
2015年に第1回「健康経営銘柄」が選定されて以来、企業の健康経営に対する意識は急速に高まっている。当初は膨張し続ける医療費の抑制を狙った施策だったが、ここにきて本来の効果である企業業績の向上との相関関係も指摘されるようになった。本当に健康経営は業績向上に結びつくのか、その実現のためにはどのような仕組みが必要か。健康経営と企業活動の関係性に詳しい慶應義塾大学 特任教授の岩本隆氏に話を聞いた。

「日本の企業は新しいことに消極的で、最初のひと転がりに大きな力が必要です。ただし、先行プレーヤーが成果を上げると、追いかけるのは早い。健康経営は今転がり出している状況です」と岩本氏は、健康経営に対する日本の企業の現状を分析する。

しかし、形ばかりの取り組みに終わっていて「健康経営が本来の目的である企業の業績向上には結びついていないのでは」という指摘もある。その原因はどこにあるのか。岩本氏は「経営者の理解不足」を第1に挙げる。
「社員が生き生きと働いていれば、業績は向上します。しかし、健康経営はすぐに業績向上に結びつくものではありません。一時的に売り上げが減ることもあります。だからこそ、経営者自らがそれを受け入れる覚悟を決め、率先して取引先にも理解を求めることが必要なのです」(岩本氏)
実際に、第1回の健康経営銘柄に選定されたシステムインテグレーター大手のSCSKは、当時のトップである代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)の中井戸信英氏が「健康経営推進最高責任者」に就任し、強力に変革を推し進めた。その結果、同社には健康意識が浸透して行動変容が起き、健康経営によって業績が向上したといわれる。
この健康経営銘柄の創設は、経済産業省が主導し東京証券取引所が実施したもので、その狙いは生活習慣病関連の医療費の削減と新たなヘルスケア産業の創出にあった。しかし、それが投資家からの評価や売り手市場の新卒採用に大きな影響をもたらすことがわかり、「健康経営優良法人」の認定を目指す企業が続出している。
「さらに最近では、本来の目的である業績との連動のメカニズムも判明してきました。健康経営が社員のエンゲージメントを高め、業績向上をもたらしているのです」と岩本氏。そこにはテクノロジーの活用が大きく関わっている。テクノロジーをどう活用すれば、健康経営と業績向上を結びつけることができるのだろうか。