カーボンニュートラルを実現するアナログ・デバイセズのオートモーティブ・ソリューション Vol.5 先進半導体で時代のニーズに応える EVとSDVで激変する自動車市場 第3世代EVで勝機の追求を提言

ゾーン(ゾーナル)・アーキテクチャやSDV(ソフトウエア定義車両)をはじめとするクルマの進化を加速するために、アナログ・デバイセズは、センサーやアクチュエータなどのエッジと、ゾーン・コンピュータとを結ぶ新しい車載ネットワーク「E²B™(Ethernet to Edge Bus)」を開発した。
イーサネットの標準規格である10BASE-T1Sに準拠しているのが特長だ。一部メーカーがすでに採用を表明している。

 クルマは、よりインテリジェントで、かつ、パーソナライズされた輸送手段へと変化しつつある。また、快適性や安全性を高めようと、カメラ、ディスプレイ、マイク、スピーカー、センサーなどの搭載数も増える一方だ。

 「市場展開のスピードを速めるためにも、アーキテクチャをいかに簡略化、単純化していくかが、これからのクルマ作りの課題と言えるでしょう」と、アナログ・デバイセズの谷島潔氏は指摘する。

谷島氏
アナログ・デバイセズ
オートモーティブ カスタマーオフィス
キャビンエクスペリエンス
シニアテクニカルリーダー
谷島 潔

 その解決策の一つとして自動車業界で注目を集めているのが、ゾーン・アーキテクチャだ。機能ごとにECUを置くのではなく、例えば車体の右前部、左前部、右後部、左後部といったゾーンごとに高性能なコンピュータを配置し、ECUやソフトウエアの統合を図ろうという考え方である。

物理層に10BASE-T1Sを使用したE²B

 ゾーン・アーキテクチャをはじめとするクルマの進化を加速するために、アナログ・デバイセズは、エッジとゾーン・コンピュータとを結ぶ新しい車載ネットワークを開発した。名称は「E²B」である。

 センサーやアクチュエータなどの接続に使われるCAN/CAN FDやLINの他、いわゆる「ジカ線(直結の信号線)」などをイーサネットに統合して、車載ネットワークの簡素化を実現するソリューションである。

 主なアプリケーションは、ヘッドライト、テールライト、アンビエント・ライト、キーレス・エントリー、短距離レーダー、超音波センサー、ドア、シート、ステアリング、サスペンション、ブレーキ、バッテリ・マネージメントなどの接続や制御だ(図1)。

図1
図1
アナログ・デバイセズが開発したE²Bのアプリケーション例。クルマのエッジ部分に装備されるセンサーやアクチュエータの接続や制御に適する。

 イーサネットと聞くと、しなやかさに欠けるLANケーブルをイメージしがちだが、E²Bは車載イーサネットの標準規格である10BASE-T1Sに準拠しているため、細く柔軟で、かつ低コストのUTP(アンシールド・ツイスト・ペア)ケーブルを使用できる。

 ここで10BASE-T1Sについて少し説明しておこう。10BASE-T1Sは車載および産業用として開発された物理層の規格であり、IEEEの規格名は802.3cg-2019である(その後802.3-2022に統合)。帯域は10Mbpsで、ケーブル長は一対一接続の場合で最長15m、最大8ノードのマルチドロップ接続の場合で25mだ。他の高速ネットワークでも使われている4B/5B符号化とDME(差動マンチェスター符号化)を用いて、ノイズ耐性を含む伝送の信頼性を高めている。

 使用するメディアはUTP/STPケーブルである。AWG26前後の細い線が規定されているため、軽量で取り回しも容易だ。