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企業ブランド強化、GEヘルスケアの組織論

社内カルチャー変革に向けて
3つの施策を始動

 GEヘルスケア・ジャパンが2015年に始動させた社内カルチャー変革には、大きく3つの柱となる施策がある。

 まず衝撃的でもあったのが、GEが過去30年以上にわたって守り続けてきた行動指針「GE Value」を捨て去り、「GE Beliefs」という新しい行動指針に転換したことである。特に大きな変化は、「お客様に選ばれる存在であり続ける」というこれまでにない概念が取り入れられたことだ。「GE Valueがつくられたのはジャック・ウェルチがCEOを務めていた時代のことで、GEの絶大なブランド力で製品を買っていただくことができました。しかしGEを取り巻くビジネス環境が大きく様変わりした今、かつての「外部志向」だけではお客様に受け入れてもらえません」と桜庭氏は言う。

 次に「FastWorks」という新しい働き方への転換である。これまでのGEが是とする働き方は、有名な「Six Sigma(シックスシグマ)」のフレームワークに立脚し、業務プロセスを絶え間なく改善し、製品やサービスの品質のばらつきを徹底的に抑えることにあった。これを従来とまったく異なる「シリコンバレーのスタートアップ企業から学んだ働き方に変えていく」というのである。「プロトタイプを通じて小さく速く、行動しながら改善を図ることで、新たなスピード感を獲得します。これによりお客様との距離を縮め、商品化スピードを加速し、成功率を向上することを目指しています」と桜庭氏は語る。

 そして3つ目が「PD(Performance Development)」と呼ばれる評価制度の導入による社員の行動変革の促進だ。ここでのポイントは、社員のレーティング制度を廃止し、一人ひとりの成長を目的とした主観的な評価に改めたことである。そしてこの取り組みを支えるため、全社員のPCやスマートフォンにアプリ(PDツール)を導入し、上司、同僚、部下との間で相互にインサイト(気づき)をタイムリーに共有する仕組みを整えた。また、従来は期初および期末にしか行われていなかった上司とのタッチポイント(面談)も最低でも月一度は実施するよう頻度を高めた。これもまた周りからのインサイトに基づいて社員本人の気づきを促すことを狙いとするものである。

社内カルチャーの変革:3つの施策
社内カルチャーの変革:3つの施策

チームワークは「信頼」を
築くところから始まる

 上記の「GE Belief」「FastWorks」「Performance Development」の3つの施策により、GEヘルスケア・ジャパンは、社員の心を変え、行動を変え、習慣を変え、アウトカムを変えていこうとしている。桜庭氏は、「その根底にあるのが“信頼”です」と説く。

 この考え方の原点となっているのは、パトリック・レンシオーニ氏が提起した「危ない組織の5症状」である。チーム内の「信頼の欠如」が、「衝突への恐怖」「責任感の不足」「説明責任の回避」を招き、最終的に「結果への無責任」を生むというものだ。したがってチームワークは「信頼」を築くところから始めるべきであり、そのための唯一の方法は「完全無欠でありたい」という気持ちを克服することにあるという。

 では、ここでいう信頼とはいかなるものか、桜庭氏は次のように語る。
「チームメンバーの共通目的が基本的に善意に基づくものであるならば、全員に対して防御的になったり、言動にいちいち気を使ったりする必要はありません。こうしてチームの全員がお互いに弱みを見せることができ、受け入れることに居心地の良さを感じられることを、私たちは信頼と定義しています」

 より良いアウトカムを提供し、「お客様に選ばれる存在であり続ける」ために、まず自分たちに目を向けて、お互いに信頼しあえるチームをつくっていくことが重要であるとし、その取り組みのベースとしているのが、ジョセフ・ルフト氏とハリ・インガム氏が提唱した「ジョハリの窓」と呼ぶ心理学モデルである。自分が知っている自分、他人が知っている自分を4つの窓(象限)に分類するもので、「このうちの『盲点の窓(自分は気がついていないが、他人は知っている自己)』と『秘密の窓(自分は知っているが、他人は気づいていない自己)』を開け放つことで、チームは信頼関係を築くことができます」と桜庭氏は説明する。

 さらに、この概念を組織に定着させるために設けたのが「チームタッチポイント」という新たなスキームである。チームメンバー同士で「チームとして今後も続けてほしい、効果のある具体的な行動(CONTINUE)」ならびに「これまでと違うやり方で、さらに効果が出そうな行動(CONSIDER)」について話し合い、リーダーに助けてほしいことを示す。これを受けてリーダーも自分の「盲点の窓」と「秘密の窓」を公開することで、チーム内の信頼を醸成していくのだ。そこには、かつてのようにメンバーのレーティングを担うだけの単なる管理者としてのリーダーの姿はない。「私たちが必要とするのは、チームの意欲を引き出し、最大の効果を生み出すピープルリーダーであり、社員全員がピープルリーダーたることを目指しています」と桜庭氏は強調する。

危ない企業の5症状(パトリック・レンシオーニ)
危ない企業の5症状(パトリック・レンシオーニ)

個人の違いを
会社の強みに変える

 GEヘルスケア・ジャパンが追求する社内カルチャー変革の取り組みは、さらにダイバーシティやインクルージョンへとつながっていく。

 多様性を持つことが組織の強さの原点となるのである。例えば米コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが世界12カ国・1000社を対象に行った調査からも、ダイバーシティと企業業績との相関性が明らかになっている。「エグゼクティブ層のリーダーの女性比率が上位25%に入るほど高い企業は、下位25%の企業と比較して、営業利益において21%の差で目標達成をする可能性が高まる」「エグゼクティブ層のリーダーの人種&国籍比率が上位25%に入るほど高い企業は、下位25%の企業と比較して、営業利益において33%の差で目標達成をする可能性が高まる」といったものだ。また、ダイバーシティを尊重して成果につなげている企業は、そのこと自体がさらに優秀な人材を惹きつける好循環を生み出しているという。

 もっとも、人々の差異や違いを意識しながら多様性を受け入れるだけでは十分とはいえない。多様性を持った人々を組織の中で“一体”のものにしていく必要がある。それがすなわちインクルージョンだ。「グローバル時代は多種多様なバックグラウンド、価値観を持った人たちと渡り合わなければなりません。意見が合わない人たちを敵と考えるのではなく、皆を巻き込みながらそれぞれの力を引き出していくことで、『周りの人は敵ではない、仲間である』というインクルーシブな環境をつくることができます」と桜庭氏は説く。まさにその根幹にあるのが、ここまで述べてきた「信頼」にほかならない。

 GEヘルスケア・ジャパンは、こうした社内カルチャー変革とともに制度変革、ツール導入に一体で取り組み、インクルーシブな職場環境を整備し、促進していくプラットフォームを実現していくとする。先述した「GE Belief」「FastWorks」「Performance Development」の3つの施策がその中核となるのである。

 具体的な目標としては、女性活躍推進法における「えるぼし認定」を目指し、「業界平均を大幅に上回り、男性社員と相違ない女性管理職の登用率」「男性社員と相違ない10年前入社の女性社員の在職率」などをすでに達成。また、派遣社員から正社員登用といった積極的な雇用を行っており、キャリア面においても多様なキャリアパスを準備している。

 今後に向けてGEヘルスケア・ジャパンは、「社内カルチャーの変革から新しいタレントアクイジションエコシステムの構築へ」という新たなスローガンを掲げ、人材のリテンション、企業ブランディングを見据えたプラットフォーム戦略とアクションプランをさらに積極的に推進していく考えである。

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