望月 エッジにインテリジェント機能やAI機能を持たせようとすると、各種センサーやカメラなどのデータ処理(センサーフュージョン)だけでなく、ソフトウエアとの統合まで視野に入れる必要があるかと思います。インテリジェント・フィジカル・エッジの具体的な事例はありますか。
齊藤 代表的な事例がNVIDIAの組み込みプラットフォーム「Jetson」のリファレンス・デザインです。電源やネットワーク・インターフェースの他、計測、スマートエネルギー・メータリング、3D測距などをサポートするさまざまなソリューションが提供されています。
また、デンマークに本社を置くユニバーサルロボット(UR)と緊密な関係を構築・発展させてきました。センシング、精密測定、安全性、通信、機械信頼性、電力やサイズの効率化など、ロボティクス技術向けの先進的なソリューションと、さまざまな分野に深い専門知識を持って、URのミッションに貢献しています。
望月 日本でも多くのプロジェクトが進んでいるようですね。
齊藤 例えば、自動運転ソフトウエアの開発を手掛けるティアフォーとは、当社のビデオ伝送バスGMSL™(Gigabit Multimedia Serial Link)を標準的なイーサネットに変換するモジュールを共同で開発しました。また、食品加工用のAIロボティクス・ソリューションを提供するロビットとは、モーターの脱調動作の検知によって、レタスのような柔らかい食品を把持するセンシング技術を開発しています。
望月 プラットフォーマーを目指すのではなく、サブシステムを提供する企業として共創を推進されているわけですね。提供されているソリューションについて、さらに詳しく教えていただけますか。
齊藤 例えば距離を測る深度センサーであれば、センサーデバイスに、レンズを含めた光学系、およびソフトウエアを統合して提供するイメージです。半導体デバイス製品を単体で提供するのではなく、コンポーネントメーカーや完成品メーカーと連携しながら、アナログ・デバイセズならではの高い機能や性能を持つモジュールや半完成品の提供を進めていきます。エンドのお客様には、システムを短期間で実装できるメリットで貢献できると考えています。
望月 本日の対談を通じて、“半導体技術を提供する企業”から、“顧客が即時に利用可能な半導体ソリューションを提供する企業”へと、アナログ・デバイセズも変化してきていることがうかがえました。冒頭で出た製造業の課題を踏まえつつ、今後の展望を聞かせてください。
齊藤 インテリジェント・フィジカル・エッジの技術を軸に、持続可能で自律的な産業社会の実現に貢献していきたいと考えています。また、AIと物理世界とを結ぶ究極のインターフェースであるロボティクスに関しては、周囲の認識や動作の制御の領域を中心に、次世代の自律型ロボットの実現に向けた技術開発に注力していきます。
今後も、特色ある技術を持つ日本のパートナーやお客様と共創しながら、日本の製造業の活性化に少しでも貢献できれば嬉しく思います。12月には「2025国際ロボット展」にも出展します。実際の事例を交えながら、サブシステムベースのモジュールを展示予定です。新たな共創のきっかけになることを願っています。