低コスト、低リスク、短期間で実現

約1500店舗分の仮想化環境を
クラウドに移行したサンドラッグ

コロナ禍でハードウェアの
入れ替えが困難に

サンドラッグが各店舗のストア・コンピューターの基盤として仮想化環境を構築したのは2014年のことだ。

以前は、店舗ごとにストア・コンピューターのサーバーを1台ずつ設置し、各店舗のレジとつないで利用していた。しかし、この方法だと店舗数が増えるごとに物理サーバーの数も増やさなければならない。サーバー台数が増えれば故障などのトラブルが増え、問題解決に時間も手間もかかる。

「ストア・コンピューターは店舗の“心臓”なので、動かなくなると、お客様へのサービスや店の運営も止まってしまいます。そのリスクを抑えるため、本部にオンプレミスのサーバーを置き、全店舗のサーバーを仮想化する構成に切り替えました」と林氏は説明する。

サンドラッグの店舗数は毎年増えているため、5年単位で仮想基盤の増強を図る必要がある。仮想化環境にしてからも増強を行い、1200店舗分のスペックを確保したが、それでも2022年ごろにはスペック不足となった。出店の勢いが、インフラの計画を上回るペースだったからだ。

再度、増強を前倒しで行うことにしたが、そこで大きな問題に直面した。コロナ禍によってハードウェアの供給が著しく滞り、納入までに半年から1年はかかることが分かった。

「サーバーが増強できなれければ、新規出店の計画も立ち行かなくなってしまいます。何とか問題を解決しようと考えた結果、運用環境をオンプレミスからクラウドに移行することを決定しました」(林氏)

ところが、ここでもう1つ大きな問題にぶつかった。

パブリッククラウドに移行する場合、OSやデータベースなどのミドルウェアを最新バージョンにしなければならないという制約があったのだ。

同社は仮想化環境で数百種類にも上るアプリケーションを開発していたが、その多くは旧バージョンのOS上で構築したものだった。

「仮想化環境は、OSやミドルウェアのバージョンを上げなくても古いアプリケーションを使い続けることができるので、開発の手間やコストを抑えるため、アプリを塩漬けにしていたのです。それがクラウドへの移行を妨げる障害になるとは、正直、思ってもいませんでした」と林氏は振り返る。

旧バージョンのままでも移行できる
オラクルクラウドを選定

その間にも、店舗数は次々と増加し、仮想化環境を動かすオンプレミスサーバーの許容量は限界に達しつつあった。

かといって、クラウドへの移行もできない。もちろん、アプリを最新のOSやミドルウェアに対応させれば移行は可能だが、数百もあるアプリを作り直すのは数年がかりになるので、現実的な対策とは言えなかった。

「何か、いい方法はないか?」。あらゆる手段を模索して、サンドラッグがたどり着いたのがOCIの「Oracle Cloud VMware Solution」であった。

サンドラッグは、以前からオラクルのデータベースを使用しており、パブリッククラウドを提供していることも知っていた。そこで、林氏が日本オラクルの担当者に相談したところ、仮想化環境の移行に特化した「Oracle Cloud VMware Solution」の提案を受けたのだ。

「『Oracle Cloud VMware Solution』を利用すれば、旧バージョンのOSやミドルウェアで開発したアプリでも、そのままOCIに移行できることが分かり、これなら行けると判断しました。オラクルのクラウドなので、従来から使っているオラクルのデータベースが低コスト、かつシームレスに移行できる点も大きな魅力でした」と林氏は明かす。

こうしてサンドラッグは2022年12月に、OCIへの移行を決定。2023年の初めから、確実に移行できるかどうかを確かめる検証作業をスタートさせた。

検証のために利用したのが、日本オラクルが無償で提供する「Oracle Cloud Lift Services」というフィジビリティ・スタディ支援およびPoC支援(実機検証)サービスだ。サンドラッグがオンプレミス環境の構築・運用を委託してきた構築ベンダにも参加を要請し、オラクルと一緒に、問題なく移行できるかどうかを検証してもらった。

約3カ月に及ぶ検証の結果、移行に伴う障害等のリスクは極めて小さく、低コスト、短期間での移行が可能であるということが確認され、プロジェクトは前進することになった。

図1
移行期間中は、既存のデータセンターとオラクルクラウドをL2(レイヤ2)延伸でつないで運用。L2接続で他のネットワーク上にある仮想化環境を使えるのもOCIの大きな特徴だ。

迅速な対応により
移行プロジェクトがスタート

年度が替わった2023年4月、オンプレミスからOCIへの仮想化環境の移行プロジェクトは、サンドラッグ本社から正式に承認された。

3月までのフィジビリティ・スタディで、移行後も運用の方法やコストは従来とほぼ変わらないことを確認。これがゴーサインにつながった。

「実は、既存の仮想化環境が2023年に使用料を値上げするという事前情報は伝えられていました。値上げされてしまったらコストが合わなくなるので、プロジェクトそのものが立ち消えになっていたかもしれません。フィジビリティ・スタディがわずか3カ月とスピーディに完了し、値上げ前に間に合ったので、何とかプロジェクトの承認を取り付けられました」と林氏は胸をなでおろす。

オラクルの迅速な対応によって、費用をほとんど増やすことなく、オンプレミスからクラウドへの移行が実現できるようになったのだ。

2023年4月から移行のためのテスト環境の構築を行い、同年8月に完了。その後、サンドラッグのシステム企画部と構築ベンダが移行のためのテストを行った。1年余りに及ぶテスト期間を経て、サンドラッグは2024年11月、正式に移行作業を開始している。約1500店に及ぶ全店舗の仮想サーバーを、1日に数十店舗ずつのペースでオンプレミスからOCIに置き換えていく計画だ。全店舗の移行が完了するのは、2025年夏ごろになる見通しである。

元屋地 氏
株式会社サンドラッグ
システム企画部 部長
元屋地 宏士

同社のストア・コンピューター運用を統括するシステム企画部 部長の元屋地宏士氏は、「ひとまず基盤の移行を優先しましたが、完了したら塩漬け状態になっている旧バージョンのアプリにも手を加えていきたいです。せっかくクラウド環境に置き換えるのですから、AIなどの最新テクノロジーが活用できるクラウドネイティブなアプリへの切り替えも検討したいと思っています」と今後について語る。

一方、林氏は「ストア・コンピューターが停止するリスクを抑えつつ、低コスト、かつ短期間でクラウドに移行できたのは、願ってもないことでした。これからも、オラクルの頼もしい支援に期待しています」と語った。