
デジタルビデオ信号の伝送に適したインターフェースが、旧マキシムが開発し、現在はアナログ・デバイセズが提供する「GMSL」である(図.1)。
「2023年上半期時点で世界25社以上の自動車メーカーに採用いただき、ICの累計出荷個数は7億2000万個を超えています」と江口氏は実績を語る。
GMSLの主な用途は、ADAS、デジタルコックピット、あるいはインフォテインメントにおけるカメラやディスプレイの接続だ。また、レーダーやLiDARモジュールとECU間とのインターフェースや、ECU-ECU間のインターフェースに使われている事例もある。
データ転送レートは、2009年登場の第1世代GMSL1で最大3Gbps、2017年登場の第2世代GMSL2で同6Gbpsと高い。フルHDに相当する1920×1080ピクセル×RGB各8ビットを毎秒60フレームで非圧縮にて伝送するのに必要なビットレートはおよそ3~3.5Gbpsであり、GMSL2を使えば符号化ビットなどを考慮しても十分な余裕がある。
GMSLは技術的にはSerDesの一種で、ADASカメラなどの送信側にはシリアライザICを置き、ADAS ECUなどの受信側にはデシリアライザICを対向で置く。伝送メディアには軽量でしなやかな同軸ケーブルを使う(STPケーブルも使用可)。車載アプリケーションで使われている一般的なコネクタとケーブルを使えば、最長15mまでの伝送が可能だ。
また、デジタルビデオ信号に加えて、GPIO、I²C/UART、SPI、Audio I²S、Ethernetの各信号を双方向で重畳できるのもGMSLの特長だ。すなわち、カメラの映像だけでなく、さまざまなセンサー信号やインフォテインメント用のオーディオ信号を1本の同軸ケーブルに集約して送ることもできる。
「GMSLは、EMCノイズに対する耐性が高く、画質の劣化(ビットエラー)やEyeの開口の異常検出などさまざまなエラーの検出機能も備え、さらには車載Ethernetに比べて遅延が小さいなどの特長があります。また、世代間で下方互換性を持つため、GMSL1を用いて設計したカメラモジュールをGMSL2ベースのADAS ECUに接続することも可能で、拡張性のある車両開発が実現されます」と、江口氏はメリットを訴求する。
なお、GMSL2のIC製品はASIL-Bに準拠している。OEMあるいはサプライヤには、システムとしてASILを実現するのに参考となる関連ドキュメントが提供される。
カメラの高解像度化やディスプレイの高精細化に向けて、アナログ・デバイセズではGMSLの性能向上を進めている。
2020年にリリースしたのが第3世代のGMSL3である。ビットレートを12Gbpsに高めるとともに、デイジーチェーン接続した複数のディスプレイパネルのそれぞれにデータを供給する「ビデオ・スプリッティング」機能をサポートした。左右のAピラーの幅を利用したいわゆる「ピラーtoピラー」ディスプレイにも対応できる。
なお、データレートの向上は変調方式の工夫で実現しているため、コネクタとケーブルの特性要件は基本的にGMSL2と変わらない。また、GMSL2と同様に下方互換性を持つため、以前の世代で構成されたカメラモジュールやディスプレイモジュールを接続できる。
さらに、レベル3以上の自動運転の実用化を見据え、第4世代版GMSLの開発も進めている。ビットレートはGMSL3の倍、またはそれ以上を目指す計画だ。15MPカメラや8Kディスプレイなどの接続にとどまらず、最新のゾーンアーキテクチャにおける上流インターフェースの役割も狙う(図.2)。
「ADASや自動運転の機能を担保するという意味でもデジタルビデオ信号のインターフェースには高い堅牢性と信頼性が求められます。さまざまな課題を解決しながら自動車メーカーの厳しい要求に応えてきたのがGMSLであり、25社以上の自動車メーカーに採用されているという実績がその優位性を物語っています。これからも自動車のトレンドを見据えながら、さらなる進化を図っていきます」と江口氏は述べている。
アナログ・デバイセズでは、カメラやディスプレイの増加トレンドに加え、ゾーンアーキテクチャへの移行も見据えながら、ニーズに沿ったソリューションを提供していく。