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第12回日経・FT感染症会議が大阪で開催第12回日経・FT感染症会議が大阪で開催

10月7~8日の2日間、大阪・梅田において、「~分断の時代に求められる新たな価値観は?~」をメーンテーマに「第12回 日経・FT感染症会議(主催:日本経済新聞社、共催:FINANCIAL TIMES)が開催された。以下では、2日間にわたる討議から、主催者セッションのポイントを紹介する。

会議の冒頭、世界保健機関(WHO)事務局長のテドロス・アダノム氏からのビデオ・メッセージが紹介された。同氏は、今年5月にWHOパンデミック協定(仮称)が採択されたことを報告。「次のパンデミックは、発生するかどうかではなく、いつ発生するかが問題だ」として、改めて警鐘を鳴らした。

アシシュ・ジャー 氏

アシシュ・ジャー
米国ブラウン大学公衆衛生大学院学長

Moderator

続く基調講演では、米ブラウン大学公衆衛生大学院学長のアシシュ・ジャー氏が登壇した。ジャー氏は現代を「生物学的リスクの時代」と位置付け、世界が直面する主な生物学的リスクとして、自然発生的なパンデミック、偶発的な研究室からの病原体流出、人為的な生物兵器の使用の3つを示した。

グローバルヘルス・セキュリティーの向上を目指して

安全保障という新たな論点の整理を目指す

乗竹 亮治 氏

乗竹 亮治
特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI)代表理事

Moderator

議題1では、「グローバルヘルス・セキュリティーの向上を目指して」と題し、感染症に対する国家や国際的な安全保障の観点から、防衛セクターを含めた産官学連携を主なテーマとして討議が行われた。

モデレーターを務めた日本医療政策機構代表理事の乗竹亮治氏は、「地政学的なリスクが増大し、各国のリーダーシップ体制が変遷する中で、感染症に関する安全保障の課題が増大しており、多角的な国際連携についての議論が求められる」と指摘した。

防衛省衛生監の日下英司氏は、「自衛隊にはわが国への武力攻撃からの防衛という本来任務を維持しながらいかに民間と協力できるかという課題がある」として、「議論を進める上で、自衛隊に何を期待するのかを明確化する必要がある」とした。

防衛セクターを含めた産官学連携に対する懸念や課題も指摘された。とくにアカデミアにおいては、かねてから軍事研究に対して抵抗感がある。本会議の議長である尾身茂氏は「一般市民の命を守る目的で行われるサーベイランスやワクチン接種などに自衛隊が関与することは納得が得られやすい。半面、兵器開発などについてはコンセンサスを得る必要があるのではないか」とコメントした。

WHOの進藤奈邦子氏は、「今や感染症対策は国家にとって危機管理問題であり、防衛セクターを含めた産官学連携は避けられない」として、「軍隊の強みであるロジスティクス(兵站)、インテリジェンス(情報収集)の能力を生かし、非医薬品的介入や公衆衛生措置に貢献することを日本は目指すべきだ」と提案した。

最後に乗竹氏は、「防衛セクターとの連携を進めるうえでは思考停止をせずに議論を続けることが、シビリアン・コントロールの堅持にも繋がる重要な一歩だ」として議論を締めくくった。

研究開発と対策を加速化するために

日本の貢献に欠かせないイノベーションの迅速化

國井 修 氏

國井 修
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)CEO兼専務理事

Moderator

このセッションではグローバルヘルス技術振興基金 CEO兼専務理事の國井修氏がモデレーターを担当。Mpox、マラリア、結核など多くの国で流行が続く感染症に関連した研究開発や対策を迅速化する方策や課題について話し合われた。

Mpoxは近年、ヒト-ヒト感染が確認され、2022年からはアフリカ外にも拡大している。WHOはMpoxについて、2020年に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言している。

コンゴ民主共和国で活動している大阪公立大学の城戸康年氏らは理化学研究所発ベンチャーのダナフォームとMpoxの核酸検査装置を共同開発した。小型、低消費電力で現地での運用が容易。30分以内に結果が得られるという。

シスメックスの蛭田嘉英氏は、既存のマラリア検査法の課題解決を目指して、自動血球分析装置を同社が開発したことを報告した。マラリア原虫の感染赤血球を定量でき、1分間で結果を得ることができるという。

東京大学医科学研究所の石井健氏は、開発の迅速化の取り組みとして、「100日ミッション」について解説した。Mpoxの国産ワクチンもこの枠組みで進められた。「現在ではワクチンに診断と治療を加えた三位一体の開発が共通理解になっている」という。

國井氏は、「日本には技術もプレーヤーもいるが、情報流通が十分ではない。内閣府や国立健康危機管理研究機構(JIHS)がハブとなり、情報流通やプラットフォーム整備について検討してほしい」とまとめた。

信頼・共感・対話~分断を越え共創する世界へ~

小柴 巌和 氏

小柴 巌和
有限責任 あずさ監査法人 アドバイザリー統轄事業部 パブリックセクターアドバイザリー事業部 ディレクター(ヘルスケア&ウェルビーイング)

Moderator

議題4では、あずさ監査法人の小柴巌和氏がモデレーターを務め、情報とコミュニケーションをテーマに、①科学的エビデンスに基づいた情報の届け方や扱い方、②個人の感情や価値観に寄り添う信頼関係の構築や対話、③誤情報・偽情報への対処、という3つの視点での議論が行われた。

情報の提供側と受け取り側のギャップについて大阪大学の大竹文雄氏は、「科学的な情報は、予測が不確実であることも明確に示すべき」とした。「例えば『42万人死亡』や『8割削減の必要』といった数値は、本来は不確実な予測なのに、数値だけが前面に出てしまったことは反省すべき」と述べた。

早稲田大学の田中幹人氏は、「2025年2月に日本人1万2000人へのアンケートを実施。感染対策が個人の健康を守るという点には約9割が同意した一方、『ワクチンの有害な副作用が隠されている』と考える人は4割近くに達した」とした。

「寄り添い」とその効用についての討議も熱心に行われた。同志社大学の瓜生原葉子氏は、ソーシャルマーケティングの観点から、対象者視点の重要性を提示した。「自分で選択した行動では、納得感が高まる。その際の鍵は、不安を和らげることだ」と述べた。

「寄り添い」については、本セッションの参加者の見解も多様で、引き続き議論を深める必要性が感じられた。そうした中で、ユニークな視点の提示もあった。

JT生命誌研究館の館長で歌人でもある永田和宏氏は、「参加型の発信」の効用を語った。

「『参加型の発信』とは、自分で情報に参加することである。歌が人々の心に訴えるのは、言葉と言葉の間には隙間があるからだ。受け手が自分でその隙間を埋めようとする行為こそ参加であり、その参加から感動が生まれる」として、「過不足ない文書は参加の余地を与えず、興味を持ちにくい。むしろ余白を意図的に残すとよい」と提案した。

バルターモ社CEOのエリナ・ヘントネン氏はCOVID-19流行の中、フィンランドにおいて分断した人々をつなげる対話ネットワーク構築の成果を紹介した。

「パンデミック期にオンラインで『ロックダウン・ダイアローグ』を実施し、人々が何を感じ、何を恐れ、どこに分断があり、何に希望や団結の可能性を見出すのかを聴き取った。得られた知見は、政策立案に活用された」という。その上で、今後も経験を共有しつつ議論を深めたい」と述べた。

武見 敬三 氏

武見 敬三
前厚生労働大臣 日本国際交流センター(JCIE) シニア・フェロー アジア人口・開発協会(APDA) 理事長

本会議2日目の夕刻、ステートメント策定に向けて各セッションのモデレーターが議論の概要を報告したあと、前厚生労働大臣の武見敬三氏が総評を述べた。

武見氏は、将来の危機に備えるための政策課題について、3つの観点から総評を示した。

第1は感染症を国策のキーアジェンダと見なし、その政治的モメンタム(推進力)を維持すること。感染症に関するバイオセキュリティの重要性が高まっていることを国家安全保障上の脅威と捉えるべきとした。

第2は、保健医療/介護に関わる政策の決定において、常にグローバルなコンテキスト(文脈)で考えるべきこと。イノベーション分野、とくに創薬は研究、生産、治験、薬事承認が国境を越えたエコシステムとして存在するため、産官学連携も国内で完結すべきではない。とりわけアジア各国とは平時から臨床治験ネットワークを構築しておくことが必要だ。

第3はガバナンスの強化である。このほど国立国際医療研究センターと国立感染症研究所を母体とする国立健康危機管理研究機構(JIHS)が日本版CDCとして創設された。今後、JIHSが感染症における危機管理の意思決定ができる機能を持てるように議論を進めるべきとした。

最後に武見氏は、日経・FT感染症会議を継続し、平時においても感染症に関する(提言機関としての)役割を担うべきとエールを送った。

日経・FT感染症会議では、2日間の討議を「感染症ステートメント2025」としてホームページでも公開している

URL:https://cdc.nikkei.com/pdf/2025/12thnfc_statement2025_ja.pdf

提供:日本経済新聞社


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