AI時代を勝ち抜く経営の新境地

生成AIが社会現象となった2023年。企業のDXはどう進化したのか。流通・サービス・メディア事業会社が進めるデジタル改革事例、最新のIT・デジタル投資動向分析、そして最先端のテクノロジーを実装するクラウドアプリケーションが提供するDX促進の価値について、専門家からの意見を聞き、AI時代のデジタル戦略のあり方を考える。

会社存続の危機を乗り越え
DX基盤とAIで成長軌道へ

コロナ禍で大きな打撃を受けた旅行業界。その危機から立ち直り、新たな成長に向けて力強い歩みを進めているのがJTBである。

「インターネットの台頭からコロナ禍前まで、旅行業以外のビジネス領域の拡大を模索してきました。とはいえ収益のほとんどは従来型の旅行業に頼り切っていた中で、2020年のコロナ禍による人流のストップは、当社の経営に甚大なダメージを与えました」と語るのは、JTB常務執行役員CIO CISOの黒田恭司氏だ。

黒田氏
株式会社JTB
常務執行役員 CIO CISO
黒田 恭司
日本アイ・ビー・エムで業務自動化、クラウドアプリケーションの責任者、プロジェクトマネージャー育成に携わる。2023年3月よりJTB常務執行役員兼CIO・CISOに着任。全社のDX戦略を推進する。

会社存続の危機に陥る中、あらゆるコスト削減を実施した。国内店舗の4分の1に当たる115店を廃止、人員の2割削減、本社ビル、大阪オフィス売却など、打てる手はすべて打った。それでも危機は続き、2021年3月期の最終赤字は1000億円を超えた。

「危機が去った後も、旅行市場の回復には一定の時間がかかるという予測から、2029年に向けて構造改革を開始しました。そして、改革のためには、デジタル基盤の再構築とDXの推進が不可欠でした」(黒田氏)