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成長企業の経営層は人材採用に積極的に関与

成長企業で高い割合を示す、採用活動への経営層の関与

 欲しい人材を採用するためには、ニーズに合致する人材をいかに引きつけるかが重要になる。そのために、柔軟な採用活動が求められることもあるだろう。採用活動の柔軟性に関して、日本企業の特徴が表れているのが給与水準である。

 新卒一括採用というスタイルが一般的な日本企業では、多くの場合、新卒採用における給与水準の柔軟性は低い。一方、中途採用に関しては柔軟に運用している企業と、固定的に運用している企業がほぼ同数という結果だった。中途採用ではピンポイントのスキル獲得を目指すケースも多く、年齢などの基準で横並びという給与体系は適していないのだろう。

 また、同研究は企業の成長性と給与水準の関係にも言及している。売り上げの伸び率が高い企業群では、給与水準が柔軟に運用されているとの回答が15%。これに対して、売り上げの伸び率が平均的な企業群では7%にとどまっている。

(図1)中途採用の給与水準の柔軟さ(日米比較)
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 成長している企業ほど、給与水準を柔軟に運用している傾向が見られる。給与以外では、スカウトメールや求人情報の内容を、反応を見ながら常に改善しているのも成長企業に多く見られる特徴だ。

 経営層の関与という観点でも、企業の成長性によるスタイルの違いが見られる。経営層の関与を見るうえで、同研究は調査対象企業にいくつかの項目について尋ねている。「人材要件の決定に、積極的に関わっている」という質問に対して、「とてもあてはまる」と回答した割合を見ると、成長企業では30%だったが、平均的な企業では19%。成長している企業ほど、経営層が積極的に人材採用に関与していることがわかる。

(図2)経営層の人材案件決定への関与(日米比較)
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 企業によって、採用活動の位置づけには違いがある。経営層が積極的に関与している企業もあれば、人事部門に任せている企業もあるだろう。同研究は、こうしたスタイルの違いが何をもたらしているのかを探ろうとしている。

 例えば、マネジメント人材の充実を戦略上重要と位置づけている企業と、そうでない企業がある。前者の企業群は以下の全項目において、後者の企業群よりも高い割合を示した。「(経営層が)人材要件の決定に、積極的に関わっている」「(経営層が)面談、会食などに時間を惜しまない」「マネジメント人材の充実が戦略上重要」「経営層自ら優秀人材をサーチ」「経営層による1次面接の実施」という項目である。同研究は次のように述べている。

 「戦略上、マネジメント人材の充実が重要と位置づけている企業は、経営層も採用活動に積極的に関与している傾向がありました。また、そうした企業は転職活動をしていない転職潜在層に対してもアプローチしている割合が高く、経営層の意識や行動は、優秀な人材を採用する重要な要素になっていると考えられます」

(図3)経営層の関与
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 優秀な人材を獲得するためには、経営層の積極的な関与だけでなく、現場のスタッフやマネージャーの協力も欠かせない。では、どうすれば現場のパワーを結集することができるのだろうか。ポイントは人材要件や事業戦略の明確化である。

 「人材要件の明確な企業においては、現場スタッフ・マネージャーが面談・面接に協力的である傾向が強く、事業戦略の明確な企業では、現場スタッフ・マネージャーに採用の重要性を積極的に伝えている傾向が見られました」(同研究)

成長性の高い企業ほど「人材」に対して積極的にアプローチ

 人材採用の業務プロセスは企業によって異なる。クラウドサービスやソーシャルメディアなど、活用可能な採用ツールも次々と登場している。こうした手段の導入に前向きな企業もあれば、そうでない企業もある。業務プロセスの変更・改善に対して積極的かどうかという観点もあるだろう。

 同研究では、成長性の高い企業ほど自ら変化しようとする傾向が見られた。つまり、常に新しい手段を模索し取り入れているのである。また、成長企業ほど欲しい人材に対して「待ちの姿勢」ではなく、企業のほうから積極的にアプローチする傾向が強い。

 優秀な人材は多くない。中途採用について考えた場合、少数の優秀人材はいまの職場でも高く評価され、責任ある仕事を任されているケースが多いはずだ。そうした優秀人材のエントリーが集まるのを待っていたのでは、欲しい人材に巡りあえないかもしれない。先に触れた転職潜在層への積極的なアプローチは重要な手段だろう。成長企業ほど、こうした積極策を講じている割合が高い。

 いま、多くの企業はイノベーションを重視し、そのために創造力豊かな人材獲得への取り組みを強化している。ただ、すべての企業がそうではない。一方では、人間関係に配慮する協調性の高い人材が競争力の基盤と考える企業も少なくない。

 企業の置かれた市場環境、事業特性などにより、求める人材像や採用活動の「あるべき姿」は異なるはずだ。例えば、イノベーティブな人材を獲得するためには、採用プロセスや給与水準の柔軟性が求められる場合が多いが、求める人材像が違えば柔軟性はあまり重要ではないかもしれない。

 では、自社の置かれた環境、事業の特性に応じた人材像とはどのようなものか。そして、自社の戦略の中に人材をどのように位置づけるべきか。将来に向けてビジネスの成長を目指すのであれば、まずは経営者が自らの考えを明確に表明し、行動に移す必要がありそうだ。

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