アドバイザリーボード第1回会議を開催

 「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」では、2014年から4年間にわたり、がんになっても働き続ける事例を集め、意見を交換してきました。その集大成として、今年度は企業の人事・総務担当者向けのガイドブックを作成します。

 ガイドブックは、これまでに集まった事例を基に、多くの方の意見を伺い、議論した結果を取り入れていきます。その第一歩としてアドバイザリーボードを結成し、2018年7月26日に第1回会議を開催しました。その様子を報告します。

メンバーは、がんサバイバーと企業側の支援経験者

 アドバイザリーボードのメンバーは、これまで取材にご協力いただいた方々を中心に10名のがんサバイバーと、サバイバーへの支援経験がある企業経営者や人事・総務担当者に引き受けていただきました。今回、太田純子さんは残念ながら都合がつかず欠席されましたが、次回からご参加いただけるそうです。

 そのメンバーに、国立がん研究センターから若尾文彦がん対策情報センターセンター長と高橋都がん対策情報センターがんサバイバーシップ支援部長、監修として日経BP社酒井綱一郎副社長と、肺がんと闘いながら当プロジェクト事務局長を勤めた故・山岡鉄也のご令室山岡聡子さん、プロジェクトを担当する日経BP社と日経メディカル開発のスタッフらが加わり、今回は総勢16名で開催されました。

アドバイザリーボード会議構成員

若尾 文彦

議長
国立がん研究センター
がん対策情報センターセンター長

千田 敏之

議長
日経メディカル開発
取締役編集担当

高橋 都

リーダー
国立がん研究センター
がん対策情報センターがんサバイバーシップ支援部長

松下 和正

メンバー
松下産業
代表取締役社長

齋藤 朋子

メンバー
松下産業
ヒューマンリソースセンター長

小島 俊一

メンバー
元気ファクトリー
代表(明屋書店 元社長)

櫻井 公恵

メンバー
櫻井謙二商店
代表取締役社長

太田 純子(※)

メンバー
日立製作所
アプリケーションサービス事業部
事業企画部部長

村本 高史

メンバー
サッポロビール
人事部 プランニング・ディレクター

伊藤 道博

メンバー
アフラック
人事部人事企画課長

金室 麗子

メンバー
アフラック
人事部健康管理室室長

嶋内 隆人

メンバー
中外製薬
顧客政策部長

引間 保夫

メンバー
中外製薬
顧客政策部企画推進グループ
グループマネージャー

酒井 綱一郎

監修
日経BP社
副社長

功能 聡子

監修
ARUN
 

(敬称略)
※欠席

 会議は17時に始まり、約3時間続きました。

 前半は挨拶と自己紹介のあと、ガイドブック作成プロジェクトの概要、編集方針、目次案、その根拠となったアンケート調査結果や事例の共通点などが、発表されました。

 ガイドブック作成にあたり、3回のアドバイザリーボード、2回のアンケート調査を実施する予定です。また、大企業編と中小企業編それぞれ1回ずつの意見交換会で、人事・総務担当者から意見を伺います。

 それらの結果を踏まえて、大企業編と中小企業編に分けて、ガイドブックを冊子にまとめます。冊子は合わせて約4万部を印刷し、経団連や商工会議所などの団体を通して全国の企業に配布します。また、PDFファイルとしてダウンロード可能にしますとのことでした。

がんと就労ガイドブック 編集の基本方針(概要)

・がん罹患従業員に直接コンタクトする人事部担当者向けとする。
・がんと就労白書エッセンスにアドバイザリーボードの討議内容を反映し、具体的な対応策をもっていな
 かった人事部の担当者にも行動変容をうながせるようなものとする。
・「大企業編」と「中小企業編」を別々に作成し、配布先も分ける
・未罹患就労者に対して意識調査を行い、その結果を反映する。

がんと就労ガイドブック 目次案(概要)

1 人材は宝

がんに罹患した従業員の就労を支援する意義

2 がんになった社員を支援する基本

1) がんのイメージに振り回されない

2) 当人が置かれた状況、意向を把握する

3) 組織の中で、当人はもとより上司をも孤立させない配慮を

3 がんと診断された従業員が現れたら

1) すぐに本人に伝えるべき情報とは

2) 治療担当医からの情報収集

3) 就業配慮の検討

4) 個人情報の取り扱いへの注意

4 日頃からの準備が大切

1) 健康問題を隠さない社風作り

2) 従業員向け就労支援ハンドブックの作成

3) 支援制度の準備

4) 両立に関する管理職研修

なお、プロジェクトの概要やねらいについては若尾センター長のインタビュー記事、アンケート調査結果については「がんに対する意識調査」に掲載していますので、合わせてご覧ください。

配慮のために必要な情報収集は?

 休憩をはさみ、後半は、説明されたプロジェクトについての討議が行われました。

 最初に話題に上ったのは、内容ではなく配布方法の問題です。小島さんから、「約4万部を配布したあとに絶版になってしまうのは惜しい。実費の頒布価格を決めておき、希望があれば増刷できるようにしてはどうか」と提案がありました。また、松下さんからは、「中小企業へは法人会を通して配布すると行き渡りやすいのでは」という発言がありました。

配慮のために必要な情報収集は?

 次に、情報収集や従業員との対話方法について話し合われました。

 村本さんから「『がんと共に働く』のサイトの良さは、サバイバーや支援する会社の温度感が伝わってくることだ。このガイドブックは、その長所を活かして、類書にはないものにしてほしい。また、企業と社員の対話を促すものであってほしい」と意見が述べられました。

 金室さんから、「目次案に治療担当医から人事・総務が情報を引き出すとあるが、これはハードルが高い。患者本人とよく話して、患者本人から情報収集をするようにしては」、また、伊藤さんから「人事が就労支援をするために必要なのは、詳しい病状のような疾病性ではなく、それが仕事にどう影響があるかという事例性」という発言がありました。

 小島さんは、「乳がんで乳房切除をした場合に手を上げにくいといった具体的な知識は、配慮をするために必要。また、人事・総務を動かすには、人材は宝という認識をどうわかってもらうかだ」と発言しました。

 櫻井さんは、「社員に何か起こったときには、常に『どんな工夫をしていこうか一緒に考えよう』と取り組むことが大切。それがあればくわしい知識はなくてもなんとかなる」と、自らの体験を基に話しました。

 齋藤さんは、「社員ががんになったとき、最初に必要とするのは、どの病院でどんな治療を受けるか、主治医とどのように話をすればいいかという情報」と指摘がありました。

 山岡さんは、「本人が主治医とコミュニケーションして、自分の病気の状態や副作用、どんな仕事ができるのかを把握することは、本当に重要」と語りました。

話しやすい社内風土の作り方

 話題は、普段から話をしやすい社風作りへと進んでいきました。

 村本さんが「健康問題を隠さない社風を作るには、普段から健康問題に限らず何でも話せる社風を作っておくことが大切だ」と話すと、小島さんは、「上司が部下の話を聞いてくれるような制度があれば、うつ病も予防できる」と発言しました。

 さらに、松下さんから「直属の上司には話しにくいので、ラインの違う上司と話すしくみがあるといい」、小島さんから「直属の上司ではなく、一段階上の上司と話す機会を作るという方法もある」と対策が紹介されました。

 若尾センター長から、「大企業ではどうか」と問われて、嶋内さんは「上司と信頼関係があれば正直に話す。相談窓口があっても、実際にはそれほど利用されていないケースもあるのではないか」、引間さんは「職場の環境によっては直属の上司と話さなければものごとは動かないという感覚を持っている人もいるかもしれない」と答えました。

 高橋部長が「コミュニケーションを円滑にできた成功例をアンケート調査で聞いてみてはどうか」と提案すると、齋藤さんから「失敗例も聞きたい」と要望がありました。村本さんからは、「考えられる例を列挙して、成功例として何かを選んだ人に具体例を書いてもらってはどうか」と提案がありました。

次回はアンケート調査の後、10月に

 次から次へとあふれるように発言があり、約1時間半に渡り貴重なご意見をいただきました。

 出席者からは、最後に「中小企業は、万一がんになっても安心できる会社と思ってもらえれば、採用がうまくいく」(松下さん)、「冊子ができて終わりではもったいない。もう少し明確な成功指標を作ってはどうか」(小島さん)、「がんは個別性があるので柔軟な対応が必要。大企業は公平性を保つために制度があるが柔軟な運用が難しい時もある。中小企業はトップの意識次第でそこまでやれるのかと思った」(伊藤さん)、「がん患者が周りにいる人といない人では温度差がある。周りにいない人でも『できるかもしれない』という気持ちが起こるようにしたい」(金室さん)、「ガイドブックで認知度が上がり、がんでも働けると考えられるのが当たり前になるといい」(嶋内さん)、「普段、がんを意識していない人にピンとくるような冊子になるといい」(引間さん)、「がんになってエンパワーされる部分があり、それが会社にとってプラスになる」(山岡さん)といった意見や感想が述べられました。

 ご参加いただいた方々は、本当にお疲れさまでした。今回の議論を基に第1回アンケート調査を行い、10月初旬にアドバイザリーボード第2回会議を開催する予定です。

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