10BASE-T1Sを実装するには通常はエッジ側にもマイコンとプロトコル・スタックが必要である。すなわち、ハーネスをUTPに集約できたとしても、トータルのコストは上がってしまう。
そこでアナログ・デバイセズでは別のアプローチを採用した。10BASE-T1Sを堅牢な物理層として利用し、エッジ側のマイコンやスタックを不要としたのである(図2)。
例えばエッジにセンサーを置く場合、エッジ側でデータを処理した後、プロトコル・スタックを経由して10BASE-T1Sに送るのが通常の構成だ。一方のE²Bでは、センサーが出力するデータを直接E²B ICで受け、10BASE-T1Sに準拠したデータ列に変換して送出する。いわば10BASE-T1Sを使ったエクステンダーと言える。センサー・データの処理はゾーン・コンピュータが担う。
「エッジ側にマイコンやプロトコル・スタックを必要としないだけではなく、ソフトウエアをゾーン・コンピュータに集約できるのがE²Bのメリットです。OTA(Over-The-Air)でアップデートを実施する場合なら、ソフトウエアが分散していたのではアップデート処理やセキュリティ管理が複雑になってしまいます。その意味でE²Bは、SDVにも適合したソリューションと言えるでしょう」と谷島氏はメリットを説明する。
E²B ICの「AD330x」シリーズはすでに量産を開始しており、エッジ側に適した品種とゾーン・コンピュータ側に適した品種の提供を進めている。いずれも10BASE-T1Sに準拠したPHY/MACを内蔵するとともに、エッジ側品種は、センサーやアクチュエータを接続できるように、SPI、I²C、UART、ライティング規格のILASなどのインターフェースを備える。
欧州の大手自動車メーカー(OEM)ではこのE²Bの採用をいち早く表明し、SDVのアンビエント・ライティングに用いる計画を発表している。「その他にも多くの主要なグローバルOEMが多様な自動車用途のためE²Bの検討を進めています。各社の戦略次第ですが、早ければ2025年発売の新型車に搭載されると見込んでいます」と谷島氏は述べている。
「アナログ・デバイセズのE²Bは、来るゾーン・アーキテクチャ時代およびSDV時代に適した新たな車載ネットワークと言えるでしょう。エッジ側にマイコンやソフトウエアを必要とせず、ゾーン・コンピュータ側にソフトウエアを集約することによる開発の効率化が図れるとともに、スムースなOTAの実現にも最適です。また、ハーネスの集約による車載ネットワークの簡素化や軽量化もメリットです。クルマのアーキテクチャが大きく変わろうとしている今、OEMやトップ・サプライヤのお客様にはE²Bをぜひ検討していただきたいと思っています」と谷島氏は訴求する。
SDVを筆頭に自動車に大きな変革が起きている現在、アナログ・デバイセズはE²Bを通じて、新しい車載ネットワーク・アーキテクチャを提案する。