「EVやPHEVでは内部アーキテクチャの継続的な見直しが進められています。モーターとインバータを一体化した電動アクスル(eAxle)に、さらに充電回路も統合しようという動きもあり、回路の小型化や低背化は必須の要件になっています。Smart Switchはそうしたニーズに応えるソリューションとして開発しました」と、アナログ・デバイセズでオートモーティブ用電源ソリューションを担当する奥野耕介氏は述べる。
Smart Switchは、最高1200Vの耐圧を持つSiC FET(電界効果トランジスタ)を、標準的な5Vのデジタル信号でオンとオフの切り替えが可能なパワースイッチである。一般に、SiCスイッチの切り替えには20V程度のゲート信号を与えなければならず、ゲートドライバICや、これを駆動する電源レールが必要になるが、Smart Switchなら単一の5V電源だけで構成できる。
「回路としては、SiCを材料とする高耐圧JFET(ジャンクションFET)と、シリコンを材料とするMOSFET(金属酸化膜半導体FET)を縦続に接続することで、このような特長を実現しています」と奥野氏は説明する。
Smart Switchにはこの他に、過電流保護回路、ダイ温度監視回路、スルーレート制御回路などが集積されているため、周辺回路の削減にも貢献する。
Smart Switchを用いると、どの程度の小型化が図れるのか。DC/DCコンバータを内蔵した4チャンネル・アイソレータ「ADuM6423A」とSmart Switchを用いてハーフブリッジ回路を構成した場合の実装例を図2に示す。
図2右のSmart Switchの基板内、左側に並ぶ2個のICがSmart Switchであり、パッケージサイズは10mm×11mm×高さ4.5mm。基板右側の2個のICはADuM6423Aだ。
この例での回路サイズは、名刺の半分程度に相当する57mm×43mmである。外部トランスを必要としないため、Smart Switchのパッケージの高さ4.5mmがそのまま回路の高さとなるため、小型化と共に低背化を実現する。
奥野氏は、図2左の従来のハーフブリッジ構成の基板と比較しながら、「パワースイッチ、ゲートドライバ、絶縁電源、絶縁電源用トランス、温度センサーなどをディスクリートで組んだ場合に比べて、回路サイズはおよそ50%小さくなり、部品点数(BOM)はおよそ70%も少なくなります」と、Smart Switchのメリットを訴求する。
また、ハーフブリッジ構成はフルブリッジ構成の基礎となる回路であり、交流オンボード・チャージャの小型化や低背化を実現できることも伺える。
この他、エアコンや、サーマル・マネジメントシステムに使用する電動コンプレッサの駆動、800Vなどのバッテリ電圧と補機が必要とする12V系とを双方向に変換するフルブリッジDC/DCコンバータ、V2G(Vehicle-to-Grid)や非常時にバッテリ電圧をAC100Vに変換して出力するコンバータ(双方向チャージャ)などにも適していると言えるだろう。サンプル提供は2024年後半に、量産は2025年に予定されている。
アナログ・デバイセズはインテリジェント・エッジというキーワードを掲げ、エッジ側の情報を計測するデバイスや、エッジを結ぶ高速ネットワークを提供してきた。
奥野氏は、「回路の末端までインテリジェント化を図るのがインテリジェント・エッジであり、その意味で機能と性能に優れたSmart Switchもインテリジェント・エッジを構成する一部であると考えています。今後のラインアップの拡充も含め、さまざまなエネルギーのスイッチングに最適なSmart Switchにぜひご期待ください」と述べている。
OEMやサプライヤが求める小型化のニーズに応えるSmart Switch。アナログ・デバイセズは、実績あるバッテリ・マネジメント・システムやデジタル・アイソレータと合わせて、次世代チャージャの開発を加速してくれるだろう。