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企業が健康経営を進めるべき「本当の理由」

新卒採用を左右した健康経営銘柄の選定

 「健康経営銘柄」が最初に選定されたのは2015年3月。背景には、増大し続ける医療費の問題があった。岩本氏は「現在40兆円を超える医療費の中身を調べたところ、3分の1が生活習慣病関連の費用でした。そこで、企業を通じて生活習慣を改めるような働きかけをしようと考えたのです」と当時を振り返る。

慶應義塾大学 特任教授
岩本隆氏

 初の健康経営銘柄は、健康経営に積極的に取り組む企業を株式市場で評価する仕組みを構築すべく、経済産業省が東京証券取引所と共同で選定した。「1業種1社に限定し、22業種22社が選定されました」と岩本氏。

 そして、この健康経営銘柄に選ばれた企業には様々なメリットがもたらされた。マスメディアに取り上げられて大きな話題になっただけでなく、投資家に対するPRにもなった。「何よりも大きかったのは、新卒採用への影響です。学生から“ホワイト企業”として認識され、人気が高まりました」(岩本氏)。 

 その後、健康経営銘柄の選定は年中行事として定着し、中小企業向けの「健康経営優良法人」と大企業向けの健康経営優良法人「ホワイト500」が追加された。第4回となった2018年には、健康経営銘柄26法人、大企業部門で541法人、中小企業部門で776法人が認定されている。この顕彰制度は地方にも拡大し、自治体による取り組みも広がっている。

 政府が注力する背景には、輸入超過になっているヘルスケア産業を輸出産業に育てたいという思惑もある。世界経済フォーラムが開設した「第四次産業革命日本センター」でもヘルスケアは柱の1つに掲げられている。官民を挙げて健康経営に対してドライブがかかっているのが現状だ。

2017年には、中小企業向けの「健康経営優良法人」と大企業向けの「健康経営優良法人 ホワイト500」が追加されるなど、健康経営ブームに拍車がかかっている

データで証明される企業業績との相関関係

 しかし、企業にとって健康経営はボランティアではない。岩本氏は「業績との両立が重要」と話す。政府にとって健康経営の主な狙いは、生活習慣病の改善と国民の健康年齢の引き上げにある。そのために、健康への認識を高めて日々の生活を変えていく行動変容を促したい。

 一方、企業にとっての目的は「企業価値を高めて業績向上に結びつけること」だ。従業員が健康であれば、企業の基礎体力が高まり、組織の活力や生産性が向上し、成長の源泉となるイノベーションが創出される期待も高まる。

 最近ではこうした業績への貢献がデータからも証明できるようになりつつある。その背景にあるのは、ITの進化だ。スマートフォン(スマホ)やウエアラブル端末などが普及したことにより、手軽に活動量や心拍数などのバイタルデータが収集できるようになった。しかも、以前と比較してコストは劇的に下がっている。

 「ヘルスケアはエビデンスがないと“怪しいビジネス”で終わってしまいます。しかし、データを収集するコストが下がり、ビッグデータのようなデータを分析・活用するテクノロジーが発達したことで、より正確に健康状態を把握できるようになってきました」(岩本氏)

 バイタルデータから自律神経の状況も見えてくる。自律神経の状況はその人のパフォーマンスにも大きな影響を及ぼす。岩本氏は「自律神経は伝播する」と指摘する。リーダーがストレスや不規則な生活習慣によって自律神経が乱れていると、そのチーム全体のパフォーマンスの低下を招く。

 現在、岩本氏が注目しているのが、エンゲージメント指標と健康経営の相関だ。「ベースとなるデータも東京大学などの調査でそろっています」(岩本氏)。エンゲージメント指標が業績と連動していることはわかっているだけに、健康経営とのエンゲージメント指標がわかれば、業績向上につながるポイントがはっきりしてくる。

業績向上に結びつくスマホアプリの活用

 予防ヘルスケアのスマホアプリ(モバイルアプリケーション)を提供するFiNC(フィンク)や現役医師が起業し生活習慣病患者に特化した遠隔診療サービスを提供するメドケアなど、企業の健康経営への取り組みをサポートする企業も登場している。

 メドケアが提供している健康経営推進サービス「MEDICALLY(メディカリー)」の強みは、健康維持、セルフケア、保健指導、医療などの各ステージに対応した予防、治療サービスを一貫して提供していることだ。対象者の状況に合わせて最適なサービスを提供できるため、高い効果が期待できる。それが財政難に苦しむ健康保険組合から支持されている理由でもある。

企業の健康経営への取り組みをサポートするサービスも増えている

 メンタルヘルスを担当する人事部とヘルスケアを担当する健康保険組合の双方に向けたサービスを提供することで、“コラボヘルス”ツールとして企業の保健事業の全てをスマホアプリ上に集約できる。

 「健康経営で大事なのは、健康意識の低い若い人の行動変容を促すこと。そのため、スマホアプリは重要です。習慣的に使うことで行動が変わるだけでなく、サービスを通してデータを収集し、何が業績向上につながるかを分析することもできます」と岩本氏はこうしたサービスの利用を推奨する。

 今はビジネスでもスマホアプリが活用される時代であるため、スマホアプリ活用のハードルは低い。「ITは難しい」という先入観は捨てて、気軽に使えるサービスを導入することが健康経営を成功に導く秘訣なのではないだろうか。

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