

国内の印刷産業をリードしてきたTOPPAN(旧凸版印刷)は、デジタル事業の強化をはじめ事業ポートフォリオのシフトと拡大を進めるとともに、ホールディングス制への移行を果たすなど、大きな変革を進めている。その実現のために取り組んだのがシステム基盤のモダナイゼーションだった。レガシーからの脱却、基盤の選定、今後の展望などについて、TOPPANホールディングスでDX(デジタルトランスフォーメーション)を統括する伊藤隆司氏に聞いた。

1900年に凸版印刷合資会社として誕生し、120年を超える歴史を持つ凸版印刷が、大規模な変革を進めている。
背景にあるのは紙メディアからデジタルメディアへの転換による印刷需要の減少だ。国内における印刷市場は1990年代をピークに減少を続けており、危機感を抱いた同社は、印刷で培った様々な技術を活用しながら、新しい事業領域への挑戦を続けてきた。
同社は2023年時点で、従来の印刷事業のほか成長事業のデジタルビジネスなどを含めた「情報コミュニケーション事業分野」、食品などの包装材や住宅用化粧シートなどの建装材を扱う「生活・産業事業分野」、印刷技術をガラスやシリコンウェハに応用した「エレクトロニクス事業分野」の3分野を柱にしつつ、事業ポートフォリオのさらなる変革に取り組んでいる。
2023年10月1日、同社は変革のさらなる深化とスピードアップを狙って、ホールディングス制への移行を行った。TOPPANホールディングス株式会社を持ち株会社とし、その下に、TOPPAN株式会社、TOPPANエッジ株式会社、TOPPANデジタル株式会社を置く形だ。さらに同ホールディングスは、長年親しまれてきた「凸版」をアルファベット表記に変更するとともに、同社の発展を担ってきた「印刷」の二文字を社名から外した。印刷の枠にとどまらないビジネスを展開していく決意を内外に示したのである。

ホールディングス制に移行する前の凸版印刷では、変革の土台となる経営基盤の強化の一環として、システム基盤のモダナイゼーションが進められていた(図1参照)。その背景について現TOPPANホールディングス 執行役員の伊藤隆司氏は次のように振り返る。
「出版関連の売り上げが1990年代半ばから落ち込み始め、さらに紙メディア全般の売り上げが2017年にガクンと落ちました。当社の事業モデルもアナログ(紙)からデジタルに転換していく必要があると考えて、DXやデジタル事業について様々な議論を重ねました。その提言は当時の金子眞吾社長(現TOPPANホールディングス会長)や専務取締役兼経営企画本部長だった麿 秀晴(同社長)にも報告され、2018年にトップ判断としてデジタル事業の強化と社内DXの推進が示されました」
伊藤 隆司 氏
TOPPANホールディングス
執行役員 デジタルイノベーション本部 本部長
このとき、DXを含めた変革を進めるにあたって課題の一つになったのが、自社で開発してきた従来のシステム基盤(基幹システム)だったという。
伊藤氏は「レガシーのシステムには当社の成長を支えてきたノウハウと伝統が詰まっているとも言えますが、手組みで開発してきましたので時代のスピードに追従するのが難しくなっていました。経営とシステムの一体化や経営情報の一元化を図るためにも、システム基盤のモダナイゼーションが必要との判断に至りました」と説明する。
TOPPANはどのようにシステム基盤のモダナイゼーションを進めていったのか――。次ページで詳しく見ていきたい。
図1 2021年5月に公表された凸版印刷の中期経営計画で示された3つの事業分野と、それらを支える経営基盤の強化項目
出典:凸版印刷「中期経営計画 資料」(2021年5月14日)