生成AI、なぜ日本企業は成果が出ないのか? カギを握るのは「データ基盤」 ――国立情報学研究所 佐藤教授と日本オラクル 竹爪専務が徹底討論――

生成AIを導入しても、文書作成の効率化止まりで終わる企業は少なくない。原因はAIの性能ではなく、古いデータ、分断された社内情報、曖昧な権限管理にあるという。企業が本当にAIを戦力化するには何が必要なのか。国立情報学研究所の佐藤一郎教授と日本オラクルの竹爪慎治専務が、「AI Ready」なデータ基盤の条件を語り合った。

生成AIを入れても進まない
日本企業が「活用手前」で止まる本当の理由

竹爪氏:多くの日本企業が生成AIの導入を進めていますが、うまく進んでいない実態も明らかになっています。総務省の「令和6年版情報通信白書」では、生成AI活用方針の策定率は、欧米企業が約80%以上であるのに対し、日本企業は42.7%と半分以下となっています。何が原因だと佐藤先生はお考えですか。

佐藤氏:日本企業では、AIの活用が「言語生成AIによる事務効率化」に偏りすぎていると感じています。

 AIでは学習モデルの性能に関心が集まりますが、企業のAI活用の成否を決めるのは、AIが扱う「データの質」だと考えています。データが不正確であったり、古かったりすれば、どんなに優れたAIも正しく機能しません。とくに自律的に動くAIエージェントのような高度な仕組みでは、データの正確性と鮮度が、経営の意思決定を左右するカギになります。

竹爪氏:私たちも、お客様との対話で企業が保有するデータの鮮度劣化、断片化の問題を実感しています。この問題を解決するには、部門ごとにサイロ化したデータを統合し、AIが統合的に学習、参照できる状態にする「データ戦略」が不可欠です。

佐藤氏:その通りです。AIの利用を社内文書作成といった部分的な効率化に絞らず、事業の成長に向けた社内データの分析や業務プロセスそのものを変革する視点が必要です。

竹爪氏:深刻な人手不足に直面している日本こそ、AIを業務プロセスに組み込むことが急務ですが、同時にチャンスでもあるのではないでしょうか。そのために、日本企業は「AI Ready」なデータ基盤を構築しなければいけないと考えています。

佐藤 氏
国立情報学研究所
情報社会相関研究系 教授
博士(工学)
佐藤 一郎
1996年慶應義塾大学大学院博士課程修了、博士(工学)、お茶の水女子大学大学院助手、助教授を経て、国立情報学研究所ソフトウェア研究系助教授、現在、情報社会相関研究系教授。情報処理学会論文賞受賞他。