2014/05/27
−−いま「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」というサイトを開くのは、なぜですか。
働き盛りの健康な方は、がんなんて自分には関係ないと思っているかもしれません。でも、実は働き盛りの30〜40代でがんになる人は少なくありません。特に、この世代では、男性より女性の方ががんにかかる方が多くいらっしゃいます。さらに、今後、定年が延び60歳を過ぎて働く人が増えると、職場からがん患者が出ることはもっと珍しくなくなるでしょう。もし自分が、あるいは職場の仲間ががんになったら、どうするか。働く世代も、自分たちの問題として考えることが大切です。
働く世代ががんになると、仕事を長期間休んだり、仕事を辞めてしまうことがあります。でも、それでいいのでしょうか。多くの人にとって、仕事は生活の糧であると共に、大切な生き甲斐なのではないでしょうか?さらに、これから労働人口が減少していく中で、働ける人が働けないのは、社会にとっても大きな損失です。
少子高齢化がすすむ日本において、がんと共に働ける社会を構築することは喫緊の課題であると考えます。がんになっても働き続けられるように、みんなでがんのことを知り、支え合うようにしたい。「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」は、その方法を探り広めていく場を目指します。
−−がんになっても、働き続けられるものですか。
はい。医学が進歩して、診断から5年後の生存率は60%を超えています。しかもベッドに寝たきりというわけではなく、普通の生活ができる方が多くいらっしゃいます。治療中も、入院期間は短くなり、通院でさまざまな治療が受けられるようになってきました。もちろん通院が必要だったり、一時的に体調が悪くなったりするので、ある程度の調整は必要です。でも、治療を受けながら普通に働いている人は、いまでもたくさんおられます。条件さえ整えば、働く人はもっともっと増えるはず。いえ、増やさなくてはなりません。
−−いま多くの人が働けない原因は、なんでしょう。
まず、患者さん本人の思い違いがあると思います。これには医療側で、治療の経過や治療後の予測をきちんと説明できていないことが原因となっていることもあると思われます。がんと診断されて頭が真っ白になり、仕事を辞めて治療に専念しなくてはならないと考える患者さんは少なくありません。でも、しばらくして治療が落ち着いてくると、何かできそうだ、何かしたいと感じ始めます。ですから、あわてて辞めてしまわないことが大切です。
日本人は治療のために休んだりすると職場に迷惑がかかると考える傾向があります。でも、いまは2人に1人ががんになる時代です。がんは珍しいことではないので、遠慮することはありません。仕事を熟知し多くのスキルを持った人が辞めてしまうのは、職場にとっても好ましくないことだと思います。
でも、いくら本人が働こうと思っても、1人でできることには限界があります。本人だけが苦労するのではなく、職場や医療関係者など、周囲が協力しあって支えていくのが良いと思います。特に職場と医療者のコミュニケーション不足は、大きな問題です。これまで病院は患者さんの身体のことしか見ないし、職場は仕事のことしか見てきませんでした。それを「治療中にはどういう身体上の制約があるけれど、どういう仕事ならできますよ」という情報を共有できれば、ずっと働きやすくなると考えます。
−−「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」は、どういうサイトなのでしょう。
がんになっても働き続けられるように、みんなで知恵を出し合って解決策を考えたり、仲間を増やしたりして、サポートの輪を広げていくことを目指したサイトです。 まず、実際のがん治療はどういう経過で進んで行くのか、その過程でどのような制約が起きるのかなどを、多くの人に知っていただきたいですね。治療の流れがわかれば、患者さん自身も職場の方も、考え方が変わってくるのではないかと思います。それから、このサイトの大きな特長は、単なる情報提供ではなく参加型だということです。
がんになって治療しながら働き続ける方は、大勢おられます。ただ、その方法はものすごくバラエティに富んでいて、これさえやれば正解というものは、ありません。職場環境や患者さんの病状や状況によって、それぞれ違うと考えます。そこで、最初にさまざまな事例を集め、共有する必要があると思います。うまくいっている事例だけでなく、うまくいかなかった事例も集めて、課題を探ることから始めたい。だから、できるだけ大勢の方に参加していただいて、知恵を結集したいです。
そのために、実際にがんと共に働いている方の事例を発表する意見交換会を開催します。環境の違いを考慮して、大企業対象と中小企業対象に分けて開催する予定です。意見交換会では患者さんの体験や企業としての取り組み例を何名かに発表していただき、一般参加者からの意見もうかがいます。その様子は、後日、サイトに記事として掲載します。それから、意見交換会のレポートを含めサイトに掲載する記事やテーマに、会員からのコメントを募集し、掲載していきます。情報発信だけではなく、がん患者さんやがん患者さんと一緒に働く職場の方々を応援するために、さまざまな立場の人が結集する、そんなサイトを目指しています。
サイトの運営は、がん患者の支援に取り組む国立がん研究センターが、さまざまなビジネス情報を発信する日経BP社の協力を元に行います。がんとビジネスの情報をつないで、多くの働く世代にがんとがん治療について知っていただけたらと思います。
−−サイトを利用するには、どうしたらいいのでしょうか。
インターネットに接続できれば、誰でも記事をお読みいただけます。意見交換会に参加したり、コメントしたりするには、無料の会員登録が必要です。会員登録をしていただくと、年末に国立がん研究センターで発行する『がんと仕事のQ&A』を、年度末にはそれまでの活動をまとめた『がんと就労白書2014(仮題)』を印刷物で送付します。ぜひ、ご登録ください。
みんなで力を合わせて、がん患者さんや、がん患者さんと共に働く職場の方たちを応援していきましょう。積極的な参加をお待ちしています。
「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」では、がんと共に働く事例をご紹介してまいります。
2014年4月頃から右肩と右腕の痛みあり。2015年5月、健康診断で腫瘍マーカーが高値を示す。8月半ばに総合病院で肺がんの疑いと言われる。大学病院で検査を受け、10月に肺腺がんステージIV(右肺尖部に原発巣、背骨に転移)の診断が確定。11月初旬から入院し、抗がん剤治療(カルボプラチン+ペメトレキセド(アリムタ))を翌年3月まで6クール実施。11月末から1カ月半にわたり・・・
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2004年1月に急性骨髄性白血病と診断され、入院。寛解導入療法により、3月に寛解。3月~6月に抗がん剤治療。6月に侵襲性アスペルギルス肺炎に罹患し、自家末梢血幹細胞移植を中止。8月退院。2006年1月に再発。骨髄バンクに登録して、自宅療養。10月に白血病細胞が爆発的に増殖して、入院。寛解導入療法により第二寛解後、通算2回の抗がん剤治療。・・・
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2013年6月に乳がんと診断され、7月末に左乳房全摘出、腋窩リンパ節郭清手術を受ける。9月中旬より抗がん剤治療(3週間に1回×4クール)とトレミフェン(フェアストン)内服によるホルモン治療を開始。10月上旬に高熱を発し、約1週間の緊急入院。2014年5月から2015年10月に・・・
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2011年6月に内耳に水がたまり耳鼻咽喉科を受診。症状が繰り返したため精密検査を受け、9月に上咽頭がんと診断される。12月末に入院して、2012年1月より抗がん剤3種類の同時投与と放射線治療を開始。放射線治療は約1.5カ月で許容最大限を照射して終了。抗がん剤治療は約3カ月実施。・・・
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2011年12月に大腸(直腸)がん(ステージIV・肝転移)と診断される。腸閉塞のリスクがあり即日入院。翌年1月初めに大腸がん、2月中旬に肝転移の摘出手術を受ける。3月中旬から抗がん剤治療としてオキサリプラチン(エルプラット)+S-1(TS-1)の投与を開始。ビリルビン値上昇による投与休止・・・
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「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」で紹介した、企業の「がんと就労」事例です。
明屋書店は1939(昭和14年)創業の老舗書店だ。本社は愛媛県松山市にあり、西日本を中心に1都12県に80店舗を展開している。一時期経営が悪化し、2012(平成24)年に取次大手の株式会社トーハンが買収。経営立て直しのためにトーハン社員だった小島俊一さんが社長に就任した。・・・
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アフラックは1974年創業で、日本ではじめてがん保険を販売した生命保険会社だ。「『生きる』を創る。」をブランドコンセプトに、医療保険とがん保険を中心にビジネスを展開している。従業員の平均年齢は38歳。非常勤1名を含む4人の産業医が健康管理室に所属し、社員の健康管理にあたっている。・・・
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「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」が開催した意見交換会の模様をレポートします。
「がんと共に働く 知る・伝える・動き出す」が開催したセミナーをレポートします。
「がんと共に働く 知る・伝える・動き出す」が開催したセミナーをレポートします。
がんと共に働く、をテーマにしたインタビュー記事を掲載しています。
がん患者の就労を支援する「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」のプロジェクトが始まって今年度(2018年)で4年。これまでの成果は何か、最終年度でもある今年度ではどのような活動を計画しているのか。プロジェクトを統括する国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾文彦センター長に伺いました。・・・
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がん医療が進歩して5年生存率が上がり、がんは死に直結するものから、長い期間つきあい抱えていくものへと変わってきました。がん治療や社会はどのように変わり、がんと就労にはどのような課題があるのでしょうか。国立がん研究センター理事長中釜斉氏と日経BP社取締役酒井綱一郎氏のお二人に、・・・
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