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多様化するニーズに対応する東芝フォトカプラ インバータ回路に最適な国産のアイソレーション・アンプ登場

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
インバータ回路の電圧や電源のモニタリングに欠かせないアイソレーション・アンプを東芝が開発した。基本的な性能に優れるだけでなく、国内での開発と製造を通じて産業用途のニーズに応える高品質かつ長寿命を実現したのが特徴である。東芝はワールドワイドのフォトカプラ市場でシェアナンバーワンを5年連続で獲得※1しており、アイソレーション・アンプを加えて製品ラインアップのさらなる拡充を図り、多様化するニーズに対応していく。
※1:【出典】ガートナー「Market Share: Semiconductor Applications, Worldwide, 2014」2015年3月31日
Based on worldwide revenue from shipments of coupler
佐川 路生(みちお) 氏 東芝ディスクリートテクノロジー株式会社 ディスクリート営業技術統括部 グローバル営業技術部 エキスパート

低圧系の回路と高圧系の回路を接続する場合や、距離が離れているなどしてグランド電位が異なる2系統の回路を接続する場合に用いられる素子が「フォトカプラ」である。

発光素子である赤外LEDと受光素子であるフォトトランジスタを単一のパッケージに封止して、電気的な絶縁を保ちながら、光(一般に赤外光)を介して一次側の信号を二次側に伝える仕組みだ。

フォトカプラはさまざまな回路に使われているが、最も一般的なアプリケーションがモーターの駆動などに用いられるインバータ回路である。マイコンやDSPなどで構成され+5V以下の低電圧で動作する制御系と、高電圧・大電流で動作するパワー系とを、安全のために絶縁する役割を担う。

例えば図1に示す代表的なインバータ回路では、パワー素子のゲートを駆動するドライバカプラ(紫)の他に、電圧や電流をフィードバックするアイソレーション・アンプ(ピンク)と、制御信号や高速バス信号を絶縁するトランジスタカプラ(緑)および高速ロジックICカプラ(青)をそれぞれ用いる必要がある。

図1 インバータ回路におけるフォトカプラの役割と東芝製品の対応
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ラストピースとなるアイソレーション・アンプを開発

ワールドワイドのフォトカプラ市場で2010年から5年連続でトップシェア(ガートナー調べ)を誇る東芝が2015年9月に発売したのが、図1のピンク部分に該当するアイソレーション・アンプ「TLP7820/TLP7920」である(図2)。

「東芝はフォトカプラの開発と製造で40年にわたる歴史を持っており、幅広いラインアップを取りそろえてきましたが、唯一アイソレーション・アンプだけがありませんでした。今回開発したTLP7820/TLP7920によって、インバータ回路に必要なすべてのフォトカプラを当社製品で構成できるようになりました(図1)」と、フォトカプラを扱う東芝ディスクリートテクノロジーの佐川路生氏は説明する。

電圧や電流のセンシングに用いられるアイソレーション・アンプは、デジタル信号やパルス信号を伝える通常のフォトカプラとは異なり、一次側の信号をアナログ情報として正確に二次側に伝える必要があり、赤外LEDとフォトトランジスタを単一パッケージに内蔵しただけでは実現することができない。

そこで東芝は、アナログ情報を正確に伝えるために高精度なΔΣ型A/Dコンバータを新たに開発。一次側でアナログ情報をデジタル値に変換したのち、光を介して二次側に伝え、D/Aコンバータを使ってアナログ値に復元して出力するという構成を採用した。A/Dコンバータの有効ビット数(ENOB)は代表値で12ビットとなっており、電流や電圧の高精度なセンシングが可能だ。

図2 東芝のアイソレーション・アンプ「TLP7820/TLP7920」の構成図
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デジタル出力品も同時にラインアップ

TLP7820/TLP7920の概略スペックをみていこう。まずパッケージだが、TLP7820がSO8Lパッケージ、TLP7920がDIP8パッケージといずれも省スペースのニーズに対応しており、特にTLP7820は実装時の高さがわずか2.3mmと薄く、競合品に比べて40%の低背化を実現している。

出力のノンリニアリティは±200mV入力時に0.02%、ゲイン誤差は±0.5%(Bランク品)~±3%(フリーランク)、入力コモンモード信号除去比は80dB、コモンモードトランジェント除去能力は20kV/μs、一次側の入力インピーダンスは78kΩなど、いずれも競合品に比べて優れた性能が特徴である(それぞれ代表値)。また温度ドリフト特性にも優れる。

入力から出力への伝達遅延時間は最大で3.3μsと高速であり、インバータの制御ループにも十分に組み込める。絶縁耐圧は5000Vrms以上を確保した(AC、60秒)。新規の東芝オリジナル変調・復調方式の採用により、入力消費電力は代表値で9mAに抑えるとともに製品信頼性を向上させた。

東芝では顧客の設計プロセスを短縮するために、TLP7820の評価ボードを用意している(図3)。三相インバータを構成できるように、パワーデバイスのほか、東芝製のゲート駆動用フォトカプラ「TLP5214」を6個搭載した。

なお、ここで紹介したTLP7820/TLP7920はアナログ出力だが、D/Aコンバータを省略したデジタル出力品の「TLP7830」(SO8Lパッケージ)と「TLP7930」(DIP8パッケージ)も順次提供予定だという。デジタルフィルタを後段に直接接続することができるなど、用途に応じた使い分けが可能だ。

図3 アイソレーション・アンプ「TLP7820」の評価ボード
図4 アナログ出力品の主な仕様

長寿命LEDの採用で、産業用途の高信頼ニーズに対応

ところで、フォトカプラは基本的に長寿命部品と考えられてはいるものの、動作時間が数万時間を超えると内蔵LEDの発光輝度が徐々に低下して全体の性能が劣化する問題が指摘されている。特に高温環境で動作させるほど劣化は早くなる。

東芝ではLEDに共通するこうした問題に対して、薄膜形成技術を応用したMQW(Multi Quantum Well:多層量子井戸)構造を採用。劣化を井戸の中に閉じ込めて周囲への伝播(でんぱ)を防ぐことで、高温環境においても劣化の少ない長寿命型の赤外発光LEDの開発に成功した。

TLP7820/TLP7920およびTLP7830/TLP7930はいずれもこの長寿命型LEDを内蔵しており、汎用インバータ、サーボアンプ、産業用ロボット、エレベータ、大型エアコン、太陽光発電用パワーコンディショナなど、高い品質と長期信頼性が求められる産業用途のニーズに対応する。

「このTLP7820/TLP7920およびTLP7830/TLP7930は、日本国内で開発と製造すべてを行っていますので、充実したサポートを含め安心して使っていただけます」と佐川氏は述べる。

なお、東芝は今回発売したアイソレーション・アンプの他に、IGBT/MOSFET駆動用フォトカプラ、IPM(インテリジェントパワーモジュール)駆動用フォトカプラ、高速インタフェースの絶縁に適した高速通信フォトカプラ、機械式リレーを置き換えるフォトリレー、フォトダイオードでゲート駆動回路の電源を生成するフォトボル出力フォトカプラ、汎用的なトランジスタ出力フォトカプラ、交流負荷の制御に適したトライアック出力フォトカプラ、およびサイリスタ出力フォトカプラをラインアップしている。

「これらすべてのカテゴリーで製品をそろえているベンダーは東芝だけだと認識しています」と佐川氏。同社では今後とも製品ラインアップのさらなる拡充を図り、ワールドワイドシェアナンバーワンの地位を磐石なものとしながら、多様化するニーズに対応していく。

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