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多くの産業界から注目を集めている塗装ブース 高性能ヒートポンプ熱源を活用し塗装品質と作業性の向上を実現

※記事中の情報につきましては、すべて取材時点のものとなります。
自動車ディーラーや修理工場向けの塗装ブースで国内有数のシェアを誇るアンデックス(広島県尾道市)は、東芝キヤリアの高効率かつ高性能なヒートポンプ熱源などを活用して、塗装品質と作業性の向上を実現する新たな塗装設備を開発した。自動車業界のほか、航空、鉄道、重機、産業機器、塗料販売商社、木工など、塗装を扱うさまざまな業界から注目を集めている。
田邊 耕造 氏 アンデックス 株式会社 代表取締役社長

風光明媚な「しまなみ海道」の本州側の接続口として知られる広島県尾道市。観光客で賑わう市の中心部から車で15分ほど東に向かったところに、アンデックスの本社がある。

1971年(昭和46年)設立の同社は、モータリゼーションの波とともにディーラーや修理工場向けの塗装ブース(乗用車が収まる広さの塗装室)で成長を遂げ、現在は国内有数のシェアを誇っているという。近年は鉄道車両や航空機部品などを対象にした塗装設備にも事業を広げている。

「塗装は、過去には単に色がついていればいいといった程度の認識の時代もありましたが、現在は製品の価値を高める重要な役割を担っていることが理解されるようになってきました。当社ではそうした市場の変化を見据えながら、塗装品質の向上と作業環境の改善という二つの課題に取り組んでいます」と、同社代表取締役社長の田邊耕造氏は述べる。

吉田 伸 氏 アンデックス 株式会社 取締役 経営企画部 部長

品質の高い塗膜を得るにはブース内の温度と湿度を塗料メーカーの規定範囲に収める必要があり、塗装作業員にとって働きやすい環境を作るためにも、空調の設置が望ましい。

ただし、話はそう単純ではないと同社経営企画部の吉田伸氏は指摘する。「ブース内の有機溶剤濃度が高くならないように一定以上の風速でフレッシュエアを送り込まなければならないなど、法令で換気要件が定められているため、一般的なエアコンのような循環空調が使えないといったさまざまな制約があります」。

東芝キヤリアと共同で空調付き塗装設備を開発

佐藤 貴 氏 アンデックス 株式会社 技術部 次長 村上 誠一 氏 アンデックス 株式会社 設計開発部 次長

こうした課題に対してアンデックスは、産業用の空調設備やヒートポンプ式熱源システムなどを得意とする東芝キヤリアと共同で、新たなコンセプトに基づいた塗装設備4システムを開発した。うち3システムは体験型実験施設として2016年6月に本社敷地内に開設した「LIVE FACTORY(ライブ・ファクトリー)」に設置、残り1システムは同社の山波(さんば)工場(尾道市)に設置している。

設計開発部の村上誠一氏は、「東芝キヤリアとは、航空業界に納入する空調付き塗装ブースなどの開発を共同で進めるなど、これまでもさまざまな案件をお願いしてきました。今回、当社が開発しようとした塗装設備の要件に合致する空調ソリューションを揃えていたのが東芝キヤリアだけだったこともあり、これまでと同様に共同での開発をお願いしました」とパートナー選定の経緯を説明する。

アンデックスが東芝キヤリアと開発した塗装設備は次のとおりである(図1)。

図1 アンデックスが東芝キヤリアと開発した塗装設備
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それぞれの概略を見ていこう。

(1) 自動車業界向け冷房付き塗装ブース CAB-SP

ディーラーや修理工場を主なターゲットにした一般的な上下流の塗装ブースである。ブース全体を空調するとコストが嵩むため、塗装作業員が作業しているゾーンにのみ冷風または温風を送ることで、作業環境の改善とローコスト化を両立した。

空調には空冷式一体形インバータパッケージエアコンである東芝キヤリアの「シングルエース」(図2)を組み合わせている。

図2 CAB-SPの空調を制御する空冷式一体型インバータパッケージエアコン「シングルエース」

(2) 水平流塗装ブース CAB-H2

空気の流れを上下方向ではなく横方向にした塗装ブースである。ブースの形状(断面積)次第では一定以上の風速を維持しながら上下流に比べて風量を落とせるため、使用エネルギーを半分以下に抑えられる場合もあるという。

空調は同社に以前から設置されていた東芝キヤリアの設備用パッケージエアコンを流用した。シングルエースでも対応できるという。

エネルギー効率の高いヒートポンプ熱源を採用

次のCAB-ZONEおよびCAB-OVENには東芝キヤリアのヒートポンプ熱源を採用した。ヒートポンプ熱源とは、熱媒体を使って空気中の熱を取り出し温水を生成する装置で、原理的にエネルギー効率が高いのが特徴である。

東芝キヤリアのヒートポンプ熱源製品が、インバータツインロータリー圧縮機によってきわめて高い効率を実現した「ユニバーサルスマートX」シリーズと、2段階の冷媒サイクルによって最高90℃もの出口温度を達成した「CAONS(カオンズ)」シリーズだ。いずれも給湯や空調用の熱源として全国のホテルや工場などに導入実績がある。

(3) 精密空調塗装ブース CAB-ZONE

「特に高い品質と信頼性を求める航空業界や防衛産業では、塗膜の性能を担保するために、塗装環境の温度や湿度を厳密に規定しています。そうしたお客様を対象に、温度と湿度の両方を管理した実験用設備です」とアンデックス技術部の佐藤 貴氏はCAB-ZONEを開発した狙いを説明する。「環境条件による塗膜品質の比較評価ができるよう、ブース内部をビニールカーテンで仕切って、温湿度を管理したゾーンと管理していないゾーンを設けるなどの工夫を盛り込んでいます」(佐藤氏)。

温度と湿度は、純水装置やボイラ設備などを必要としないウェットエアー空調システムに、東芝キヤリアのヒートポンプ熱源「ユニバーサルスマートX」(図3)で作った冷温水を与えて制御している。本構成はヒートポンプ熱源にとってきわめて相性がよく、低ランニングコストでの運転が可能だという。

合わせて東芝キヤリアでは空気線図を使った設定画面などの作り込みも行った(図4)。低温低湿から高温高湿まで任意の条件をタッチパネルで簡単に設定できる。

図3 インバータツインロータリー圧縮機を
        搭載したヒートポンプ熱源
       「ユニバーサルスマートX」
図4 温度や湿度を空気線図上で設定
        できるCAB-ZONEの管理画面
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(4) ヒートポンプ式乾燥炉 CAB-OVEN

上記の3システムはデモ用(実験用)の設備だが、CAB-OVENはアンデックスの山波工場で実際に使われている乾燥炉である(見学は可能)。被塗物をムラなくかつ短時間で乾燥させるために、一部フレッシュエアを取り込みながら、75℃~85℃の温風を内部で循環させている。良好な塗膜を維持しながら、自然乾燥に比べて乾燥時間をおよそ半分に短縮できるという。

温風の生成には東芝キヤリアの循環加温ヒートポンプ「CAONS700」(図5)を用いた。「塗装現場では有機溶剤を扱うため、火気を使うボイラーはできれば使いたくありません。CAONSであれば火気の心配がなく、しかもヒートポンプから排出される冷気を夏場は工場建屋の冷房として使うこともできるため、省エネと省CO2化が実現できました」(佐藤氏)。

また、村上氏は、「ボイラーに比べて立ち上げにやや時間はかかるものの、温度のオーバーシュートもなく、安心な熱源として使える点を評価しています」と述べている。

ボイラーを使った温水供給に比べてランニングコストが低く、同社ではおよそ3年での投資回収を見込んでいる。

図5 最高90℃の出口温度を実現した循環加温ヒートポンプ
       「CAONS700」

協働パートナーとともに塗装設備の付加価値向上を目指す

東芝キヤリアが空調設計を担当した上記の4システムは塗装のプロからも注目されており、自動車(ディーラーおよび修理工場)、航空、鉄道、重機、産業機器、塗料販売商社、木工など、さまざまな分野から見学や実験の申し込みが相次いでいるという。

アンデックスではLIVE FACTORYを活用しながら、東芝キヤリアとの協働を通じて、最新の空調機能を備えた塗装設備を顧客に提案していきたい考えだ。「パートナーである東芝キヤリアの技術を組み合わせることで、塗装品質と作業快適性の向上を図りながら、これからも付加価値の高い塗装設備の提供に取り組んでいきます」と社長の田邊氏は展望を述べる。

塗装業界に限らず、エネルギーの効率的な利用や労働環境の改善は多くの分野で課題になっている。東芝キヤリアは、ヒートポンプの基幹技術であるロータリーコンプレッサやインバータのさらなる高効率化を図るなどして、産業界のニーズに応えていく。

企業情報
アンデックス株式会社
  • ●設 立:1971年9月
  • ●資本金:1億円
  • ●本 社:〒722-0051 広島県尾道市東尾道15-29
  • ●事業内容:塗装関連設備事業、情報通信事業、OAサポート事業、
          スポーツサイクル事業、クリーンシステム事業
  • ●URL:http://www.andex.co.jp/
アンデックス株式会社の外観写真

自動車修理業界向け塗装設備において国内有数のシェアを誇る。近年は、航空機、鉄道車輛、大型建機などを対象にした塗装設備も展開。社内ベンチャーにも積極的で、社員の声から生まれたスポーツ自転車事業(「凪スピード」ブランド)にも取り組んでいる。中小・中堅企業群を対象にしたスタンダード&プアーズ社の日本SME格付けで、最上位にあたる「aaa」を8期連続で取得している。

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