サノフィ株式会社メディカルルームの取り組み

 社員が「がんと共に働く」ために、企業ではどんな制度をつくったり、運用面での工夫をしているのでしょうか。企業サイドからの「がんと就労」に対する取り組み事例として、今回は東京都がんと仕事の両立優良賞受賞企業であるサノフィ株式会社のメディカルルームの取り組みを紹介します。サノフィのメディカルルームは学校で言う保健室のようなところで、社員の健康管理を行います。東京本社には統括産業医1名、看護師2名、川越工場に保健師1名が在籍している他、日本全国の各エリア(北海道・東北・関東・東京・川越・名古屋・京滋・大阪・広島・九州)の産業医10名とも連携し、国内従業員2,650名の健康管理に加え、健康問題で休業や復職の際に産業医や看護師が健康相談としてサポートしています。

メディカルルームは健康保険組合と連携の下、以下の活動を行っています。
健康増進活動:特定保健指導、禁煙キャンペーン、ウォーキング キャンペーン、糖尿病治療サポート、生活習慣改善プログラム
健康相談:産業医面談、健康相談、女性の健康サポート
予防活動:歯科検診、予防接種
健康管理:健康診断・人間ドック、健診結果のフォロー、こころの健康診断実施、EAPとの連携

サノフィ株式会社の制度と運用など全体としての取り組みについては、[ヒューマンキャピタル2015・セミナー「『がんと就労』に必要な体制づくり 〜東京都がんと仕事の両立優良賞受賞企業、サノフィの事例から学ぶ」を開催]に詳しく報告されていますので、あわせてご覧ください

基本情報

取材先:サノフィ・アベンティス健康保険組合 瀬戸亜矢子さん(メディカルルーム勤務・看護師)
対象企業:サノフィ株式会社(医薬品製造販売、国内従業員数約2650名)
健康保険:一企業運営の健康保険組合(サノフィ・アベンティス健康保険組合)

メディカルルームの対応と工夫

・傾聴を心がけ、本人の意思を最大限重視する。

・本人の了解の下、主治医、上司、担当人事などと情報を共有して、統一したサポートを行えるようにする。

取り組み

本人の希望を尊重しながら、無理のない働き方ができるようにサポート

 社員ががんに罹患したことが、メディカルルームに逐一報告されるわけではない。病気で1週間以上の休みをとる場合には診断書の提出をお願いしているため、その時点でがんの罹患を把握し、サポートを希望される方へ働きかけている。がんの治療も進歩しているため、外来手術で治療が終了し、普段通り働き続ける方もおり、診断書がでないケースもある。がんによって長期治療を必要とし、体への負担が大きく、メディカルルームからのフォローが必要なケースは年間1、2名になる。

 どのようにサポートするかは、その人の仕事の環境、日常生活、本人の気持ちなどにより、柔軟に変えている。「体調の変化や仕事への影響の不安」「がんを受け止められない」「治療で休むことでの収入減が心配」など、本人の困りごとは多岐にわたる。メディカルルームでは、本人の体調を確認して、意思を傾聴し、本人の希望を尊重しながら無理のない働き方ができるようにサポートする。

 個人情報の取り扱いについては、誰にどのように開示するか、本人の希望を最大限尊重する。ただし、本人は開示を希望しない場合でも、上司や関係者の一部には開示したほうが長期的に働きやすくなると思われるケースでは、そのようにアドバイスすることはある。その場合も、開示を説得するのではなく、本人がその必要性を理解するまで寄り添うよう心掛けている。そして、本人の了解を得た上で、適宜上司や担当人事と情報交換をしながら、関係者が統一したサポートをできるよう配慮する。

 ケースによっては、就業と治療を両立させるために、ある程度の治療状況を産業医が把握する必要がある。その際は、産業医から主治医へ「情報提供依頼書」(ひな形参照)を本人同意の下に主治医へ送付し、情報を得るようにしている。

厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を元に、メディカルルームが作成

 治療中は、定期的に産業医が面談して、体調を確認する。また、本人同意の下、現在の状況について、上司や担当人事と情報を共有する。体調不良の際は、現在の体調を優先し、就業制限を検討することもある。就業制限は、例えば「出張・残業はしない」「実際の勤務時間短縮」などを産業医が検討し、「就業に関する意見書」(ひな形参照)としてまとめて、上司と担当人事へ提出する。これは、がんだけではなく、他のフィジカルまたはメンタル疾患の場合も同じだ。

メディカルルームはカフェと同じ階にあり、訪れやすい環境

 メディカルルームでは産業医のスケジュールを公開して、電話やメールで面談の予約が取れるようにしているが、予約をとらずに、ふらりと訪れる人も少なくない。本社のメディカルルームは、社内のカフェと同じ階にあり、ドアを開けて入ったら、中にいることは外の人にはわからない。気軽に訪れやすい環境だと思う。

 社員ひとりひとりにカルテがあるが、個々の医療情報はスタッフしか入れない部屋に保管してある。本人の同意なく、産業保健スタッフ以外の関係者と医療情報を共有したりはしない。

 サノフィでは、失効した有給休暇を積立てて病気のときなどに利用できるラ・メゾン休暇、病気休業しても一定期間所得を保障するGLTD(長期所得保障)、在宅勤務制度など、病気になった社員をサポートするさまざまな制度がある。病気で休業が必要になったときにどういう制度が使えるかという情報は、入社時のオリエンテーションで伝えられている。また、情報をしおりにまとめたものをメディカルルームに置いてある。また、インフォメーションデスクという社員用サービスがあり、社内で何か困ったことがあったときに電話すると、問い合わせ先を教えてくれる。病気関連の情報にも対応している。

 また、サノフィでは外部業者とEAP(Employee Assistance Program)契約を結んでいて、社員はがんや健康問題に限らず、さまざまなことを相談できる。健康問題での相談が何件といった報告は得ているものの、それ以上の詳細な情報は会社側にはわからない仕組みになっている。

サノフィの取り組みから学ぶこと

・産業医をはじめとするメディカルルームスタッフが主治医、上司、担当人事らとの連携を取り持つことで、医療情報の提供や業務軽減の配慮がスムーズに行われやすい。

・メディカルルームを気軽に訪れやすい環境がある。

NCC高橋部長からのコメント

サノフィ社は、ラ・メゾン休暇をはじめとした支援体制の整備や、情報提供依頼書を用いた主治医とのやりとりなど、大企業らしい多角的な支援のしくみを整えています。それに加えて、普段から社内で産業保健スタッフの存在感があり、社員との距離が近いことが印象的でした。支援のしくみの運用場面では、メディカルルームのスタッフが関係者間のコミュニケーションの要となり、個別性の高い本人の困りごとや希望に耳を傾け、統一のとれた対応を実現していたことに気づかされます。

キーワード

社内への情報開示、産業医、関係者間の情報共有

事例紹介

「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」では、がんと共に働く事例をご紹介してまいります。

企業レポート

「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」で紹介した、企業の「がんと就労」事例です。

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