チョコレートを主力商品とするロッテでは、カカオ豆の持続可能な調達に取り組んでいる。生産地のガーナで農家までのトレーサビリティ確立を進め、並行して地域課題の支援を展開。サステナビリティ経営のパーパスと直結するプロジェクトについて、サステナビリティ推進部 企画課 大野花音氏に話を聞いた。

パーパスと直結した持続可能な調達の重要性

板チョコの代名詞とも言えるロッテの「ガーナ」。その商品名はカカオ豆の一大生産国である西アフリカのガーナに由来するもので、多くの日本人が赤いパッケージを思い浮かべるだろう。しかしカカオ豆を取り巻く現状は厳しい。大野氏は「森林減少、児童労働、農家の貧困といった課題が深刻です。さらに近年は天候不順や病害虫、木の高齢化、化学肥料の高騰など、複合的な要因によって不作が続いています」と指摘する。

株式会社ロッテ
サステナビリティ推進部 企画課
大野 花音 氏

持続可能な調達を目指し、ロッテではトレーサビリティが確立された「ロッテ サステナブルカカオ(以下、LSC)」の調達割合を拡大している。LSCの取り組みは、同社のパーパス「独創的なアイデアとこころ動かす体験で人と人をつなぎ、しあわせな未来をつくる。」と深く結びついたものだ。ここで示した“しあわせな未来”とは、人々が心身共に健康で、地球環境や社会と調和した持続可能な未来を意味する。すなわちサステナブルな社会の実現がサステナビリティ経営の推進に結びつくとの考え方である。

株式会社ロッテ
サステナビリティ推進部 企画課
大野 花音 氏

そこで2018年から進めてきたサステナビリティ目標を、2024年に「ロッテミライチャレンジ2048」としてアップデート。創業100周年となる2048年を見据えたビジョンであり、ありたい姿からバックキャスティングする手法で再構築した。

「ロッテミライチャレンジ2048は若手メンバーが主体となり、将来世代の視点を反映したのが特徴です。その結果、“お客様の選択がしあわせな未来につながるようにブランドを進化させる”“人と人をつなぎ持続可能な地球を実現する”“多様な人財が集い独創的なアイデアを次々と生み出す会社になる”という3つのサステナビリティビジョンを定めました。そこから“心身の健康”“持続可能な調達”“サーキュラーエコノミー”“脱炭素”“社会とつながる”“人財”という6つのマテリアリティ(重要課題)に落とし込んだサステナビリティ目標を策定。これにより、パーパス、サステナビリティビジョン、サステナビリティ目標までが一貫した流れとなっています。だからこそ、持続可能な調達はロッテにとって欠かせないものなのです」(大野氏)

パーパス実現に向け、ブランド進化、持続可能な地球実現、人財育成の3つのサステナビリティビジョンを定義

トレーサビリティと現地支援の2本柱で生まれる好循環

先に触れたように、徹底したトレーサビリティが持続可能な調達の基盤となる。ロッテでは現地のパートナーと協力して、カカオ豆が収穫されてから日本に輸出されるまでの過程を管理し、トレーサビリティの確保に努める。その上でガーナのLSC調達先について「森林減少」「児童労働」「農家の貧困」にフォーカスし、地域が抱える課題解決に向けた支援プログラムを実施している。

無秩序な開拓に起因する森林減少については、GPSによるカカオ農園のマッピングと、衛星データを活用した森林モニタリングツールの突合によって減少地域との重複を確認。必要に応じて該当農家への指導も行う。大野氏は「スマートフォンに専用アプリをインストールして農家の方々がマッピングします。当社はEUDR(欧州森林破壊防止規則)による直接的な規制は受けませんが、同等の基準でモニタリングを実施しています」と説明する。

GPSと衛星を活用し、ガーナのカカオ農園を把握・監視して森林減少を防止している

児童労働の監視には「CLMRS(児童労働監視改善システム)」を導入し、実態調査から改善支援、フォローアップ、啓発活動までの循環的な仕組みを構築した。いくつかの地域では「グリーバンス(苦情処理)メカニズム」も導入し、課題解決に向けた実効性のある仕組みを確立している。

インフラ面の強化も惜しまない。例えば水くみに行く過程で児童労働が発生しているケースが確認されたため、ロッテでは井戸を寄贈。また、外務省の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」の案件である「ジュリグン基礎学校校舎建設計画」と連携して、教員宿舎の建設を支援している。その他、カカオハスク(カカオ豆の外皮)をアップサイクルして作った「ReCacao Note」を子どもたちに届けるなど、サステナビリティと連動した取り組みも進める。

農家の貧困対策では、カカオ豆の生産性向上に資する農法トレーニングの実施、約12.5万本に及ぶカカオの苗木配布などを行った。「ガーナではこれまで、収量を増やすために森林を農地に転換してきましたが、現在は既存の農園の中で収量を高める工夫を増やしています。適切な農薬の使用や、バイオ炭の有効性評価など、環境に配慮した生産方法の推進にも取り組んでいます」と大野氏。これらの取り組みを通じて、2025年度にはガーナ産カカオ豆のLSC率が100%に達する見込み。2028年度には他の調達国も含めたすべてのカカオ豆をLSC率100%達成の予定だ。

「ロッテとして、現地の状況を『知ることができている』のは大きな進歩だと感じています。これまで曖昧だった森林減少や児童労働の実態を、マッピングによって具体的に把握できるようになりました。どの地域が森林保護区に該当しているのかなどの情報を得て、すぐに対策を立てられるようになったのは大きな変化です。現地では児童労働が減少傾向にありますが、新しい調達地域では課題も残っており、今後も現場を見ながら着実に進めていく必要があると考えています」(大野氏)

理想は商品の選択がサステナブルな未来につながること

企業の垣根を越えた連携も進める。ロッテ、不二製油、MCアグリアライアンス、Olam Food Ingredientsの4社共同で取り組むのがカカオポッド(殻)由来のバイオ炭を用いた再生農業の有効性評価試験だ。

バイオ炭には土壌改良と脱炭素という2つの効果が期待されている。土壌改良については保水性や保肥性などの向上によって土壌中の生物多様性が再生されることで土壌が肥沃になり、化学肥料や農薬使用量の削減、生産性向上などの効果が期待されている。脱炭素効果についてはカカオポッドを炭にすることでCO₂を固定し、廃棄時におけるメタン発生を抑制するという。

「現地の実証実験では、バイオ炭がとても簡単に作れることが分かってきました。土を掘ってかぶせるだけで生成できるため、農家の方々にも取り入れやすい方法です。現在は木の周りにバイオ炭をまいて効果を比較する実験を行っており、土壌改良効果と脱炭素効果の両方を検証している段階です」(大野氏)

ここまで紹介してきたカカオに関するサステナビリティ情報を、ロッテでは「A Happy Cycle with Cocoa」を通じて発信している。大野氏は「カカオ産地の農家の貧困や児童労働といった課題を正しく知ってもらうことも、このサイトの大切な役割」とした上で、次のように展望を語った。

「私たちの活動が生産地の支えにつながり、結果として持続可能な調達ができ、お客様にも応援していただける。この循環を形にするのが理想です。お客様が店頭でロッテの商品を手に取るとき、その選択が自ずとサステナブルな未来につながるようなブランドづくりをこれからも目指していきます」(大野氏)

株式会社ロッテ

株式会社ロッテ WEBサイト