アフラックの取り組み

取材先:アフラック(American Family Life Assurance Company of Columbus)
人事部健康管理室室長 金室麗子さん
同 人事部人事課長 伊藤道博さん
同 広報部参与・広報課長 飯田吉宣さん
同 総務部ファシリティマネジメント課 課長代理 井上想さん
対象企業:アフラック(生命保険業、従業員数4734人(2017年3月末))

・みんなががんを自分事と考えるように、社内への啓発活動に努めている。

・働きながら治療を行いやすくするために、時間と場所の制約を柔軟に扱う制度を整えた。

・上司、産業医、人事が緊密な連携をとりながら患者をサポートし、特に「上司を孤独にしない」ように努めている。

みんなが、がんを自分事と思えば、両立しやすい風土ができる

 アフラックは1974年創業で、日本ではじめてがん保険を販売した生命保険会社だ。「『生きる』を創る。」をブランドコンセプトに、医療保険とがん保険を中心にビジネスを展開している。従業員の平均年齢は38歳。非常勤1名を含む4人の産業医が健康管理室に所属し、社員の健康管理にあたっている。

 従業員の平均年齢があがるに従ってがんの罹患者も増え、従業員数は男女ほぼ同数だが、健康保険のレセプトデータによると、がん罹患者数では女性は男性の約2倍になる。女性の約6割は乳がんと子宮がんだ。これは勤労世代の一般的ながんの実態に近く、一般社会で起こっていることが社内でも起こっている。

 アフラックは、東京都の「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」において、平成28(2016)年度大企業部門優良賞を受賞した。しかし、実はがんと就労の両立にフォーカスしたわけでなく、働き方改革の一環としてさまざまな制度を整えてきたなかでの結果だった。

 がん保険のパイオニアとして、アフラックは、がんについて啓発活動を積極的に行ってきた。2004年にがんを身近に感じてもらうためのイベント「がんを知る展」を開始し、全国101カ所で開催した。2010年には広報部の中にがんに対する啓発活動を専門的に行うがん対策推進室を設置し、全国47都道府県とがん対策推進に関する提携を行った。

 社外への啓発活動が一定の成果を上げる中、社内では、一部を除いて社員が意外にがんのをことを知らないことが判明。そこで、がん対策推進室、健康管理室、人事部が協力し、社内向けの啓発活動を開始した。

 社員向けの啓発活動では、がんは自分に関係があるもの(自分事)という認識を広めるために、まず、がん検診の認知度を高め、受診率を上げることに取り組んだ。2010年からe-Learningによる教育を開始。「五大がん検診の内容を知っていますか」という質問への正答率は当初5割程度だったのが、毎年e-Learningを繰り返すうちに8割以上の認識率を得られるようになった。

 社員のがん検診受診率は2012年には67.0%だった。そこで、e-Learningで認識率を高めるとともに、費用を会社が負担したり、定期検診と同時にがん検診を受けられるようにしたりした結果、2016年には91.7%にまで上がった。

気持ちの浮き沈みの変化(太田さん提供)

時間と場所の制約を柔軟にする制度

 がんに罹った社員のための制度は、2つに分ける必要があると考える。ひとつは会社を休んで治療に専念するための制度で、もうひとつは働きながら治療を行うための制度だ。

 治療に専念するための制度には、年次有給休暇、ストック休暇、傷病欠勤、療養休職の4つがあり、取得するときには基本的にはこの順番に使っていく。先に上げたものほど、給与面でのデメリットが少ないからだ。

 年次有給休暇は最大40日。ストック休暇は使い切れなかった有給休暇を最大60日間積み立てられて、病気、子育て、または5年目、10年目などの勤続年数の区切りに、休みを取れる制度だ。有給休暇なので、どちらも給料は100%保証される。

 傷病欠勤は勤続年数に応じて取得できる期間が異なり、勤続10年以上で1年間。その間は給料の95%が支給される。療養休職の取得期間も勤続年数に応じて異なり、勤続10年で1年間。療養休職では給料は支給されず、健康保険から傷病手当金(給料の約2/3)が支払われる。

 治療に専念するための制度は創業当初から80年代にかけ、早い時期に導入された。ただ、細かい改善はその後も行っている。

 働きながら治療を行うための制度は、治療で生じる場所と時間の制約に対していかに柔軟に対応するかが重要だ。

 場所の制約については、在宅勤務とサテライト勤務などがある。1日数時間だけ使うこともできるので、例えば午前中は有休で通院し、午後は会社への移動時間がかからないよう自宅で在宅勤務という使い方ができる。サテライト勤務は、自宅近くのオフィスを借りて仕事をする制度だ。自宅では仕事をする環境がないという人に、自宅近くの営業所で仕事をしてもらう。仕事内容など、基本的には通常勤務と同じものだ。

 時間の制約については、シフト勤務、時間給、療養短時間勤務、フレックス制度などがある。シフト勤務は勤務時間をずらすだけで、所定労働時間を働く制度だ。金銭的なデメリットはなく、ラッシュアワーの通勤を避けたりできる。時間休は、有給休暇を1時間単位で取得できる制度。例えば放射線治療を毎日行うときなどに、必要な時間だけ少しずつ有給休暇を取得できる。療養短時間勤務は、9時から5時ではなく10時から4時のように勤務時間を短くする制度。勤務時間が短くなった分は、給料が少なくなる。復職時のならし出勤や、抗がん剤治療で月のうち一定期間だけ体調不良になるときなどに利用できる。

 フレックス制度は、1カ月の所定労働時間が決まった中で、自由に就業時間を設定できる制度だ。抗がん剤治療などで体調がよくない期間は勤務時間を短くして、残りの期間で長めに働くといった使い方ができる。フレックス制度はまだテスト段階で、これから全社に拡大していくか検討中だ。

 働きながら治療を行うための制度は、2016年から2017年に始まったものが多い。本来は働き方改革の一環として、育児中や介護中など、さまざまな人が働きやすくする環境作りのために整えた。それが、結果的にがんを含む病気の人が、上手に利用している。

気持ちの浮き沈みの変化(太田さん提供)

「上司を孤独にしない」

 がん患者に対して、上司、産業医、人事部が密に連携してサポートしていくようにしている。

 治療と仕事を両立するには、上司の理解が重要だ。上司の理解がなければ、いくら制度を整えても使いにくい。また、配慮が必要なときなどに、上司に気軽に相談できる環境も大切だ。さらに、がん患者にとって、働けることが大きな喜びということがある。その場合は、上司が気を回しすぎて過度に配慮してしまうと、生きるモチベーションを損なってしまう。患者の個別性を考えながら、上司がどう向き合っていけるかがすごく大切だ。

 産業医と人事部は、上司をきちんと支援していく役割を担っている。上司を孤独にさせないことが、結果的に両立支援につながっていく。とりわけ大切なのが産業医の役割だ。産業医は、医療と会社の仕事の両方を知っている。本人に働きたい気持ちはあるが無理はできないというときには、産業医が「時間休を使ってみましょう」「在宅勤務ができないか上司と相談してみましょう」という具合に、会社の制度をどう使うかアドバイスをしたり、上司に状況を説明したりできる。

 復職するときには、本人と上司と産業医とが三者面談をして、両立支援プランを作成する。場合によっては人事が入って四者面談をすることもある。「最初は時短勤務にしましょう」「残業はしない方がいいですね」「外出は当面控えましょう」「定期的に産業医と面談しましょう」といった働き方を計画し、両立支援プランとして書類に残す。本人と上司と産業医が共通認識を得た上で仕事をしてもらうために実施している。

 人事部は、産業医と上司の連携をサポートする立場だ。人事の役割として大きいのは、本人への対応よりも、上司のホンネを聞いてあげることだと考えている。「フォローしてあげたいが、人手が足りない」といった上司の悩みを聞いて、どうしたらよいかを人事部が一緒に考える。「上司を孤独にしない」ことが大切だ。

気持ちの浮き沈みの変化(太田さん提供)

 現在、「傷病・がん就労支援ハンドブック」を作成中だ。これは、がんやその他の病気に罹ったときに使える制度や運用をまとめたものだ。これまで、病気になった人には手続きガイドや傷病ガイドを渡していたが、今回は元気な人も含めて、全社員に配布する予定だ。

 全社員に配布することで、元気なうちに、病気になっても安心して働けるという情報を広めたい。また、ハンドブックには、がんを治療中の社員に対して、周囲がどう向き合ったらいいかにも触れている。同じがんでも人によって違う、日によって体調に波がある、働くことが喜びになっていることがあるので、配慮しすぎはやさしさではないといった情報を広め、周囲の理解を深めることで、両立支援のための社内風土作りをしていきたい。

がんと仕事の両立事例

 治療をしながら仕事を続けた社員の例をいくつか紹介する。

 50代男性は、2011年に肺がんで手術と抗がん剤治療、2013年にすい臓がんで手術と抗がん剤治療を行った。最初にがんと診断されたときには札幌支店で営業職に就いていた。突然休んで迷惑をかけたという思いがあったため、代理店の人たちへの研修として、がんにかかってどの程度お金がかかったかなど体験談を話した。すると、がん保険を勧める立場から非常に参考になったと反響が大きく、全国各地で同様の研修をすることになった。現在は仕事として研修を行っていて、いままで延べ300回、12000人に話をしている。

 講演をすると、「実は自分もがんです」と話しかけられることが多い。お互いに元気で働いていることで、勇気をもらえるそうだ。誰かの役に立ち元気を与えられることが、生きるモチベーションになるということだ。

 20代の男性は、20歳の大学時代に脳腫瘍(悪性リンパ腫)を発症し、手術と抗がん剤治療の後遺症として、てんかん発作のリスクを抱えるようになった。2008年に当社に内定した後、本人から事情を打ち明けられた。人事としては、再発しないか、休みがちにならないか、転勤は大丈夫か、仕事上に制約はないかなどの不安が生じて、かなり悩んだ。当時の主治医を人事担当者が訪問して質問すると、「働くことにまったく問題はない。がん保険の会社が何を言う」と叱られた。また、再発のリスクは小さく、薬を飲んでいれば適切にコントロールできると説明されて、安心して採用できた。

 入社前に配属先の上司を集めて、倒れたときの対処法などを、産業医と人事担当者を交えて打ち合わせた。最初は環境変化のためか、何度か倒れることがあったが、適切に対処できた。いまは転勤も経験して、元気に活躍している。社内結婚をして、子どももできた。

  その他、第1回意見交換会では、乳がんに罹患した40代女性の事例が本人から詳しく発表されたので、そちらのレポートもご参照いただきたい。

今後の課題

 アフラックは、今後もアフラックらしいがん就労に取り組んでいきたいと考えている。

 がんには個別性があるので、人事がつくった制度を一方的に勧めるのではなく、罹患者に直接話を聞いて、制度設計や運用体制に活かしたい。

 それを実現するためにも、罹患者をつなぐ社内コミュニティを作りたい。罹患者同士で励まし合い支え合うことができるし、会社も罹患者にアクセスしやすくなる。そうすれば、罹患者の声を集めやすくなる。また、がん保険の商品開発や、社内外でのがんの啓発活動に役立つかもしれない。罹患者同士は誰ががんか知らないので、最初は人事や産業医が間に入って立ちあげる必要があるだろう。

 社内外への情報発信をもっと実施していきたいとも考えている。社内に向けたがん就労支援のメッセージもまだ不足している。また、がん保険の会社として、社外のがん就労支援のお手伝いができればと思う。

アフラックの取り組みから学ぶこと

・制度を整えるだけではなく、声の上げやすさなど、治療をしながらでも働きやすい社内風土作りが重要。

・社員全員が、がんを自分事として考えるようになれば、罹患者は声を上げやすく、協力を得やすくなる。

・上司は、サポートの必要性はわかっても、仕事を回さなくてはならない。上司を孤独にせず、人事や産業医が上司を支えることで、両立がうまくいく。

アフラック社のとりくみから、支援制度と運用は環境整備の両輪であることを改めて実感します。制度については、仕事を休む場合と働きながら治療する場合が意識され、「がん」以外の働きにくさに対しても使える汎用性を持っています。運用については、産業医と人事が連携して「上司を孤独にしない」ことに注力していることが特に印象的です。治療を受ける従業員の相談相手は上司であることが多く、上司への支援は結果的に本人への適切な対応や職場の納得にも結び付くでしょう。制度周知の工夫や罹患者の社内コミュニティのアイデアなども含めて、多くの会社が参考にできるのではないでしょうか。

在宅勤務、サテライト勤務、時短勤務、時差出勤、時間単位の有給休暇取得、フレックスタイム制、産業医、関係者間の情報共有、職場のコミュニケーション、企業風土

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