秋元 孝之(あきもと・たかし)
1988年早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了。カリフォルニア大学バークレー校環境計画研究所に留学。博士(工学)、一級建築士。清水建設株式会社、関東学院大学工学部建築学科を経て、芝浦工業大学建築学部長・教授。専門分野は建築設備、特に空気調和設備および熱環境・空気環境。過去会長を務めた空気調和・衛生工学会は日本冷凍空調学会と冷媒未来共創宣言を行った
芝浦工業大学 建築学部長・教授
ガス石油省エネ給湯機
普及促進会議 座長
秋元 孝之氏
株式会社ノーリツ
研究開発本部 環境商品開発部
ヒートポンプ技術開発室 室長
若竹 孝史氏
給湯の脱炭素は、運転効率だけでなく、冷媒や制御、災害対応まで含めて考える段階に入った。
冷媒規制の議論が進むなか、自然冷媒の活用は製品競争力にも直結する。
芝浦工業大学建築学部長の秋元孝之教授とノーリツ研究開発本部の若竹孝史氏が語り合った。

秋元 孝之(あきもと・たかし)
1988年早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了。カリフォルニア大学バークレー校環境計画研究所に留学。博士(工学)、一級建築士。清水建設株式会社、関東学院大学工学部建築学科を経て、芝浦工業大学建築学部長・教授。専門分野は建築設備、特に空気調和設備および熱環境・空気環境。過去会長を務めた空気調和・衛生工学会は日本冷凍空調学会と冷媒未来共創宣言を行った
若竹 ノーリツは1951年創業の住宅設備機器メーカーで、ガス給湯器、温水暖房機器、厨房機器が主力です。1951年、戦後の復興期に「お風呂は人を幸せにする」という信念のもとに創業して以来、国内に加え北米・豪州・中国・東南アジアでも事業を展開しています。近年はサステナビリティ経営を掲げ、事業の構成比を見直し、非住宅分野や環境配慮型製品の開発・販売に力を入れています。
秋元教授は建築設備の専門家として、近年の気候変動対策についてどのようにお考えでしょうか。
秋元 まさに気候変動対策は環境対応にとどまらず企業価値そのものを左右する段階に入っています。世界では再生可能エネルギーの主力化や電化が進み、サプライチェーン全体においても脱炭素、さらに建築物のライフサイクル全体でのCO2排出削減が急速に進んでいます。
日本でも行政・業界・事業者が連携する「ガス石油省エネ給湯機普及促進会議」が設立され、気候変動対策は今後ますます加速していきます。建築分野では建築物省エネ法の改正案が閣議決定され、資材、製造から建設、運用、解体・廃棄までが対象のライフサイクルカーボン評価(LCA)制度の創設が打ち出されました。2028年から延べ床面積5,000m2以上の大規模事務所ビルで適用される見通しです。建築分野は国内のCO2排出量の約4割を占め、制度基盤の整備が進んでいます。
また温室効果の高いフロン類を用いた冷媒は、業務用だけでなく家庭用エアコンにも回収規制を拡大する方向で政府が検討を進めています。
若竹 まさにその点を意識して、当社は自然冷媒R290採用のヒートポンプと高効率ガス給湯器を組み合わせたハイブリッド給湯機の改良を重ね、25年には、「自然冷媒ハイブリッド給湯機 HPHB R290」を発売しました。自然冷媒は環境負荷が小さい一方で、業界では扱いが難しいともいわれます。
秋元 最大の論点は安全性ですよね。特にR290は強燃性のプロパン系で、普及の障壁でした。一方で冷媒の問題は、運用時の省エネだけでなく廃棄・回収の段階にも波及します。従来、冷媒として使われてきたフロンは機器の取替・廃棄時も想定した社会実装の仕組みを同時に整える必要があります。
若竹 そうですね。当社は13年に業界で先駆けて、冷媒にR290を用いた製品を上市して以降、一貫してR290の採用を継続してきました。R290は地球温暖化係数(GWP)が0.02と極めて低い一方、強燃性であることが技術課題でした。そこで漏れた場合のシミュレーションや引火の有無、リスクアセスメントを重ね、ハード面でも冷媒配管の接続箇所を極力減らすなど、漏れ防止に努め、製品化につなげました。
秋元 まさに、いま注目されているのが電気とガスを組み合わせるハイブリッドです。脱炭素、安定供給、快適性を同時に満たすことが求められます。平常時は効率の高いヒートポンプを使い、需要が高まる場面ではガスがバックアップする最適なエネルギーの使い分けが、省エネ性と快適性を両立させます。
若竹 秋元教授がおっしゃるエネルギーの使い分けに、独自開発のアルゴリズムを使用しています。新製品に搭載している「新スマート制御」は、曜日や週ごとの使用パターンを学習し、直近2週間のばらつきも考慮して必要湯量を予測します。給湯負荷に応じてヒートポンプ出力を自動で変更し、貯湯温度を45~60℃の範囲で1℃刻みに制御します。太陽光発電の活用促進においては、天気情報を基に昼間の発電電力で自動沸き上げする「おてんき自動貯湯モード」も搭載しています。
秋元 重要なのは再エネの余剰を生活者の暮らしに取り込める点です。深夜に貯めたお湯を翌夕方まで保温する方式だと放熱ロスが生じます。昼間に余剰電力で、使う時間に近いタイミングでお湯をつくればロスを抑えられます。


自然冷媒R290(GWP0.02)を国内ハイブリッド給湯機に業界で唯一*採用し、環境性と省エネ性を両立した。使用傾向を学習する「新スマート制御」、業界最小*のコンパクト設計、天気情報×太陽光の自家消費、災害に備える「そなえ貯湯」などを搭載している(*2026年4月現在、 (株)ノーリツ調べ)
若竹 生活者の関心が急速に高まっているのが災害時のレジリエンスです。新製品では「そなえ貯湯」「そなえアナウンス」を搭載しました。あらかじめ登録した地域に警報が出ると自動で高温(65℃)沸き上げを開始し、災害に備えてお湯を確保します。
秋元 その点が重要で、気候変動と災害が頻発する現状を踏まえると、住宅設備のレジリエンス確保は不可欠です。電気とガス、複数のエネルギー源を持つことが非常時の強さにつながります。「もしもの時にお湯が使える安心」が製品選択の要素になります。
若竹 住宅設備は10年、15年という長い時間を共にします。環境負荷の低減、光熱費の削減、快適性、災害時の安心まで含めて選ぶことが、これからの暮らしのスタンダードになっていくと考えています。
秋元 今後は建築・設備・エネルギーを統合し、再エネ、蓄電池、EV、さらにデジタル技術と連携したトータルソリューションを提供することが、企業の競争力になります。
若竹 給湯は「生活の熱」を担う基盤なので、秋元教授のおっしゃるような製品の選択を次の社会の当たり前にしていくことが大切だと考えています。
[PR]日経BPが企画・制作している広告コンテンツです。