を砕きながら進み始める。コウテイペンギンの営巣地に近づくころには、海面は完全に氷で覆われている。シャルコーは海上自衛隊の「しらせ」と同等の砕氷能力を持つ。厚さ約27mの氷を砕いて進める、世界唯一のクルーズ船だ。
砕氷客船だからこそ行ける極地へ旅行者をいざなう
船を飛び立ったヘリコプターが上空から海面を監視し、氷の薄い場所を探しながら進んでいくと、コウテイペンギンの営巣地が近づいてくる。まず、伊知地氏を含む専門家のチームがスノーヒル島に上陸し、5時間ほどかけて営巣地に至る最適なルートを見つけ出す。乗客は営巣地から3kmほど離れた地点に上陸し、徒歩で目的地を目指す。
ヘリコプターが上空から海面を監視し船の行く先を指示する
伊知地氏は、営巣地に到着した時の写真を参加者に披露した。たくさんのコウテイペンギンとヒナの姿が見える。「感動的な光景でした。初めてコウテイペンギンの営巣地を目にした多くのお客様が、涙していました」(伊知地氏)。
徒歩でたどり着いたコウテイペンギンの営巣地。数多のヒナが迎えてくれる
5つ星の食事とサービスを楽しみながら、地球で最もエキゾチックな場所へ
ポナン社はシャルコーを含む5隻のクルーズ船を所有し、世界中のエキゾチックな場所を旅する「ラグジュアリーエクスペディションクルーズ」を提供している。すべてが5つ星クラスのラグジュアリー客船だ。快適なサービスと食事で優雅な船内生活を楽しみながら、地球上で最もエキゾチックな場所を訪れることができる。全室がバルコニー付きで、部屋にいながら絶景を楽しむことができる。
シャルコー以外の4隻は、「シスターシップ(Sister Ships)」と呼ばれている。アデリーペンギン、アゴヒゲペンギン、ジェンツーペンギンなどに会える「憧れの南極クルーズ」や「南極大周遊の旅」などの人気ツアーをエスコートする。シャルコーのみが砕氷船であり、シスターシップが入れないさらなる奥地へ旅行者をいざなう。
シャルコー以外のラグジュアリー客船4隻(ル ボレアル / ル ソレアル / ロストラル / ル リリアル)は「シスターシップ(Sister Ships)」と呼ばれる
シャルコーによる「ウェッデル海のコウテイペンギンに出会う旅」は、2年ごとに行われている。その理由は、北極点を目指す「地球のてっぺん 北緯90度の北極点を目指して」というツアーと1年交代で実施しているからだ。今年は南極ツアーの年。これを逃すと2027年までコウテイペンギンのツアーはない。しかも、今年は伊知地氏本人がエクスペディションリーダーとして乗船する予定だ。
ウェッデル海のコウテイペンギンに出会う旅
セミナーの終了後に、簡単な立食パーティが催された。伊知地氏やツアースタッフなどとセミナー参加者が歓談した。「コウテイペンギンは人間を見たことがなく、警戒心が全くありません」という伊知地氏の話に感動し、「いつか必ず行ってみたい」と話す聴講者がいた。白夜と極夜に関する質問や、雪原を歩く際の注意点を尋ねる参加者なども見られ、南極クルーズに対する関心の高さがうかがえた。
伊知地氏のセミナーと立食パーティ(右)の様子
※写真提供:PONANT(ポナン)





