生活協同組合コープみらいの取り組み

基本情報

取材先:生活協同組合コープみらい 人事教育 大山克己さん/生活協同組合連合会コープネット事業連合 総務部 労働安全衛生課(健康管理センター)担当主任 看護師 深井好子さん/生活協同組合コープみらい未収金課担当主任 嶋田淳さん
対象企業:生活協同組合コープみらい(生活協同組合、職員数13753人)
健康保険:日生協健康保険組合

生活協同組合コープみらいの対応と工夫

・きめ細やかな復職支援制度を作り、柔軟に運用している。

・人事、労働安全衛生課(健康管理センター)、産業医が連携して支援し、判断するようにしている。

・普段から多数の事業所と緊密な連絡を保つことを心がけている。

・就業のしおりや研修で、制度をできるだけ周知するよう努めている。

取り組み

人を大切にする風土

 生活協同組合コープみらいは、2013年にちばコープ、さいたまコープ、コープとうきょうの3つが合併してできた。宅配、店舗等を中心に事業を行い、事業高3800億円、組合員数325万人。正規職員3000人、パート・アルバイト職員10500人が働いている。

 理念は「CO・OP ともに はぐくむ くらしと未来」、ビジョン2025(2025年の目指す姿)として「食卓を笑顔に、地域を豊かに、誰からも頼られる生協へ。」を掲げている。ビジョンを実現する4つのプログラムの1つとして、「"人に優しく"、"誇りが持てる"組織」を提唱。介護、出産、病気などの働きづらさがあっても、「知識や技能を蓄積した人材を失うのではなく、活かせる場所を提供し、役割を発揮してもらう」「障がい者も一緒に働ける場の提供」を目指している。

 また、役職員の行動指針として、「組合員のくらしと未来のために 組合員の立場にたって 『安心』と『信頼』 『挑戦と学び』 『コミュニケーションと感謝』を大切にします」を掲げている。具体的には、よい行動を見かけたら上司や同僚が「イイネ!カード」を渡すなど、コミュニケーションを図っている。

きめ細やかな復職支援制度

 人事教育は合併前から3生協とその本部機能のコープネット事業連合で合同運営を行っていて、2010年に復職支援制度を策定した。当初はメンタル不調で休職した人のための制度として始まり、その後、心疾患、けがなどにも適用を拡大した。現在は、がん患者にも適用される。

 復職支援制度は、(1)療養期、(2)リハビリ期、(3)復職準備期、(4)職場復帰の決定、(5)職場復帰の5つのステップに分けて実施する。

 療養期には、健康管理センターの看護師からときどき電話をかけるなどして、状況を把握する。リハビリ期には、外部のリワーク施設などを紹介する(メンタル不調者を想定)。復職準備期は、半日程度からの勤務で仕事を通じて訓練する。そして、復職判定会議を設けて、職場復帰の決定をする。仮復職後、1年間は本人と上司に対して人事がサポート面接を行ってフォローする。

 この中で一番重視しているのは、人事部人事課、総務部労働安全衛生課(健康管理センター)、産業医が連携して、職員の復職を支援し判断することだ。現場のことをよく知る人たちが判断するため、主治医から復職可の診断書が出ていても、仕事内容など状況によっては復職を延期したり、「残業禁止」「運転禁止」など何らかの制限を加えることがある。

 復職支援制度の元では、原則2年以内に復職する必要がある。途中で1年以上勤務すれば、また2年間利用できるが、がんの場合は、一度復職しても半年後に再発するなど、うまく当てはまらないこともある。そのため、期間が過ぎても本人の意欲が強ければ柔軟に対応することはある。また、3カ月ごとに1週間の検査入院などサイクル治療が必要な場合は、有給休暇で対応せざるを得ないが、いまのところは、ほとんどは有給休暇で対応できている。

共済互助会からの補助、雇用形態間「異動」などの様々な支援制度

 給与は、1年6カ月は健康保険の傷病手当金により66.6%が保障される。それとは別に2年間は共済互助会から補助があり、傷病手当金と合わせると1年半は90%、その後半年は約23%が保障される。リハビリ勤務は休職期間となり、給与ではなく生活見舞金が一定額支給され、傷病手当金は不支給となる。収入面はかなり厳しくなることは、今後の検討課題のひとつだ。

 今年度から、GLTD制度(団体長期障害所得補償保険)を導入した。任意加入だが、加入していると傷病手当金の支払いがなくなったあと、退職後も最長65歳まで保険金が支払われる。

 失効する有休を30日まで積立てられ、有給休暇と合わせて最長70日まで休みを取れる。

 育児や介護などで働きづらさを抱える人のために、順次、シフト運用、フレックスタイム、在宅勤務、サテライト勤務などの制度を導入してきた。これらは、がんで働きづらくなった場合でも、柔軟に運用している。

 雇用形態間の異動制度があり、正規職員からいったんパート職員になっても、また正規職員に復帰できる。心疾患では、正規職員からいったんパート職員になり、その後、正規職員に復帰した例がある。

 これまで紹介した制度はすべて正規職員のものだが、産業医面接は、必要な場合はパート職員にも実施している。

がん罹患後の復職事例

 がんを罹患後、この復職支援制度を使って復職した職員は、制度制定後の6年間で17人。その後、定年退職者3人、復職後に自己都合で退職した者3人、別の理由で休職した者1人、現在就労中の者10人となっている。

 現在55歳の嶋田淳さんは、2012年に腎盂がんが見つかった。手術を受けて1カ月ほど休職した後に復職したが、その後3カ月から半年間隔で、転移・再発したり、新たに肺がんが発見されたりした。2014年までの3年間で8回手術をして、右の腎臓と右の肺の部分切除を行い、膀胱も全部で6回手術をした。現在は最後の手術から1年半経過し、定期的な通院による経過観察中だ。

 嶋田さんは、宅配センターで管理職などを務めた後、未収金課に異動になった。がんが見つかったのは、異動になって1年後だった。

 未収金課は、一日中クルマで外回りをするような体力仕事だ。嶋田さんは、体力には非常に自信があったが、さすがに手術を重ねたあとは、以前よりも仕事のパフォーマンスが落ちたと思った。弱音は吐かない主義だが、仕事を続けるうちに、あまりがまんをするとかえってよくないとわかり、徐々に周囲に現在の体調などを話すようになった。いまでも周りに「なんでもできますよ」とは話しているが、うまく気を遣ってくれる周囲の人たちには感謝している。

 休職中は、連絡をしないと職場から離れてしまうという不安があって、上司と健康管理センターの深井さんには、自分から頻繁に連絡をした。経済面の不安もあって、「すぐに復帰させてください」とアピールを続けたが、あとから考えると、少しあせりすぎだったかもしれない。

 その他の事例では、2015年度に健康診断で胃がんが発見された後、手術を受けて4カ月休職し、その後2カ月弱のリハビリ訓練を経て、復職した人もいる。この人は、罹患時は店長だったが、復職時には異動して、現在は副店長として勤務している。体力的には、趣味でハーフマラソン大会に出場するくらいに回復している。当初、本人はリハビリ訓練など必要ないと主張していたが、「後から考えると指示に従ってよかった」というコメントをもらっている。

健康管理センターの役割

 健康管理センターは、埼玉、千葉、東京の3つのエリアで、嘱託産業医8名、保健師・看護師6名の体制だ。ただし、フルタイム勤務は深井さん含め3名で、それ以外の職員は、パート、育児中、などで短時間勤務だ。そのため、エリアごとの担当はあるが、ひとりですべてをこなすわけではない。健康管理センター内では、毎朝メールや電話でやりとりをして、情報を共有するようにしている。

 健康管理センターの業務は、健康診断の実施、職場巡視、健康相談など、職員の健康管理全般を担う。

 コープみらいには、コープデリ75センター、店舗131店があり、事業所の数が非常に多い。1万5千人の職員の状況を把握するためにはキーマンが重要と考えて、深井さんは事業所長とのコミュニケーションを重点的に行っている。メールではニュアンスが伝わりにくいと感じるため、連絡は基本的に電話で行う。

 職員の健康の記録は、これまでアナログ管理だったが、今年、新しいシステムができて、データバンク化したところだ。まだ紙のままの情報も多いが、今後、一元管理がしやすくなっていくだろう。

 その他の活動として、現在は、卒煙の取り組みを行っている。女性の喫煙率が世間一般より高いことが判明し、看護師が禁煙コンシェルジュの資格を取得したり、オリジナルの禁煙日記を作成して渡したりしている。国際禁煙デーから1カ月間のキャンペーンを行っていて、禁煙チャレンジャーが増加しているのは、喜ばしい。

周知活動

 せっかく制度があっても、知らなくては利用できない。制度の周知活動は重要だ。

 制度については、「就業のしおり」に記載されていて、毎年全職員に配布している。また、新人研修やマネージャー研修で、随時案内している。ただ、まだまだ情報の浸透は不十分だと感じている。

 「就業のしおり」は、イントラネットで、誰でもいつでも読めるようにもしている。また、がんを患ったため直接体験談を聞きたいという人には、本人の了解を得て、健康管理センターの職員立ち会いの下で、話を聞く場を設けることがある。自分の体験を話すことで、患者の側も成長につながったり、人の役に立てる喜びを感じるメリットがあるようだ。最近では、コープみらいの中でがん患者の会を作りたいという話がでてきている。

 昨年9月に、復職支援制度を利用した職員とその事業所の所長にアンケートを行った。事業所長では、「復職支援制度があってよかった」という回答が多かったが、職員は、「完全復職できるかどうか不安があった」「再発の不安があった」等の回答が6割程度あった。

 がんの治療成績が大きく改善していること、治療しながら仕事と両立できることを、まだまだ知らない職員が多い。管理者の理解と支援を広めて行くことが、これからの課題だ。また、正規職員以外にも制度の運用を広げていきたいが、人数が多いため、一度に広げることは難しい。事例をひとつずつ積み上げながら進めていきたい。

生活協同組合コープみらいの取り組みについては、ヒューマンキャピタル2016・セミナーにて取り上げられました。そちらのレポートも併せてご覧ください

コープみらいの取り組みから学ぶこと

・普段からのきめ細やかな対応で、人事と健康管理センターが、職員に味方と感じてもらっている。

・支援制度を作って終わりではなく、柔軟に対応したり、状況に合わせて進化させることが重要。

・現場を知る人たちが復職を判断するため、主治医から復職可の診断書が出ていても、状況によっては復職を延期したり、何らかの制限を加えることがある。

NCC高橋部長からのコメント

コープみらいでは、大企業ならではの充実した支援制度が整い、制度周知の工夫もあります。しかし一番のポイントは、人事と健康管理センターが協同して、きわめて多数の事業所との間に顔の見える関係性を築いていることではないでしょうか。現場に足を運び、丁寧なコミュニケーションを積み重ね、粘り腰で復職プログラムを組んでいくのは力仕事ですが、それが実現されていることに驚きました。人事と産保スタッフが現場にリスペクトを持ち、現場と一緒に両立支援をしようとしているからこそ、病気になったご本人からも職場スタッフからも「味方」として頼ってもらえるのでしょう。行間を埋めるような細やかさが印象的でした。

キーワード

産業医、関係者間の情報共有、GLTD(団体長期障害所得補償保険)、雇用形態の変更、傷病手当金、企業風土、フレックスタイム制、サテライト勤務

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