
参天製薬の情報システム本部は、グローバル化の進展とともに増え続けるITプロジェクトを適切に管理するため、2010年代前半から徐々に仕組みを作り上げてきた。
「各リージョンが思い思いにITプロジェクトを進めると、予算管理のグリップが利かなくなり、グローバルとして全体最適化も図れなくなってしまいます。そこで、グローバル全体に適用する標準のITプロジェクトの管理ルールを定め、これに沿ってプロジェクトごとの予算承認や、進捗のレビューを行っていく仕組みを整えてきたのです」と説明するのは、同社の原 実氏である。
しかし、「ルールは整ってきたものの、実際の運用面では大きな課題があった」と堤氏は振り返る。
「従来のITプロジェクト管理では、各リージョンからのプロジェクト申請や進捗に関する報告などは、エクセルで作成したフォームに記入する方式を取っていました。フォーマットの統一によって情報の項目や粒度をそろえ、すべてのプロジェクトを横並びで見渡せるようにするためです。ところが実際にやってみると、プロジェクトマネージャーごとに更新頻度が異なり、どのプロジェクトがどこまで進んでいるのか、何か問題は起きていないかといった状況をリアルタイムに把握できません。やむを得ず、各マネージャーが情報を保管しているフォルダをあちこち探すのですが、その作業だけでもかなりの時間がかかり、状況の確認が遅れてプロジェクトの問題をリカバリーできなくなることもありました」(堤氏)
また、フォーマットの記入ルールは統一したものの、マネージャーごとの解釈の違いなどから徹底されず、結果的に情報にばらつきが生じてしまうという課題もあった。
原氏は、「プロジェクト管理の制度そのものは整ってきたので、確実に運用できる仕組みが必要だと考えました。そこで、エクセルによるマニュアル管理ではなく、よりシステム化された管理の仕組みを採り入れることにしたのです」と語る。
そのためのソリューションとして参天製薬が選んだのが、ServiceNowのITBMであった。
ServiceNowのITBMは、企業内で動いているITプロジェクトの全体像をワンポータルで把握できるソリューションである。
パソコンやタブレット端末に表示されるITBMのダッシュボードを見れば、いくつのプロジェクトが、どの期間、どれだけの予算を投じて動いているのか。それぞれの目的は何で、各リージョン、またはグループ全体の事業活動にどのような意義をもたらすのかといったことがひと目で分かる。参天製薬のように、グローバルで多数のITプロジェクトが動いている企業にとっては、そのすべてを俯瞰し、管理するのに有効なアプリケーションであるといえる。
堤氏はServiceNowのITBMを選定した理由について、「そもそもServiceNowのアプリケーションは、社内にあるIT関連情報が一つのデータベースに統合されたプラットフォーム上で動いているので、こちらから情報を探しに行かなくても、すべてのITプロジェクトの情報を一覧することができます。これによって単にプロジェクト管理の労力が削減されるだけでなく、グループ全体におけるプロジェクトの優先順位付けやリソース配分を考慮し、将来の投資計画も立てやすくなるという経営面でのメリットが非常に大きいのではないかと考えました」と語る。
また、参天製薬は以前からServiceNowの「ITサービスマネジメント」(ITSM)を活用しており、その使い勝手のよさや、統一のプラットフォーム上で動くアプリケーションを導入したいとの考えから、ITBMについてもServiceNowの採用を前向きに検討したという。
2018年に導入検討を始め、約半年間のPoC(概念実証)を経て、2019年3月にカットオーバーした。このタイミングで導入に踏み切ったのは、海外売上高比率が30%を超え、今後さらに比率が高まっていくであろうことと無関係ではなかったようだ。
「いまのうちにグローバルで標準化されたシステムやプロセスを整備しておかないと、それぞれのリージョンが独自のシステムを構築してしまい、将来やり直すのが大変になってしまいます。ITプロジェクト投資に関する本社の考え方、やり方をグローバルに理解してもらい、ガバナンスをしっかり利かせるためにも、このタイミングで導入すべきだと判断しました」と原氏は語る。
これからグローバル化を推進していく企業にとって、この参天製薬の取り組みは非常に参考になるだろう。