「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」2015年度第2回意見交換会(中小企業編)が、2月6日に国立がん研究センターにて開催されました。がん患者、家族、勤務先関係者、医療従事者、社会保険労務士、行政など、さまざまな立場の約50人が参加しました。

 今回は、総合建設業の株式会社松下産業の取り組みが発表されました。松下産業は、「平成26年度東京都がん患者の治療と仕事の両立への優良な取り組みを行う企業表彰」の中小企業部門において優良賞を受賞した企業です。受賞理由となったがんになっても働きやすい制度や社風の紹介があり、それを元にした活発な意見交換が行われました。その詳細をご報告します。

第2回意見交換会登壇者

勢井 啓介氏(せい・けいすけ)(座長)

森田技研工業株式会社 代表取締役社長。NPO法人AWAがん対策募金理事長。ガンフレンド代表(患者会)。
がん対策推進協議会患者委員。徳島県がん診療連携協議会委員。2003年に森田技研工業株式会社を起業。その年にS状結腸がん(ステージ4)に罹患、地元の病院で1回手術(2003年)、その後に国立がん研究センターで2回手術(2004年・2005年)したことがきっかけとなり、ガンフレンドを立ち上げる。患者会での活動を通して、患者支援を目的としたNPO法人AWAがん対策募金を立ち上げる。がん検診率向上プロジェクトとしては、出前講座+大切な方へのメッセージカードを県内の小・中・高の学生を対象に行っている。就労支援としては、患者会で職を失っても仕事をしたいという方々の声があり何かできないかということで、無農薬での小松菜栽培にも取り組んでいる。

松下 和正氏(まつした・かずまさ)(アドバイザリー)

総合建設業 株式会社松下産業代表取締役社長。1956年東京都文京区生れ。1982年に松下産業に入社。近江商人の「三方よし」を発展させた「四方よし(顧客/従業員/世間(地域・環境)/協力会社)」が同社の経営方針。2012年文京区ワーク・ライフ・バランス推進企業として認定を受ける。2013年新設した「人」に関わるすべてをワンストップで行うヒューマンリソースセンター主導で、がんに罹患した従業員の就業と治療の両立を実現する仕組みを整備。「建築は目的でなく手段、お客様の真の目的を実現する、コンシェルジュのような会社になろう」がモットー。谷根千等の地域保存、活性化、建築、土地活用のセカンドオピニオンにも注力。本郷法人会、東京建設業協会、東京商工会議所で要職を務めるほか、国際ロータリー第2580地区青少年奉仕委員長として青少年の育成・国際親善にも力を入れている。

齋藤 朋子氏(さいとう・ともこ)(アドバイザリー)

株式会社松下産業ヒューマンリソースセンター課長。1968年生れ。1991年住友商事㈱入社。鉄鋼部門業務部、役員秘書、自動車用鋼管の国内営業事務を経験し、2007年、松下産業入社。総務部にて人事業務を担当。2013年ヒューマンリソースセンターへ異動。特定社会保険労務士、JCDA認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)、AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引主任者。

若尾 文彦(わかお・ふみひこ)

国立がん研究センター がん対策情報センター センター長。1986年横浜市立大学医学部卒業。国立がんセンター病院放射線診断部医長などを経て2012年より現職。「がん情報サービス」や「がんの冊子」などを通して、がんの情報の発信と普及に取り組んでいる。

高橋 都(たかはし・みやこ)

国立がん研究センター がん対策情報センター がんサバイバーシップ支援部長。一般内科医として勤務後、QOLやサバイバーシップに関する研究に従事。罹患後の暮らし全般、特に本人や家族の就労問題に取り組んでいる。厚生労働省「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」構成員。

池山 晴人(いけやま・はると)

国立がん研究センター がん対策情報センター 医療情報サービス室長。社会福祉士・精神保健福祉士として病院、診療所で患者・家族の相談支援に従事したのち現職。がん相談支援センターに配属されるがん専門相談員を対象とした研修の企画・運営等に取り組んでいる。

山岡 鉄也(事務局・司会)

2010年7月より肺腺がん(ステージ4)に罹患し、現在も治療の傍ら日経BP社に勤務。2012年4月より国立がん研究センターの患者・市民パネルメンバー。

 最初に、国立がん研究センターの若尾文彦がん対策情報センター長から、「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」プロジェクトの目的や、国のがん対策の現状について説明がありました。

 「平成24年に策定された第2期がん対策推進基本計画では、働く世代と小児のがん対策の充実が重点課題として追加された。そこで、働く世代への情報提供として、ビジネスパーソンの目に触れやすい日経ビジネスオンラインに『がんと共に働く』を掲載している。

 第2期がん対策基本計画の中間評価で、このままでは目標達成が困難だとわかり、内閣総理大臣の指示で厚生労働省は『がん対策加速化プラン』の作成を進めている。加速化プランでは、がんの予防推進(早期発見を含む)、治療研究の推進、がんとの共生という3本の柱がある。がんとの共生では、第1に就労支援があり、企業向けのガイドライン作成やハローワークとの連携があげられている。

 就労支援を加速化するためにも、事例は非常に重要だ。今日は松下産業さんのとてもいい取り組みを聞いて、みなさんのご意見も伺いたい」とのことでした。

 次に森田技研工業株式会社の社長で、座長を務める勢井啓介氏から挨拶がありました。

 「わが社は精密機械の製作会社だが、がん患者の就労支援のために、一昨年から小松菜の有機栽培に取り組んでいる。大規模農園からボランティアで指導を受けて、やっと収益が上がるようになってきた。今後、さらに手を広げていきたい。あるがん患者さんは、『収入は少なくても、農園に来ると人との関わりがあり、生きる実感が湧く』と喜んでくれている。いったん辞めると再就職は難しいので、患者会では、まずは仕事を辞めないように勧めている。今日は、そのためにはどうしたらいいかを松下産業さんの事例から勉強したい」とのことでした。

当日会場では、松下産業でがんと就労を両立されている立川孝雄さんからビデオでメッセージが届けられました。立川さんの事例のご紹介はこちら

 次に株式会社松下産業ヒューマンリソースセンターの齋藤朋子課長から、松下産業の取り組みについて発表があり、人に関する相談をすべてワンストップで取り扱うヒューマンリソースセンターや、脳腫瘍を治療しながら働き続ける立川孝雄さんの事例について紹介されました。これについては別の記事(企業レポート2 株式会社松下産業の取り組み)に詳しくまとめていますので、そちらを参照してください。

 その後、松下産業の事例を元に、テーマ別に意見交換が行われました。

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 医療者とのコミュニケーションについて問われて、齋藤課長は「がんと共に働く方は、日を追うごとに主治医からいろいろな制限がでてくるので配慮が必要になる。事例で発表した立川から『車の運転ができなくなった』と報告があったときは、建設現場で足場に上ることは可能か主治医に聞いてほしいと伝えた。この場合は本人に話したが、本人とコミュニケーションがとれない場合は、家族に頼むこともある」と説明しました。

 松下産業の松下和正社長からは、「立川の場合は、非常によい医療機関に巡り会えて、理想的な展開だった。少し前までは、例えばセカンドオピニオンを受けようと思っても相談できるところが見つからず、会社の方で情報を求めてあちこち聞いて回ったこともある。最近は、がん相談支援センターなど信頼できる相談先が増えてきた。また、わが社は産業医に非常に恵まれている。産業医が自ら建設現場に入って、どういう仕事をしているかを見てくれたりする。そして、主治医との間に入り、『足場を上るとはこういうこと』と説明してくれる」と説明しました。

 国立がん研究センターの高橋都がんサバイバーシップ支援部長から、「医療者と会社がコミュニケーションをとるときには、メールや電話などいろいろ方法があると思うが、どのようなツールを使うのか」問われて、松下社長から「コミュニケーションが必要になるケースはメンタルヘルスが多いが、その場合は文書が多い。相手によっては電話や診療の際に同行することもある。立川の場合は、主治医に恵まれたので、ほとんど必要なかった。5年ほど前に他の社員ががんになったときには、うまくコミュニケーションがとれなくて、いろいろな病院に問い合わせたりしたが、最近はトラブルはほとんどなくなってきている」と回答がありました。

 高橋部長から「立川さんの場合はあまり困らなかったのは、立川さん自身や家族がコミュニケーションが上手だったからか」という問いに、松下社長は「その通りだ。ある現場の所長が脳梗塞で倒れたときに、立川の直属の部下になって、自分の技術を活かしながら安全指導や若手の指導を行っていた。そこで、その社員は必要性を感じて産業カウンセラーに挑戦し、筆記が受かって、最後の面接の1週間前に、2度目の脳梗塞で倒れて四肢麻痺になってしまったことがあった。この社員の闘病の様子については、立川を含めて多くの社員がグループウェアで共有していた。他にも、がんになった社員の情報も共有していた。そのため立川も他の社員らも、医療機関や病気について、いろいろ知ることがあり、それもよかったのかなと思う」と説明しました。

 意見を聞かれて、勢井座長は「医療者とのコミュニケーションについて、患者会で相談を受けることがある。ある患者から、『手術だけ都会の大病院で行い、地元の病院で抗がん剤治療をしたいが、主治医がいい顔をしない』と相談を受け、本人と一緒に私が病院の院長にお願いをしに行って、希望を実現したことがある。患者自身が自分が選んだ道を貫いたのがよかったと思う」と答えました。

 病院とコミュニケーションがうまくいかなかった例として、松下社長は「自分の父がある有名大学病院で亡くなった。あとで、その診療科では対応できない病状なのに、セクショナリズムから外部と連携しないで治療が進まなかったと知り、憤っている。いまはがん相談支援センターなどで、素人でも多くの情報を得られる。しっかりと情報を得て、惑わされないようにするのが大切だと思う」と話しました。

 若尾センター長から、「医療の世界では、まだセクショナリズムが残ってしまっているところもあるが、いまはチーム医療で、多職種で多様な専門家が連携して治療にあたるように変わりつつある。がん相談支援センターはその一員だ。相談支援センターは中立な立場をとっているので、医療者とうまくいかないと感じたら相談支援センターに相談して、場合によってはセカンドオピニオンを受けたり、別の医療機関に変えることも考えていただくとよい」と発言がありました。

 ここで、会場から意見が募られました。

 自身も脳腫瘍で治療しながら復職した男性から、「松下産業で紹介があったヒューマンリソースセンターを作ったきっかけは何か」と問われて、松下社長は「メンタル面でまいってしまう人を支えたい、また、確定拠出年金を有効活用してもらいたいといった想いがあった。建設技術者として、家庭人として、人間として、社員にやりがいがある幸せな人生を送ってもらうにはどうしたらいいかを考えると、人事、医療、社会保障と分かれるのではなく、ワンストップで支えるセクションが必要だと考え、ヒューマンリソースセンターを作った。また、文京区より2012年ワーク・ライフ・バランス推進企業として認定を受けたことにより、対外的・社内的にもしっかりと体制を整えていこうという思いがあったと回答がありました。

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 社会保険労務士(社労士)の活用について問われて、松下社長は「社内に複数の社労士がいることもあり、当初は外部の社労士との契約は考えていなかった。パワハラやセクハラのセミナー講師として出会った社労士がとてもよい方で、メンタル面のことなどを相談しているうちに顧問に迎えることにした。そうしたら、病気の社員の就労についても内部の人間にはない専門知識があって、非常に役立っていただいている。立川の病状に合わせて規程を改定していく際に、法律違反になっていないか、元気な社員を逆に差別することにならないかといったことを社労士に相談して、お墨付きを得るようにしている」と答えました。

 勢井座長からは、「わが社は会社として社労士とのつきあいはないが、患者会では、がん相談支援センターの社労士への相談を勧めている。残念ながら松下産業のようにしっかり対応している企業はひとにぎりだが、もっと情報発信して、そのひとにぎりを日本の企業風土にしていければいいと思う」と発言しました。

 がん相談支援センターの社労士について、最近の動向を問われて国立がん研究センターの池山晴人医療情報サービス室長は、「いま日本には400余りのがん診療連携拠点病院があり、その中には必ずがん相談支援センターがある。残念ながらまだ多くはないが、社労士ががん相談支援センターに派遣されて相談を受けるケースが増えてきている。窓口として就労に関わる専門的な相談を受けられるようになっていくと思う」と回答しました。

 高橋部長からは「3年ほど前から、がん相談支援センターで社労士が相談を受けるときに、がん診療連携拠点病院の機能強化費を使ってよいことになったため、急速に社労士との連携が進んでいる。一方で、社労士が普段活動している企業社会と病院には文化の違いがあり、連携の初期には社労士と医療者の双方がとまどう場面もある。そこで、そのギャップを埋められるようにと『がん専門相談員のための社会保険労務士との連携のヒント集』を作成した。ウェブ上でも配布しているので、ぜひ利用していただきたい」と紹介がありました。

 ここで会場から意見が募集されました。がん相談支援センターで相談に乗っているという男性社労士から、「松下産業で社労士がうまく活用できているポイントは、ヒューマンリソースセンターの存在ではないか。人事、医療保険、社会保険など、部門がいろいろ分かれている企業では、会社側と社労士の連携が難しいと感じる。また、中小企業では直接社長とやりとりをすることが多いが、社長の理解が進んでいないとやはり難しい」と意見を述べました。

 若尾センター長は、「他の社員への配慮が非常に大切だ。あまり患者を優遇すると、他の社員が不公平感を持ち、モチベーションの低下につながると思う」と意見を述べました。さらに「勢井座長の地元の徳島県立中央病院では、社労士が病院スタッフと共に『がんの治療をしながら仕事を続けるとき』というパンフレットを作成した。それが非常によくできている。『がんと共に働く』のリンク集にも徳島の事例として紹介しているので、ぜひ参照してほしい」と紹介がありました。

 また、報道機関の女性から「がん相談支援センターでは、社労士には具体的にどんな相談をできるのか。イメージしにくいので教えてほしい」という問いに、池山室長は「医療機関のスタッフは、例えば会社員なら有休はあるだろうとは思っても、それがどのくらいとれるのか、どのような単位でとれるのかはわからない。そういうときに、就業規則などを調べて個々の事例にも対応できる社労士は頼りになる。また、私は社会福祉士なので社会資源についてある程度の知識はあるが、非常に細かいことになるとサポートできないことがある。そういうときは社労士の力を全面的に借りてサポートしてもらった経験がある」と回答しました。

 また、先ほど意見を述べた会場の社労士から、「私は会社に対してどのように病状を伝えるかなど、会社とのコミュニケーション方法をアドバイスするように心掛けている」と回答がありました。

 高橋部長からは、「すでに社労士との連携を始めているソーシャルワーカーにメリットを質問したところ、何点か挙がった。まず、制度は頻繁に変るが、社労士は最新情報を常にフォローしているので変更点を教えてもらえること。それから、いい意味でビジネスライクのコミュニケーションがとれること。医療者は患者に頼まれるとノーと言いにくく、例えば、条件からみて障害年金の給付はきわめて難しいと思っても、申請を引き受けてしまうことがある。その点、社労士は『これは無理でしょう』とはっきりと言ってくれるし、専門家の意見なので患者も納得しやすいという声もあった。また、先ほど社労士の方から発言があったように、会社とのコミュニケーションにおいて、会社はどういう論理で考えるのかといったアドバイスは、まさに社労士に聞けるといいと思う」と発言がありました。

 若尾センター長から、「がん相談支援センターで社労士に相談できるといっても、常駐ではない。まずは最寄りのがん相談支援センターに相談してもらえば、社労士でなければ対応が難しいときには、『あの病院には毎月第○□曜日に社労士が来る』のように紹介してくれると思う」と説明がありました。

 会場の大腸がんステージ4で治療中という女性から、「抗がん剤治療を続けて1年半傷病手当金をもらっていたが、ちょうど切れたところだ。相談支援センターで社会保険労務士に相談する機会があり、『障害年金の制度があるが、手続きが非常に難しく、手続き代行には10万円くらいかかる』と聞いた。経済的にかなり厳しい状態で、それだけ費用がかかると敷居が高いと感じた」と発言がありました。

 若尾センター長から、「がん相談支援センターによって対応が違うと思うが、社労士が手続き方法まで詳しく教えてくれるところもあれば、ここから先は個人契約でというところがあるということと思われる。ただ、これは大きな問題なので、対応方法を検討させていただきたい」と回答しました。

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商工会議所と法人会

 中小企業が使えるリソースについて意見を求められて、勢井座長は、「わが社は商工会議所(※1)をよく利用している。徳島の商工会議所には『すだち共済』という共済制度がある。一度だけ、社員が通勤途上に交通事故で亡くなったときに何百万円かの保険金がおりて、家族に渡すことができた。がんだけに特化するのではなく、いろいろな病気や災害に活用できるのがいい」と発言しました。

 松下社長から、「加入している法人会(※2)では、家族を含めて会員のがん検診、健康診断、人間ドックを非常に安い値段で利用できる。がん検診は、各自治体も実施しているので、活用するといい。実は先日、家内が自治体のがん検診を利用して早期発見できた。わが社はこの10年でがんになった社員が10人と先ほど発表したが、本人よりも家族のがんが多いと感じている。家族にも検診を勧めていきたい」と発言しました。

 若尾センター長から、「がんは男性の方が多いが、30歳から55歳くらいは女性の方が多い。松下産業は建設業なので、男性社員が多いと思うが、勤労世代では奥様がかかる場合が多いのだろう」と説明がありました。また、法人会について「沼津法人会は、静岡県立がんセンターと組んで、職についていないがん患者の就労支援に取り組んでいる。会員が続けてがんになったことから、がん検診を勧める活動が必要だと実感し、さらに、非常に困っているがん患者さんが多いと聞いて、仕事がないがん患者さんを受入れる取り組みを始めたそうだ」と紹介がありました。

中小企業が利用できる組織
・商工会議所(※1)
商工会議所法に規定され、地域の事業者が集まり、商工業の発展のために活動を行う団体。主に市部にあり、会員には大企業や中堅企業も多い。
 (日本商工会議所 http://www.jcci.or.jp/ )
・商工会
商工会法に規定され、地域の事業者が集まり、商工業の発展のために活動を行う団体。主に町村部にあり、会員には小規模事業者が多い。
 (全国商工会連合会 http://www.shokokai.or.jp/ )
・法人会(※2)
経営者が正しく納税できるように、税の知識普及や啓蒙活動のために地域の事業者が集まった団体。税にとどまらず、研修、社会貢献、相互交流などの活動も行う。
 (全国法人会総連合 http://www.zenkokuhojinkai.or.jp/ )

GLTD

 GLTD(団体長期障害所得補償保険)は、企業が加入し、社員が在職中に病気やけがで働けなくなった場合に、収入の一部を補償するものです。

 GLTD導入の経緯を問われて、齋藤課長は「導入のために調べたところ、3社の損害保険会社で取り扱っているとわかった。最初は既往症があると入れないと言われたが、福利厚生のためなので、全社員が加入できなくては意味がない。そう主張したら、1社の営業担当者が会社にかけあってくれて、既往症があっても加入できるようになった。しかも同一傷病による障がいでも、一定の条件をクリアすれば保険が下りる形にしてくれた。そこで、その保険会社と契約することにした」と説明しました。

 松下社長から、「保険料はすごく高いかと思ったが、意外にリーズナブルだった。経営者の方は、検討に値すると思う」と述べました。

がん相談支援センター

 がん相談支援センターについて問われて、池山室長は、「がん相談支援センターは病院の付属機関ではなく、街中の支援センターがたまたま病院の中にあると考えてほしい。中立で、個人情報を守り、正確な情報を提供することを第一と考えている。また、患者や家族だけでなく、企業経営者や人事担当者からの質問も受け付けている。困っていることがあれば、ぜひ相談してほしい」と答えました。

 若尾センター長から、「がん相談支援センターがどこにあるかはがん情報サービス がん相談支援センターを探すに掲載されているが、ネットを使えない人は、がん情報サービスサポートセンター(0570-02-3410)に電話してもらえれば、全国の相談支援センターの案内をする。その他のがんに関する相談も受け付けているので、知人や親戚などにぜひ広めてほしい」と紹介がありました。

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 最後に、がんと就労のあるべき姿について、意見交換が行われました。

 松下社長は、「わが社は当たり前のことをやっているだけ。わが社には以前からがんになる社員はたくさんいて、普通に働けている。営業担当者が喉頭がんで声がおかしくなったときでも、営業に回ると励まされることが多かった。どんな状況になっても、必ず貢献できることがある。在宅でも、不定期出勤でも、こういうことができるとPRしてほしい。もちろん、本人が趣味や家族との生活のほうを大事にしたいなら別だが、仕事をしたい気持ちがあれば、遠慮しないで言ってほしい。大企業よりも、中小企業のほうが親身な対応ができると思う。大企業だと人事にも異動があるが、中小企業は全社員の顔がわかっている。社長がやらないのなら、社員想いでモチベーションの高い担当者を誰か見つければいい。相談支援センターも、中小企業だからとあきらめずに、そういう頼れる社員が社内にいないかどうか、アドバイスをいただきたい」と意見を述べました。

 勢井座長から「わが社は小さな会社で、なかなかいい人材が集まらない。だから、採用した人を大切にしたいと思って、パートも含めて検診費用は会社が負担している。昨年は、専門職で定年退職した県外在住の人を雇った。高齢でも、ほしい人材だったから採用した。

 非常にありがたいことに、ある大手企業からがん患者を雇いたいと話があった。県庁で3回ほど話をしたが、なかなか話が先に進まずに頓挫してしまった。障がい者であれば企業には一定割合で雇用義務があるが、がん患者にはない。がん患者は、一見健常者に見えるから、がん患者だけに光を当てるのは難しい。がんに限らず、障がい者に準じるような形で制度を作ってはどうかと思う」と意見を述べました。

 会場には、昨年度の意見交換会でアドバイザーを務めていただき、中小企業の社長でもある櫻井公恵さんが来られていました。そこで、櫻井さんからもコメントをいただきました。

 櫻井さんは、「うちの会社は従業員は30人で、その中には、がん患者や障がい者など、いろいろな人がいる。中小企業は自分の会社で何から何までやれないので、どこかで何かをやってくれるという情報は貴重だ。市のがん検診を利用して、みんなで受けようと声をかけるだけでも大事だと思う。お金をかけることだけが就労支援ではない。今日は、松下社長にいろいろなことを教わった。グループウェアで連絡を取り合うのも、社内に社会保険労務士がいるのも、とてもいい。たくさんのアイデアをひとりでも多くの人に知ってもらって、みんなで広めればと思う。社会で何かしてくれるのを待つ間にも、自分たちでできることがたくさんある」と述べました。

 最後に、会場から意見を募ったところ、先ほど意見を述べた社労士の男性から、「社労士として、相談支援センターで相談に乗る以外に、もっと間接的な関わり方もある。昨年、神奈川県の社労士会で志のある人が集まって、専門研究会のようなものを立ちあげた。これからは、社労士が中小企業の訪問先で啓発活動をするべきだ。ヒューマンリソースセンターのような存在は大切だと思うが、松下社長の『モチベーションの高い人を活用する』という方法は、非常にいいヒントをもらえた」と発言しました。

 また、大学院でがんと就労の両立支援研究をしているという男性から、「企業内にヒューマンリソースセンターを置くことが、非常に重要だと思った。がんに罹ったときに、いろいろなところに聞いて回るのはとても大変だ。企業の中で、両立につながる情報をすべていったん受け止めて専門家とつなぐことが、今後できていければいいと思う」と話しました。

まとめ

 勢井座長から総括として、「今日は、非常に勉強になった。がんは、多くの人にとってまだ『他人事』だが、これを『自分事』に変えていく必要がある。そのためには、メディアでの発信が非常に重要だ。松下産業の取り組みを発信すると、松下産業の企業イメージがアップすると同時に、そういった考え方が広がっていくのではないか。昨年度の意見交換会で事例発表をした方は、2人とも企業とのコミュニケーションの取り方が上手だった。社長さんも、患者さんに対して対応の仕方が非常によかった。そういう情報を含めて、いろいろな形で発信していただけたら、ますますがん患者やその他の障がいのある人の就労を進めていくことになる。ぜひともよろしくお願いしたい」と発言がありました。

 最後に若尾センター長から、閉会の挨拶として、「会社が患者を支えると、周りの社員がそれを見ている。こんなに社員を大事にする会社でよかったという思いが、会社に対する忠誠心や仕事へのモチベーションにつながっていく。こういう会社が日本にもっと広がっていくといい。きょうの話を、また多くの方に伝えていただきたい」と締めくくりました。

ご来場頂いた皆様から貴重なご意見を頂きました!

第2回意見交換会(中小企業編)会場アンケート結果

本日の意見交換会は?

9割近くの方に「役にたった」とお答えいただきました

本日のご感想をお聞かせください。今後とりあげてほしい事例や話題・論点などがあれば、お書きください。(一部をご紹介)

・立川さんの映像メッセージから立川さんの思いがよく伝わってきてありがとうございました。

・松下産業様の取り組み、大変感動しました。

・社労士さんの方の関与など、知らない視点の話を聞けて良かった。

・ガン保険の充実のため、保険会社の方の参画を促してはどうかと思った。

・がんと仕事をテーマにしていたが、収入/経済的/社会保障のテーマのように思えました。“仕事”とするならば、何の仕事or従事できる業務は何かを考える必要があると思います。社会への貢献は必要であり“がん”が特別ではないと思います。

・妻が3年前がん発症しましたが術後の再発もなく元気です。彼女が発覚時どんな気持ちだったか、患者がどう感じているか考えるつもりで参加しました。でも、がんと共生している事例をたくさん聞けてよかったです。

・治療現場に立っている者として、患者さんに行えるサービスを改めて考える事が出来ました。また、例えば治療時間など、現場で調整出来る事など多くあると思っています。今後も今日の様な会に参加させて頂き、色々なアイデアを頂ければ幸いと考えております。

・喉頭ガンで喉頭摘出し第三級障害者になりましたが、幸いにも私立学校(教諭・事務・規模で100人位)事務職員の仕事を続けております。しかし、これは全く運が良かったとしか言えず、就業規則などは大企業に比べればおそまつですし、定期の健康診断も形ばかり。ガン対策はゼロです。本日がん相談支援センターの存在、社労士さんの活用方法などを知り本当に勉強になりました。

・グループウェア「サイボウズ」は活用したいと思う。社労士の役割を確認できたことで人事担当としての役割も認識できた。ありがとうございました。

・良い情報を得ることができた。団体長期障害所得補償保険(GLTD)の加入が今後必要になると感じました。

・社労士の役割がたくさん存在することに気付いた。

・それぞれの機関がそれぞれの立場や役割の中で就労支援を同じベクトルで動かれている事を改めて感じました。今回は中小企業という非常によい事例の話が聞けてよかったです。

・企業経営にとって患者の就労をすすめることがどれだけプラスになるかが具体的に示してくださるとよかったと思う。

・みなさんの熱心な取り組みがすばらしいと思いました。

・松下産業のがん患者(重い病気を含む)となった従業員に対する手厚い支援に感銘を受けた。

・相談窓口の重要性を認識しました。

・事例紹介は継続就労にとって貴重なヒントになるので、今後も注視したいと思います。

・社会保険労務士の方の実際に行っていることを聞くことができてよかった。

・「社会的ツールの有効活用の重要性」+「社の就業規定の柔軟な改定、社の従業員への健康の理解、積極的な取り組み」が、がん患者にとって重要であると感じた。社⇔がん患者⇔社会保険労務士⇔病院⇔看護師⇔薬剤師など、広くネットワークを充実させ、連携していくことが、今後求められていくと感じた。

・前向きに取り組んでいる企業についても、患者を抱える負担がどの程度で、その負担をどう認識しているかについて、掘り下げてほしい。クールな対応との対比も知りたい。

・あたりまえの実践がいかに難しいかということを痛感する。むしろどうしてあたりまえと思えることができないのかということを深く掘り下げて欲しい。松下産業さんのような企業が多数派となると世の中が明るくなると思う。

・父が勤めている会社にヒューマンリソースセンターという制度があることを全く知らなった。がんになってからも仕事を続けていられることは幸せなことだと感じた。この話を聞けて本当に良かったです。

・家族でもヒューマンリソースセンターと本人が連携をとって進めていたのをよく知らなかった。改めてこのような期間の大切さを感じました。大変ありがたく思っています。

・松下産業様、HRC本当にすばらしい取組みと感じました。グループウェア活用→紹介していきたい。本当にありがとうございました。

・企業のとり組みの優しさ、思いやりに触れ、私たちは自分たちに出来ることをしっかりやろうと思いました。ありがとうございました。

・貴重なお話を伺えました。社長さんのお考えでこんなに良い会社になるのだと実感しました。立川様も会社に全幅の信頼を置かれていることを感じました。

・企業全体で、がん・治療・就労について共有できていること、がんだけでなく、働く事・身体・家族の事を一貫して対応できる部署があるのは、働く側にとっても働きやすい環境だと思いました。

・松下産業様の事例はとても役にたちました。制度や規程を整えても、実際に運用が難しく、実態とのへだたりが多いと感じます

・私は医療従事者ですが、中小企業のがん就労対策の中で医療従事者の役割が見えてきました。

・かなり企業側の立場であると感じた。患者として言いたいことは沢山あったが、立場(視点)が違うと感じて言えなかった。残念。とても理想的であり、うらやましいと感じるが、一般の中小企業にはまだまだ遠い。但し、患者を準障害者と認定して、がん患者を雇用すれば企業側にメリットがあるというようにすれば、中小企業の状況も変わるのではないか。

・こうした取組みが行われていることの周知啓蒙が必要。

・具体的に話が聞けて良かった。松下産業が人を大切にしている会社、今後増えていって欲しい。こういった会社が。

事例紹介

「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」では、がんと共に働く事例をご紹介してまいります。

企業レポート

「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」で紹介した、企業の「がんと就労」事例です。

意見交換会

「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」が開催した意見交換会の模様をレポートします。

セミナーレポート

「がんと共に働く 知る・伝える・動き出す」が開催したセミナーをレポートします。

インタビュー

がんと共に働く、をテーマにしたインタビュー記事を掲載しています。

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