日本企業の収益性、成長力の低さを改善し、「稼ぐ力」の向上を求める圧力が高まっている。東京証券取引所(東証)が公開しているコーポレートガバナンス・コードでは、企業の持続的な成長のためには、「資本コスト」(資金調達によって発生する利子の返済や株式の配当)を重視した経営判断・運営と情報開示が重要であると指摘されている。
しかし、東証プライム市場に上場する企業の約半数が、PBR(株価純資産倍率)1割れという状況が続いている。2023年3月には、東証から上場企業に対して、資本効率や収益性の改善を促す要請が出された。
「一国の証券取引所がこういった要請を出すことは極めて異例です。これによって、経営者の資本コストや株価への意識は、さらに1段階ギアが上がったと思います」と、デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャーの山田壮介氏は語る。
対応を迫られる企業だが、もとより、東証や株主の指摘を待たなくても、本来企業は成長するために存在するはずだ。今こそ企業は「稼ぐ力」を身に付け、世に示すときなのである。
資本効率を改善し、稼ぐ企業になるために、今注目されている指標が「ROIC」(投下資本利益率)である。
ROICは、株主や銀行などが投資した資本に対して、企業が生み出した利益の割合を示す指標である。具体的には税引き後の営業利益を投下資本で割って計算する。ROICの開示によって投資家らは、投資額がどれだけ利益を生み出したかを知ることができる。
一方の企業は、ROIC経営を実践することで、投下資本に対する収益性を事業部門別に把握できる。資本コストを収益性の高い事業に再配分し、そこで生み出されたキャッシュを次の成長領域に投入することで、持続的な成長軌道に乗せることが可能になる。
では企業は、ROIC経営をどうやって導入、浸透していけばいいのか。